さて、その騒ぎを背に、周瑜、黄蓋、徐盛らはしずしずと酒を酌み交わしていた。
周瑜「うしろは随分とにぎやかになってきましたね」
黄蓋「そうですな。ああ、子義どのが殿の相手をされておるようだ」
徐盛「だ、大丈夫なのでしょうか…」
黄蓋「子義どのではどうかな」
周瑜「なにやらあそこの席はクジで決めていたようですよ。殿もお気の毒に」
徐盛「しかし、公瑾どの。酔った殿にだれも斬られたくはないですからね。気持ちはわかりますよ」
しかし、悲劇はそのとき起こった。
孫権「なんだと〜〜この俺を酔っ払いあつかいするか〜〜」
すでに充分酔っていたが、それを制されて怒っているらしい。
太史慈「殿…まいったな。どうする?公績よ」
凌統「仕方ない…このまま逃げましょう」
二人は上座から上半身裸のまま立ちあがった。
孫権「こぉらぁ〜〜逃げるなぁ〜〜」
よろよろと千鳥足で逃げる二人を追う。
その追いかける途中に、後ろ向きに座っていた周瑜にぶつかって、覆い被さるように倒れた。
孫権「うぬっ…ぶぅれいものめぇ〜〜この俺の行く手をなぜ遮るか〜〜」
自分の倒れた下に周瑜がいることに気がつかず毒づく。
しかし、すぐに気がつくと、孫権は周瑜にそのまま抱きついた。
その場にいたほとんど全員がはらはらしながらそれを見守っていた。
周瑜「殿…しっかりなさいませ」
孫権「おお〜〜公瑾…一緒に飲もうではないか」
周瑜「はいはい」
孫権はこのとき半分以上裸だった。
孫権「こうき〜ん♪」
その出で立ちで周瑜に抱きかかる。しかも妙に甘えた声。
孫権は周瑜に酒を勧める。
太史慈「なぜだ…なんであんなに態度がちがうんだ」
凌統「……やはり公瑾どのだから、でしょうか」
ようやく甘寧たちのところまで逃げてきた二人であった。しかも腹に顔を描かれたまんまである。
甘寧「・…………」
呂蒙「お、おい・…興覇・…?」
実は甘寧もこのとき相当酔っていた。
甘寧「俺の…・公瑾どのに・…あの酒乱ヤロー…」
呂蒙「は?な、なんか言ったか?」
甘寧はずい、と前に出て、孫権と周瑜のいるまん前に座った。
甘寧「殿。俺と飲みましょう」
孫権「おお!甘興覇か!よしよし」
呂範「・…どうしたんだ、興覇は」
呂蒙「・…さあ?」
朱桓「まあ、いいではありませんか〜飲みましょうよ〜」
そうしてまた再びそれぞれが宴会を楽しむことになった…が。
がちゃん!
いっせいに皆が何事かと振り向いた。
程普「ああっ!」
黄蓋「おお!」
呂範「か・・・・・甘興覇ぁ〜〜〜〜!」
甘寧が、孫権の顔の真正面からケリを入れている。
呂蒙「・・……」(青ざめる)
陸遜「あ〜……・」
甘寧「うりゃぁ〜〜〜あ」
孫権「・………(ふにゃ〜〜)」
周瑜「・………」(その様子を黙って見ている)
張紘「こっこれはどうしたことだ!」
周泰「甘興覇!殿に何をしておるかっ!」
甘寧「あ〜〜?見りゃわかっだろ〜。コイツの顔にケリいれてんだよぉ〜」
呂蒙「(す〜っと顔から血の気が引く)やばい・…あいつすっかりまわってる」
呂範「と、とにかく止めねば」
呂蒙と呂範が甘寧を抑えつけようとするが、暴れて手がつけられない。
孫権「お〜〜〜お〜〜の〜〜れ〜〜〜」
鼻血が出ている。
甘寧「おう!なんだってんだ!文句あんのかよっ」
呂蒙「よせって…どうしたんだよ」
甘寧「だぁってよ〜〜!公瑾どのが〜〜」
呂蒙「???」
孫権「こう〜きんは俺のもんじゃ〜〜っ」
甘寧「あ〜〜!あんなこと言ってやがる!くっそ〜〜」
呂範「な、なんだか知らんが…公瑾どのを取り合ってのことらしいぞ」
陸遜「あの…公瑾どの…?大丈夫ですか?」
周瑜「………」
それまで黙って静かに酒を飲んでいた周瑜が突然立ちあがった。
周瑜「周瑜公瑾。一節、舞います」
全員「・・……??」
全員が棒立ちとなった。
それへ周瑜の流し目が飛んだ。
陸遜「が、楽隊っ、演奏しろっ!ほら、始めっ!」
周瑜も実は相当酔っていたらしい。が見事に踊り始めた。
甘寧「公瑾どの〜〜vv」
孫権「こ〜〜きぃ〜〜〜んvvvvvvvv」
にわか親衛隊ができていた。
呂蒙「ほ〜〜〜」
陸遜「さすが・・・見事ですね」
呂範「・…た、助かった…・・な」
周瑜はまだ一人で踊っている。
問題の孫権は甘寧と隣り合って押し合いへし合いしながらかぶりつきで観ている。
そしてそのうち仲良くささえあって寝てしまった。
陸遜「やっと平和に酒が飲めそうだ…」
そのころの地味トリオ。
魯粛「ほっほっほっほ〜、そなたは本当に長い顔じゃのう〜ほ〜っほっほ」
諸葛瑾「ひっひどい、あんまりだ〜うわ〜〜ん」
顧雍「・………」
魯粛「ほっほっほっほ〜〜」
終劇