呂蒙「伯言?どうした?」
陸遜「わ〜ん・・子明どの〜〜ぅ・・」
 
と、見ると孫権が諸葛亮に抱きついたままになってなにかぶつぶつ言っていた。
孫権に抱きつかれたまま、諸葛亮は床に倒れていたのだった。

諸葛亮「す・・・すみません・・・今の声は私です・・」
張紘「おぬしか!一体どうしたというのじゃ?」

諸葛亮「・・・そ、それが・・・ちょっと・・・」

陸遜「孔明どのが公瑾どのの唇を奪ったのですぅ〜!!」

甘寧「な!!何ぃ〜〜〜っ!?」

陸遜「そ、そして続いて私にもせまって・・・」
呂蒙「孔明どの〜〜っ!どういうことですかっ?」

諸葛亮「く、君主様ゲームをやっておったのです・・・」

虞翻「君主様ゲームだと!今どき?!」
谷利「ふっる〜〜!!」
蒋欽「東呉じゃあ、もう流行ってないぜ〜それ」
歩隲「これだから田舎モンは困りますねえ」

凌統「(ぼそっ)君主様ゲームってなんですか・・?」
呂範「酒の席でやるゲームだ。それに勝った者が君主様になれてな、他の者に好きな指示を出せるのだ。負けたものは君主様には逆らえんルールになっておる」
丁奉「あ、それ聞いたことある!裸になれ、っつったらならなくちゃなんないんだよな!」
凌統「・・そんなの殿はいつも普通にやってるじゃないですか・・・」

甘寧「・・公瑾どのと・・君主様ゲーム・・・」

甘寧はなにやら妄想モードに突入してしまったらしい。

周泰「だ、だからって、どうしてこんなことに?」

陸遜「ゲームで孔明どのが一番勝って、君主様になったので、わ、私と公瑾どのに孔明どのにキスするようにと・・・」
朱治「それで?」
陸遜「そ、それで公瑾どのはすっごく嫌がっていたんですが・・」
孫静「ふむふむ。それで?」
陸遜「孔明どのが無理矢理・・・」
張紘「む、無理矢理、どうなったのじゃ??」
陸遜「嫌がる公瑾どのを羽交い締めにして・・・」
張昭「おおっ!そ、それからっ!?え〜い!はやく言わんかっ!」

甘寧「・・・おい・・・オッサンたち・・・いい加減にしとけよコラ・・・」

張紘・張昭「はっ・・・い、いや儂らはこれでも心配して、じゃな・・」
顧雍「・・・・・・」
カン沢「は〜・・大のオトナがそろいもそろって・・・」
 

呂範が駆け寄って、周瑜を抱き起こす。
呂範「おい・・おい公瑾、しっかりしろ!」
周瑜「うう〜ん・・」
周瑜が目を覚ますと、周りを囲む者達が口々に声をかける。
呂蒙「大丈夫ですか?」
徐盛「お気をたしかに・・・」

孫匡「あ、あれ?朱然は?」
孫瑜「あ、そういえば・・・」
孫桓「お〜い、義封〜!どこだ〜??」

三人が朱然を探していると、どこからともなく朱然らしき声が聞こえてきた。
朱然「きゅぅ・・・・・」

孫匡・孫瑜・孫桓「きゅぅ??」
声のした方をみると・・・
孫瑜「あっ!!朱然!!」

朱然「た・・・すけ・・・て・・」
朱然は孫権に抱きつかれて倒れている諸葛亮のクッションになっていた。

諸葛亮「あら?まあ、気が付きませんでした・・なんか下に柔らかいのがあるな〜と思っていたのですが」
哀れな朱然はやっと孫瑜達に引っ張り起こされた。

そのころの孫権は相変わらず抱きついたままだった。
谷利「殿・・・?」
孫権「う〜〜ん・・・諸葛孔明・・・公瑾は・・渡さぬぞぅ〜・・・」
程普「こっちも公瑾の取り合いだったのだな・・・」

丁奉「たっ!大変だ!公瑾どのが!」
太史慈「今度は何だ!?」

周瑜「ここは・・・どこ?私は・・だれ?」

呂蒙「わ〜〜っ!こここ、公瑾どの??」
陸遜「ショックのあまり、記憶喪失に・・・!?」
徐盛「なんと!!」
甘寧「・・・・!!」

太史慈「おい!諸葛亮!この責任をどう取るつもりか!」
黄蓋「そうじゃそうじゃ!」
諸葛亮「せ、責任ったって・・あれはゲームですよ」
韓当「ゲームだからって、やっていいことと悪いことがあるであろう?!」
黄蓋「そうじゃそうじゃ!」

甘寧は呂範を押しのけて周瑜の傍に行き、やけに優しく、二枚目ぶって声をかけた。
甘寧「大丈夫ですか?」
周瑜「・・・あなたは・・?」
甘寧「あなたとは愛し愛される関係の男です」
呂蒙「わっ!何言ってんだ!興覇!」
陸遜「こ、興覇どの!なんてことを!」
徐盛「興覇どの、抜け駆けでござる!」
朱桓「そうですよ!そんなのダメですっ!」

周瑜「愛する・・・?」
甘寧を押しのけて、徐盛、朱桓、陸遜らが周瑜の視界に入ろうとする。
陸遜「今の、嘘ですからね!」
朱桓「そうですとも!愛してるのは某でございますからっ」
徐盛「朱桓・・・・!おぬしも、そうだったのかっ!」
甘寧「こら〜〜っ!俺が先だっ!」

程普「こらこらこら!そこ!勝手に盛り上がるな!」
谷利「みんな必死だな〜」
周泰「公瑾どのは皆に愛されておったのだな。うむ。一軍の都督ともなれば当然か」
蒋欽「愛され方がちょっと違うような気もしないでもないが・・・」
 

こちらはまだ押し問答の最中であった。

太史慈「このまま、公瑾どのの記憶がもどらなかったらどうするつもりだ!」
黄蓋「そうじゃそうじゃ!」
諸葛亮「どうするって・・・」
韓当「そもそもおぬしが君主様ゲームなんぞやるから悪い!」
黄蓋「そうじゃそうじゃ!」
太史慈「・・・こほん、・・ご老体・・・少し、黙っていてはくれまいか」
黄蓋「そうじゃそうじゃ!・・・・ん?何かいったかの?」
太史慈「・・・・・いえ」
諸葛亮「わかりました。そこまでいうなら責任取りましょう」
太史慈・韓当・黄蓋「??」

諸葛亮にくっついていた孫権がいつの間にかいなくなっていることに誰も気づかなかった。

すっくと立ち上がった諸葛亮は周瑜のまわりの人混みをかき分け、周瑜を両腕で抱き上げた。

甘寧「わ!なにしやがる!」
諸葛亮「さ、参りましょう」
陸遜「参りましょうって・・」
諸葛亮「責任を取って我が国に連れて参ります」
呂蒙「お、おい!」
丁奉「こら〜〜っ!泥棒〜!」

諸葛亮が歩き出そうとすると、なにやら足元にからみつくものがあった。

諸葛亮「ん・・・?わっ!!」
孫権「ふはははは〜〜逃がさぬぞ〜〜置いて行け〜〜」
朱然「わ〜〜〜っ殿!!」
太史慈「い、いつの間に??」
孫権「置いて行け〜〜〜」
朱桓「わ〜〜妖怪みたいだ〜〜」
呂蒙「そんなこと言うなよ〜〜」
谷利「あ、やっぱりちょっと怖いんだ」
呂蒙「だから〜〜!」

諸葛亮「うわっ・・・な、なんだ・・」
孫権「こ〜きんを置いて行け〜」

孫権が不気味な動きで諸葛亮の脚を絡め取る。

諸葛亮「わわわ、わかりましたっ!置いて行くから、こ、こっちへ来ないで〜〜っ!」
周瑜「あっ」

諸葛亮が腕に抱いていた周瑜をはずみで落っことした。

甘寧「わっ!公瑾どの!てめ〜、もっとしっかり持ってろよ!馬鹿!」

思いっきり床に落とされた周瑜は再び気を失っていた。
 

いっぽうその頃の二人。

諸葛瑾「わぁ〜〜ん、あんまりだ〜」
魯粛「わはっはっは〜それそれ!はははは」
魯粛が諸葛瑾の顔に筆で落書きをしていた。
諸葛瑾「ひ、ひどいです〜あんまりですっ」
魯粛「いやあ、よく似合っておる!ほれほれ、あ、ちょいとここに轡でも描いておこうかの」
諸葛瑾「わぁ〜〜ん!これじゃまるでロバじゃないですか〜〜」
魯粛「おお、そうだ!ロバだ!うんうん」
諸葛瑾「納得しないでくださいよ〜〜!!」

諸葛亮「あ、兄上っ!私、帰りますねっ!こんなとこ、もう嫌ですっ」
諸葛瑾「あ、孔明〜なんかあったのですか?」
魯粛「おお、孔明どの?もうお帰りか?」
諸葛亮「・・・・ここだけ時間の流れが違う気がする・・・」

帰ろうとしていた諸葛亮だったが、そこにそのまま居着いてしまった。
 

周瑜「・・・むっ」
凌統「あ、気が付きましたね!良かった・・」
甘寧「公瑾どの・・・ご気分はいかがですか?(きりっ)」
徐盛「興覇どの・・・それもまた作戦のうちでござるか」
甘寧「いちいちうるさいヤツだな〜」

周瑜「気分はサイアクです・・・、あいつのせいで」
凌統「あ!記憶が戻ったんですか?」
周瑜「なんのことをいっているのですか・・?」
甘寧「が〜ん・・がっくし・・・」
周瑜「???」
朱桓「ま、まあ、良かった・・ではないですか」
周瑜「あれ?殿は・・?」

はっ!として孫権を一同振り返る。
・・・・と、そこには床にへたばって眠り込んでいる孫権の姿があった。

一同、なぜか微笑む。

孫瑜「ふう〜」
孫桓「なんか一段落ついちゃったね」
呂範「さ、飲み直そう」
太史慈「これでゆっくり呑めるというものだな」
蒋欽「殿、ほっといていいのか?」
程普「周泰と谷利が片づけるだろう?」
黄蓋「おいおい、殿はゴミじゃないんじゃから・・」
 

諸葛瑾「うわ〜〜ん」
虞翻「・・・まだやってるのか・・」
歩隲「そなたも大変だの、孔明どの」
諸葛亮「さあ、あんまり一緒にはいませんでしたから」
虞翻「・・時に孔明どの。さっきうちの都督を連れて帰ろうとしておったようですが、どこまで本気だったんです?」
諸葛亮「私はずっと本気ですよ〜うふふ」
歩隲「ずっと!??」
諸葛亮「あ、いえ、なんでもないです」
 

そのころ、呂蒙らに周瑜は自分に何が起こったのかを聞いていた。

周瑜「そうでしたか・・・では私を助けてくださったのは殿だったのですね」
呂蒙「は?」
周瑜「だってそうでしょう?私を置いて行けって・・・」
陸遜「は・・はは・・確かにそうですが・・」
周瑜「では、お礼を言ってこなくては」
陸遜「あ、でも・・・殿はもう・・」

床に寝そべっている孫権の傍には周泰と谷利がいて、担ぎ上げようとしていた。
そこへ周瑜が寄っていった。

周瑜「殿、助けていただいてありがとうございました」
周泰「公瑾どの、殿はもう眠っておられる故・・・・」

そのとき、孫権が谷利と周泰に両肩を支えられながらもがばっ!と身を起こした。
孫権「こ〜うきん〜♪」
そしてそのまま周瑜にしがみついた。
周泰と谷利はあきれて顔を見合わせた。

谷利「この態度のちがい、どう思うよ?」
周泰「・・・・殿・・(涙目)」

周瑜「あっ、と、殿」
孫権の重みでまた周瑜はそのままうしろに倒されてしまった。

周泰「わ!だ、大丈夫ですか!?」
谷利「ありゃ、また気絶してるぞ・・大丈夫かな?」
谷利は周瑜をそっと起こす。
谷利「おい、公瑾どの、大丈夫か?」
周瑜はゆっくり目をあけた。

周瑜「・・・ここはどこ?・・・私は・・・だぁれ?」

谷利「!」
周泰「・・うそだろ・・・?」
そうして二人はそっと甘寧やら太史慈やら他でかたまって呑んでいる一団を見渡した。
誰も気づいていない。
谷利「・・・知らせない方がいいかな・・・?」
周泰「・・また、大変なことになるな・・・」
谷利「どうする・・・?」
周泰「・・・・どうしようか・・・う〜む・・」

その横では孫権がふたたびすやすやと眠りにおちていた。
 

そのころの文官たち。

魯粛「わっはははっは!ロバ!ロバロバロ〜バ」
諸葛瑾「しくしく〜〜〜〜」
虞翻「して、その真意は?」
諸葛亮「んもう〜しつこいなあ〜」
歩隲「あ、わかった!本当は公瑾どのに惚れてるんですな!?」
諸葛亮「あ〜やだな〜もう〜わかりますぅ?」
 

張紘「飲み過ぎてもう料理の味がわからん」
張昭「またまた〜そんなこといっちゃって・・・」
朱治「む〜〜やっぱりこの肉堅いぞ」
孫静「だからそんなにいっぺんにほお張るからだって」
孫静「元歎、おぬしまた飲んでおらんのか!」
顧雍「・・・・・同じことをまた説明させるつもりですか・・・ああもう・・」

カン沢「大のオトナがそろいもそろって・・・」

カン沢のふか〜い溜息で今宵も更けていくのであった・・・。
 
 
 

終劇

























周瑜「あれ〜〜?私はどうしてここに?」
諸葛亮「ふふふ・・・いいんですよ、わからなくて」
周瑜「あなたは?」
諸葛亮「私は・・・あなたと将来を誓いあったものです」
周瑜「将来を・・・?」
周泰「あっ、こら勝手に何を語っているんだ!油断も隙もない・・・しっしっ!」

周泰に追っ払われた諸葛亮は走って逃亡した。

孫瑜「あ、あといいですよ、私が見ときますから」
周泰「そ、そうか・・・?仲異どのなら・・安心か。では頼む」

周泰は去って行った。

孫瑜「・・・やっと・・ふたりっきりになれましたね・・・」
周瑜「??」
孫瑜「いつも・・・・あなたとこうして二人でお話したいと思っていたのですよ」
周瑜「はあ・・・・」
孫瑜「なのに、いつでも邪魔が入るんです・・まったく」

「な〜にがまったく!だ!!」

孫瑜「はっ・・・?だ、誰ですかっ??」
甘寧「俺だ、俺」
朱桓「私もいます・・」
徐盛「某も」
甘寧「いい度胸だな〜俺達を差し置いて」
孫瑜「あ、あなたがたに、公瑾どのは渡しません!」
周瑜「どなた・・・・ですか?」
徐盛「えっ・・・・?」
朱桓「ま、まさか、また・・・」
陸遜「き、記憶喪失ですかっ!」
甘寧「・・・・(ちゃ〜んす!)」

そのとき、大きな山が動いた。
陳武「失礼いたす」
孫瑜「わ・・・な、なんだ」

突然現れたかと思うと、陳武は周瑜を抱き上げた。

甘寧「ここ、こらっ!公瑾どのをどこへつれてくんだっ!」

甘寧の言葉に、その赤い目でぎろり、とにらむ。
陳武「・・・・孫策さまが・・・・」
呂蒙「ええっ!!?」
陳武「孫策さまが呼んでいるのでお連れするのです・・・」
朱桓「そ・・・孫策さまって・・・・もうずっと前に亡くなっているではないか・・・」
呂蒙はそっと朱桓の腕につかまった。

周瑜「孫策・・・・・さま・・?」
周瑜を抱いて歩く姿はまるで大魔神のようだった。
陳武「おつれ・・します・・・」
周瑜「伯符さまのところへかっ!?」

甘寧「おいおい・・・戻ったみたいだな、記憶が・・・」
徐盛「孫策さまの名が引き金になったのでしょう」
陸遜「・・し、しかし連れてくって一体どこへ・・・・」
甘寧「・・・・おい・・・もしかしてあいつ・・・・すっげ〜酔ってないか」
陸遜「・・・ほんとだ・・・・足がふらついてますよ・・・大丈夫かなあ〜」
甘寧「心配だからついていく」
徐盛「某もお供いたす」
陸遜「あ、私も・・・子明どのは・・・って・・・」

少し離れた所で、呂蒙と朱桓が手を取り合って震えている。

呂蒙・朱桓「こ、こわいよ〜〜」



これにて真・終劇