080 村のもんじゃ様



 昔むかし、あるところに聞き分けの良い村長(むらおさ)がおった。大河(おおかわ)の向こうから流れてきた者もニコニコと迎えて村に住まわせたぐらいじゃ。その男、何をして暮らしておるのか分らぬが、村人が言うには、コソドロでもしているんだろうと。村長の思いやりには村人も閉口しておった。

 その村長の近くに聖(ひじり)が住んでおった。昔は都で七重ノ塔の建立の勧進をしたこともある功徳の高い坊さんというが、近頃では橋ばかり架けておる。村の中を流れる小川には、九本も橋があるので、どの橋を渡って向うに行こうかと迷うくらいなのに、まだ架けるというんじゃ。

神戸空港 直ぐ近くに 大坂空港 関西空港が  それというのも、聖には橋大工の仲間が大勢いたのじゃ。仲間を食わせていかねばならんので、無駄を承知で村長にたのみこんでおるわけじゃ。村長から金子を貰って、材料や大工や人夫の費用に当てる。残りは聖の毎日の暮らしや旅の費用に当てるが、贅沢な土産を村長に持って帰るところが長続きの秘訣じゃ。村長が渡す金子は、村人の懐から出たもんだから、村長がそれに手を出すわけにはいかんが、聖の旅の土産じゃから遠慮はいらん。村人も聖の土産話を聞いて喜んでおるわな。

すでに調査工事中  聖は都に時どき上っておったが、そこで景気の良い話を言いまわっておった。それを聞きつけた酒作りの親方が、わざわざ村まで村長と聖に会いに来たんじゃ。親方は、ひとしきり世間話をしたあと、大河に橋をかけてくれんかと切りだした。この村が一番、橋をかけやすい所だし、村は大きく豊かだし、腕の良い橋大工もおるし、聖の手配も上手いし、何より村長の度量が大きい、言うことなしじゃ。それに隣村の中に大河向うの人を固まって住まわせる話もあるから、その道筋としても打ってつけじゃと。更に親方は、当座の金子は用意するから、五十年かかって返してくれればよいとも言ってくれたのじゃ。いつにも増して贅沢な都からの土産を貰ろうた村長は、二つ返事で引き受けてしもうたのじゃ。

袋支那街計画  それからというもの、この村には他の村からも大勢の大工や人夫が来て、えいらい賑わいじゃった。川原の散所では毎晩、酒と踊りで喧しいくらいじゃたし、そこへ米や魚を卸して村人もだいぶ儲けたとも聞く。こうして大橋ができたのじゃ。

2008.04.27 長野治外法権  大橋ができて大河向うから異人がどっとはいってきたのじゃ。姿形は余り違わんのじゃが、言葉が違うのじゃ。中にはこちらの村言葉を上手に話す者もおるが、集まって話しておる時はやっぱり異人じゃ。働き手が仰山足りんと言うので、大河向うの人を呼んだのじゃが、その半分は何をして暮らしておるのか、何を考えておるのか、よう分らん。とうとう隣町の村長の意見も聞かず、自分達だけで長をたてたそうじゃ。それに近頃、盗人(ぬすっと)や人殺しが増えたとも聞く。それが隣村だけじゃのうて、この村とてそうじゃ。

韓国で「對馬の日」?  それに一番変ったのが、村の年貢が増えたことじゃ。何でも村は偉い借金をこさえてしもうたとかで、酒作りの親方に四十九年も金子をかえさねばならんのじゃ。利子が付いて借りた額の倍にもなるんじゃそうな。そうそう、聖は橋ができる前に都へ行くと言って出たっきりじゃ。村長は橋ができて直ぐに死んでしもうた。食いすぎじゃったそうじゃ。村長の甘さに村人はエライ目におうたと嘆いておる。困ったもんじゃ。

[#080: 2008.09.23 秋分の日 ]

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