私と俺(中)


「甘寧部長、おはようございます」
「ん?ああ、おはよう」
1階で甘寧に後ろから声をかけたのは財務部の孫香である。
付き合いだして四か月ほどになるのだが、社内では平然を装っていた。
あまりにも周りがひやかすからだ。

早朝の社内にはまだ人がほとんどいない。
「今日は早いんですね」
「ああ、午前中に出かけなきゃならなくてな。おまえは相変わらず早いな」
「はい。電車で座ってこれるので楽チンなんです」
「そっか」
甘寧は笑った。
あいかわらずマイペースな彼女である。
「今週はちっと立て込んでてあんまり会えなかったな」
「そうですね」
「…週末、出かけるか?」
「はい!」
エレベーター前まで来て、「調整中」の札がかかっていたのを見た二人は愕然とした。
「げっ!マジかよ…」
「エレベーターって、今日はここしか使えないんでしたっけ…」
「ああ、なんか工事中だっつってたな。参ったな…。仕方ねえ、階段で行く」
「あ、じゃあ私も」
「大丈夫か?おまえ。けっつまづいて倒れるんじゃねーぞ?」
「私、体力には自信あるんですよ?マラソン大会で見てたじゃないですか」
「あ〜…そういやそうだな。ドジっ子でも取り柄はあるもんだな」
「ひどいいいようですね。でも否定しません」
孫香は笑って言った。


一方、こちらは呂蒙、もとい、周瑜と陸遜。
「まったく、なんでよりによって経理部なんですか」
「んなこと言ったってよ…仕方ねーだろ。昨日忙しくて伝票取りに行けなかったんだから」
「38階から5階まで階段で降りるとか、なんの罰ゲームなんですか…」
「んじゃおまえは上でまってりゃ良かっただろ」
「そういうわけにはいきませんよ。履きなれないヒールで階段から落ちて怪我でもしたらどうするんですか。自覚あるんですか?先輩の体は周瑜さんなんですよ?」
「ああ…わかってるって」
エレベーターが止まったままなので、仕方なく陸遜はあぶなっかしい足取りの周瑜の手を取って5階まで階段で降りることになったのだった。


「あ、周瑜さんと陸遜さん」
上から降りてきた陸遜と周瑜は、下から昇って来た甘寧と孫香にばったり出くわした。
「甘寧部長…と孫香さん、でしたっけ。早いですね」
「はい、お二人とも、経理部に御用ですか?」
「ああ、うん、伝票取りに…」
孫香の質問に周瑜が頷くのに、慌てて陸遜がフォローする。
「き、昨日伝票取りにくるのを忘れててね」
「ふぅん?二人揃って、か?」
甘寧は降りてくる時、陸遜が周瑜の手を取っていたのを見ていた。
「いいのかよ?陸遜。社長に知れたら殺されっぞ?手なんかつないじゃってよぉ」
「なんだよ、悪いか?」
周瑜が甘寧にそう食ってかかった。
「…え?」
「ちょ、先輩っ…」陸遜は慌てて周瑜を押しとどめた。
甘寧と孫香は聞いてはいけないことを聞いてしまったようで、呆然としていた。
「あ、お、おほほほ。何でもないですわ。じゃ、じゃあね」
なんだか慌てて階段入口から5階フロアへ出て行った陸遜と周瑜を見送って、甘寧と孫香は顔を見合わせた。
「…どうしたんでしょうね」
「ああ…すっげー変だった…」

「駄目じゃないですか!絶対変に思われましたよ」
「あ〜すまん、つい…興覇相手だったからいつもの癖で…」
「気をつけてくださいよ。周瑜さんに変な噂が立ったらどうするんですか」
「なるべく口をきかなきゃいいんだよな」
「是非そうしてください」
陸遜は怒っていた。
姿が周瑜のままなだけに、許せないのだ。
「そんな怒んなよ…」
中身呂蒙の周瑜はショボーンとしてしまった。
「…」
陸遜はその横顔を見て動揺した。
「先輩…ヤバイです。そんな顔」
「え?」
反射的に周瑜の顔を持つ呂蒙は陸遜を見つめた。
「…中身が先輩ってわかっていても、ドキドキしちゃうもんですね…」
陸遜は赤くなって眼を逸らせた。
「バ、バカ、やめろよ。俺、そういう趣味ないし!外見は女でも中身男だから!そこんとこ忘れんなよな!」
「わかってますよ…」
がっくりと肩を落とす陸遜であった。
「ああ…僕の周瑜さんが…。はやく元に戻ってほしい…」



一方、こちらは周瑜。エレベーターでの一件を孫策に話していた。
「ふ〜ん、それは怪しいな。わかった、管理会社に問い合わせてみよう」
その後、午前中の孫策の予定を告げると、孫策は周瑜を心配しつつも会議に出かけて行った。

呂蒙の周瑜も社長室でぶらぶらしているわけにもいかず、コーヒーでも淹れようと秘書室へと向かった。
いつものようにてきぱきとコーヒーを入れていると、二喬が出勤してきた。
「あら、呂蒙さん。おはようございます。こんな朝からどうしたんですか?」
「おはようございます」
(…と、私はいま呂蒙くんなのよね)
「今日はちょっと社長室でお仕事させてもらうんで、コーヒーを淹れてたとこです」
「あら、そんなの私たちがやりますよ」
「いえ、大丈夫です。もう入れちゃいましたから。お二人もどうぞ」
呂蒙はニッコリ笑って言った。
「あ…あら、そう?」
笑いかけられて、二喬はポッ、と赤くなった。
「周瑜さんは来てるのかな?」
小喬が言うと、呂蒙はドキッとした。
「今日はまだ見てないけど」
大喬が質問に答える。
「呂蒙さん、知らない?」
「あ…たぶん企画室じゃないですか?」
「そうなんだ」
呂蒙はふと思いついて、二人に訊ねてみた。
「あ…そう言えばお二人とも、ここまでエレベーターで来ました?」
「え?うん、そうだけど…あの仮設のやつよね?なんかあった?」
「あ、いえ、さっきまで止まってたみたいだから」
「えーっ!?そうなの?よかったあ。さすがにここまで階段ってわけにはねえ」
「なんとも…ありませんでした?」
「うん、大丈夫だったけど」
「そうですか…」
「けどなんか、変な感じだったよ」
「変?」
「うーん、なんて言ったらいいのかな。誰かに監視されてるみたいな?」
「…カメラが付いてるんだからそりゃ監視されてるよーなもんじゃない?」
小喬に大喬がツっ込む。
「そういうんじゃなくって…うーん、うまく言えないんだなあ。なんか電波出てる?みたいな」
「電波?」
「うん、なんつーか人間の耳には聞こえないっていうか…」
「人間の耳に聞こえないのになんであんたには聞こえるの?」
大喬がもっともな質問をした。
「だってそんな気がしたんだもん」
小喬が必死の形相で言う。
「ああ、はい、いいですよ、どうもありがとうございます」
呂蒙はなだめるように言った。

呂蒙と周瑜、それぞれにあれからエレベーターにも何度か乗ってみたが、何も起こらなかった。
緊急ボタンを押しても何も起こらず、とうとうその日は終業を迎えた。

「はぁ…結局このままですか」
「いろいろ調べてみたけど、結局わからずじまいですね」
周瑜と呂蒙は再び周瑜の部屋にいた。
さすがに陸遜は自分の仕事があるため、ずっと一緒にはいられないのだった。
「あ、ちょっとネイルが…。呂蒙くん、どこかに爪ひっかっけちゃった?」
「え?爪…ですか?あ、そういえば階段の手すりにぶつけちゃったかも…す、すいません」
「いいわ。塗り直してあげる」
中身呂蒙の周瑜の手を取って、中身周瑜の呂蒙はネイルを塗り直した。
「はあ…上手いもんですね。女の人ってすごいんだなあ」
「ふふ、なんだか変な感じ。自分の爪にネイルしているのって」
そう言いながら楽しそうだった。
そんな二人をドア越しにイライラしながら見つめる孫策の姿があった。
「ねえ、呂蒙くん。今日は私、呂蒙くんの部屋に帰らないといけないのかな?」
「えっ?あ、あ…そうだ、服とかいろいろ、ありますよね…じゃお、俺も周瑜さんの部屋に…?」
「いかーーん!それはいかん!」
バタン!と扉を開けて突然部屋に入ってきたのは孫策だった。
いつの間に来たのか、そのあとに陸遜も続く。
「そ、そうですよ!先輩そんな、周瑜さんの部屋に入るだなんて、ぜーーーーったい!!ダメです!!行くなら僕も行きます!」
なんでおまえが、とこっそり思ったがそこはあえて突っ込まずにおいた孫策だった。
「今日はおまえたち、別々にホテルに泊まれ。いいな?必要なものがあればどっかで買って来い!」
「で、でも俺、メイクとかできませんよ!髪だって…」
「いいわ、明日は今日と同じ時間にスッピンで出社してきて。会社で私がやってあげるから」
「い、いいんですか?」
「基礎化粧品の使い方だけ教えておくから、覚えてね」
「は、はい」
「それから…はい、これ」
周瑜は自分の机の一番下の引き出しをカギで開けて、中からポーチを取り出した。
「?何です?」
「替えの下着」
すんなり言う中身周瑜の言葉に、孫策も陸遜も飛び上がった。
それを受取った中身呂蒙は感心していた。
「へ?会社に持ってきてるんですか…?」
「ええ。いざというときのために。置いておいてよかったわ」
「へえ…さすがですね」
「バッカ、感心してんな!絶対見るなよ!目つぶって風呂入って着替えろよ!」
孫策はカッカしていた。
「そんな無理ですよ〜」
「先輩、ちょっとでも見たりしたら絶交ですからね!」
陸遜も冷たくそう言い放った。

「えーっと、じゃあ私はどうしたらいいのかな?下着とか、どうしたらいい?」
孫策も陸遜も、当の中身呂蒙の周瑜もカーッと顔を赤らめた。
「こ、コンビニで適当なの買ってください。なんでもいいです、Mサイズなら!」
「そう?わかったわ」
孫策はいたたまれなくなって、周瑜に言った。
「お、おまえいくら子明の体だからって、あんまり…」
中身周瑜の呂蒙はニッコリ笑って言った。
「もう慣れましたよ。今日一日で」
孫策の顔がムンクの叫びのよーに青ざめた。
「なななな、慣れたって、何が!?」
呂蒙はニコリと笑って言った。
「内緒です」


その日、周瑜と呂蒙は孫策と陸遜を交えて夕食を摂り、後ろ髪をひかれながらも二人をホテルへ送って孫策と陸遜は帰って行った。
周瑜はコンビニで男性用の下着と靴下を買った。
生真面目な呂蒙は孫策との約束を守り、薄眼を開けながら器用に風呂に入り、周瑜に聞いた通りに化粧品を使って眠った。


翌日の早朝。
言われたとおり、中身呂蒙の周瑜はスッピンのまま出社した。
「周瑜さん、スッピンでも奇麗なんですね」
「フフ、ありがとう」
周瑜の部屋で、二人は向かい合って座り、呂蒙は周瑜にメイクをはじめた。
「私、生まれて初めて鬚を剃ったわ。じょりじょりするのね、あれって。面白い」
周瑜は楽しそうに言った。
「俺も、こんなメイクとかすんの、初めてですよ。あと、ブ、ブラとかつけるの、苦労しました…」
「良かった、ちゃんとつけてきてくれたのね。ノーブラでくるかも、ってちょっと心配してたの」
「ノノノ、ノーブラだなんてそんな!」
「!!」
思わぬ単語を部屋の前で聞いてしまった孫策はカッとなって部屋に怒鳴りこんだ。
「おおおお、おまえ!!公瑾の胸、見たのかっ!?下着はっ!?」
「社長…!?」
中身呂蒙の周瑜は首を横に何度も振った。
「みみ、見てません!し、下着は…つける時に見ちゃいました…けど」
「うおぉぉぉ!」
孫策は吠えた。
だが仕方のないことだと自分に言い聞かせ、心の中で叫んだ。
(我慢しろ、俺…!)

「すいません〜〜社長」
「社長、仕方ないです。下着見られたくらい、平気ですから」
「おまえが平気でも俺は平気じゃなーーーい!」
孫策はわなわなと震えた。

そこへ、はぁはぁ、と走ってやってきたのは陸遜だった。
「お、おはよ〜ございます」
「お、おはよ」
陸遜の目に飛び込んできたのは、呂蒙が周瑜にメイクを施している場面であった。
「おはよう、陸遜くん」
「お…はようございます…」
孫策もその部屋にいて、憮然としている。
「ちょっと顎をあげて」
「はい」
呂蒙の指が周瑜の顎に当てられる。
筆で口紅を塗っているのだが、なんともなまめかしい光景である。
陸遜はごくっ、と喉を鳴らした。
「はい、終わり」
「あ、ありがとうございます」
「そういえば呂蒙くん、なんかスポーツやってるの?」
「は?いえ、週に3回くらいジムで泳いだりしてますけど…なんでです?」
「腹筋、割れてたから♪かっこいいなあ〜って」
「こ〜ぉ〜き〜〜ぃん」
孫策が呪詛の言葉のように周瑜の名を呼ぶ。
「腹筋なら俺だって割れてる!」
張り合って腹を見せようとする。
「社長、落ち着いてください」
陸遜が孫策をなだめようとする。
「だって!公瑾が子明の腹なんかカッコイイとか言うから…」
まるで駄々っ子だ、と陸遜は思った。
「男性の筋肉って素敵だなあって思っただけですよ」と中身周瑜はフォローしたが、孫策はちょっとだけ拗ねていた。

「なんか先輩と周瑜さん、いい感じじゃないですか」
「は?」
孫策と中身周瑜の呂蒙が出て行った後、陸遜は中身呂蒙の周瑜にそう言った。
呂蒙は周瑜の部屋で自分の仕事をしていいと言われたので、そのまま部屋にいたのだが、なぜか陸遜もそのまま残っていた。
「イイ感じってなんだよ」
「言ったとおりですよ。なんだか羨ましいな」
「こういう特殊な状況だからってだけだよ。おまえが羨ましがることなんか、ないぞ?」
「そうかなあ」
「それよりおまえ、仕事はいいのか?」
「なんとなく…仕事が手につかないんですよね」
「おまえは直接関係ないのにな。悪いな、気を遣わせちまって」
「いえ…」
あのとき、自分もいたのに、と陸遜は思う。
咄嗟に周瑜を庇ったのは呂蒙だった。
自分は何もできなかった。それが悔しい。

一方、秘書室では二喬が一向に部屋から出てこない陸遜と周瑜を怪しんでいた。
「仕事…だよね?」
「だよね。だって周瑜さんには社長がいるし」
「だよね?」
「でもなんか…ずっと話してるっぽくない?」
「し、仕事の話…だよ、きっと」
実は陸遜と呂蒙なのだが、外見は陸遜と周瑜なのだ。


「太史慈に調べさせたんだが、エレベーター業者はそんなボタンを設置した覚えはない、というんだ」
昨日の報告を受けて、孫策が調査させた結果を周瑜に告げた。
「そうですか…ではあれはいったいなんなんでしょう。押しても何も起こらなくなりましたし」
「今のところ不明だ。もう少し調べてみるが…」
「…」
呂蒙は唇をぎゅ、と噛みしめた。
それがいつもの周瑜の癖なのだと孫策は知っている。
「どうした?」
「いえ。本当にずっとこのままだったらどうしよう、と」
「…大丈夫だ。絶対」
「…はい。すいません、気弱になってしまって」
顔は呂蒙のものだったが、その表情はまさしく周瑜のものだった。
孫策は抱きしめたくなるのをぐっとこらえた。
かわりに肩をぽん、と叩いた。


「先輩、お昼どうします?」
陸遜がそう訊くと、中身呂蒙の周瑜は即答した。
「牛丼食いたいんだけど…やっぱマズいかな?」
「別にいいんじゃないですか?」
「そ、そうか?」
「そのかわり周瑜さんらしくちゃんと上品に食べてくださいよ」
「じょ、上品に…?牛丼をどうやって上品に食えってんだ」
「ガツガツ食べないってことですよ」
「わかったよ、ゆっくり食べればいいんだろ。んじゃ行こうぜ」
そうして二人は会社近くの牛丼屋に出かけた。
ちょうどお昼時の牛丼屋は東呉商事の男子社員でそこそこ混んでいた。
「おい、あれ」
「えーっ?マジ?」
「あの人でも牛丼屋なんて来るんだなあ」
男子社員たちの噂になっているのは、もちろん周瑜のことである。
「陸遜と一緒ってことは、あいつが誘ったんじゃねえの?」
「よりによってこんなとこに誘うなんて、度胸あるよな」
さそったのは実は呂蒙の方なのであるが。

甘寧は、ランチを孫香と牛丼屋ですまそうとやってきて面食らった。
「げ!なんでこんな混んでるんだよ…」
牛丼屋の前に行列ができていた。
目ざとく甘寧と孫香を見つけた社員がいた。
「あ!甘寧部長と彼女!」
「げっ!」
「あら、甘寧さんの部下の皆さんじゃないですか」
「なんだよ…しかたねーな。並んどくか?それとも他いくか?」
「みなさん食べるの早そうですから並んでもいいと思います」
「…だな。しかもうちの社員で満員だ」
「はぁ…珍しいこともあるもんですね」
「だなあ。何があったんだか」
すると前に並んでいた甘寧の部下の一人が指さした
「あれですよ、原因」
指さされた人物は、ちょうどテーブルを立つところだった。
「え…」
その人物が歩いて店の入り口に来るのをじっと見つめていた甘寧と孫香であった。
「お、お二人さん」
先に声を掛けたのは周瑜だった。
「あ、周瑜さん…」
甘寧はそれでピーンときた。
いつも空いている牛丼屋が社員ばかりで混んでいる訳が。

「周瑜さんでもこんなとこ来るんですね…ビックリしましたよ」甘寧がそう言うと、周瑜は表情を変えずにしれっと「そうよ、悪い?」と言った。
一緒にいた陸遜はその周瑜の腕をひっぱって何事か耳打ちした。
「じゃあ、ね」
そうして二人は店を出て行ってしまった。
店内にいたほぼ全員がその様子を見送った。
「…おい見たか」
「なあ、あの二人、できてんのかなあ」
「まさか!だって周瑜さんは社長と婚約してんじゃねーの?」
「でもさ…なんか親しげだったじゃん?」
「いや、それより俺はあの人の牛丼の見事な食べっぷりに惚れ直したね」
彼らは、周瑜が陸遜とカウンターに座って牛丼を注文したとき、お嬢様っぽくお上品にチマチマ食べるものだとばかり思って注目していたのだったが、予想を裏切り、実に男っぽく豪快に、すがすがしいまでの食べっぷりだったのだ。
それもそのはず、中身はこの店を週の半分くらい利用している呂蒙なのだ。
そんなこととはつゆ知らず、秘書室の高嶺の花である周瑜を牛丼屋で見れるとなって、店にいた男性社員が他の社員に連絡した結果、牛丼屋の大行列となってしまったのだった。

「…なんか、やっぱ変だよな。周瑜さん」
「はい、そう思います」
甘寧と孫香は二人の去ったあとを見送りながらそう呟いた。


後編に続く!