4ヶ月、3週と2日
監督:クリスティアン・ムンジウ
出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ
時間:1h53

 近所のミニシアターでみてきました。
 このミニシアターが運営するwebサイトでは、本作の紹介文として「法律で禁じられたことを実行した勇気あるヒロインの物語」という一文を載せているんですが、この紹介文、どう考えても的外れだと思うんですよ。
 これ、他の人がどういう感想を持ったかわからないんですけど、私が観る限り、本作はどう観ても「ずるがしこい女にだまされたかわいそうな女の物語」です。
 ストーリーの基本的な柱は、中絶が法律で禁止されている独裁政権下のルーマニア、望まずに妊娠してしまったルームメイトの違法中絶を助けるために主人公であるオティリアが奮闘するというものです。
 ですから、このスーとリーだけを表面的にみると、私の行きつけのミニシアターのように、この映画に対して、「法律で禁じられたことを実行した勇気あるヒロインの物語」という評価を与えるのもわかるんですが、実際に中身を見てみると、やっぱり、違うんですよね。
 それというのも、この違法中絶をするオフィリアのルームメイトがものすごい悪い女なんですよ。
 この女、ガビツァという名前なんですが、違法中絶を依頼する医者や、共犯者であるオフィリアに嘘の情報ばっかり提供してるんですよ。
 本人は「妊娠二ヶ月って言わないと、依頼を受けてくれないと思ったから…」的な言い訳をするんですけど、ノーテンキなのか単にアホなのかそれとも計算してバカな女を演じているのか、自分が悪い女にならないようにならないように、医者に対しても、オフィリアに対しても、妊娠期間を偽って報告しながら、じつにうまいこと「無知な女」を演じているんですね。
 こんな計算的バカ女に対して、医者の方も、所詮は違法行為を率先して請け負っているような医者ですからあんまり善良なタイプではなく、「嘘情報を提供した」という事実を盾にしてしたたかに立ち回り、「中絶して欲しければやらせろ!!」的な要求を提示して、最終的に中絶の代償としてオフィリアをレイプしてしまいます。
 そんな計算的バカ女と悪徳医者に囲まれて、かわいそうなのはオフィリアです。
 ルームメイトがバカだと知りながらも違法行為の片棒を担いでしまったことは事実ですし、いまさら後戻りもできないので、ガビツァのバカ女っぷりと医者の悪徳ぶりに振り回されながら、危うい橋を渡りながらも中絶の片棒をガッツリと担がされてしまいます。
 独裁政権下(チャウシェスク政権ですよね、この当時は…)で国中に広がっている重苦しい雰囲気と、そんな社会状況における女の低い立場、そして、そんな中で繰り広げられる人間同士の打算と悪意。
 それらのものが渾然一体になって混ざり合いながら、本作は糸が切れたように突然終わります。
 最初から最後まで、本当に思い映画ですし、最後の方にはかなりグロいシーンもあるんですが、カンヌでパルムドールを取っているということからもわかるように、ものすごく完成度の高い映画なので、みて損をするタイプの映画ではないと思います。
 ただ、どう考えても、軽やかな気持ちになれる映画ではないので、観る人の好みや精神状態を選ぶ映画ですね。

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