戻れ

でたらめFate劇場








以下の作品群は、読者を選びます。

それでも良いという方のみ、読み進めて下さい。
 
 
 
 
 

確かに『セイバー』だけど
 
 
 
 

  ランサーと対峙する士郎。

  静かに、自らの死を ―― 絶対なる『それ』を ―― 悟る。

  悟ってしまう。
 
 
 
 

  しかし ――
 
 
 
 

  次の瞬間に、周囲に鳴り響いた『メロディー』に、二人は怪訝な顔をした。

  周囲に、静かに、だが確かに響き渡る、哀切な単調の『メロディー』。
 
 
 
 

  その『メロディー』に心当たりがあれば、ランサーは無事だったろう。

  その『メロディー』に心当たりがあれば、士郎は安堵と共に恐怖しただろう。

  しかし、二人はその『メロディー』に心当たりが無かった。

  だから、ただの音楽だと判断した。
 
 
 
 

  それがランサーの不幸。

  それが、士郎の不幸。
 
 
 
 

  その『メロディー』は、衛宮の屋敷へと向かう凜とアーチャーにも聞こえていた。

  その『メロディー』に心当たりがあれば、二人は逃げるべきだった。
 
 
 
 

  しかし、二人ともその『メロディー』に心当たりがなかった。

  だから、二人は衛宮の屋敷へと向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  そして、そこに、悪夢を見た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  ランサーを一刀の元に切り伏せた『それ』は、悠然とした佇まいを見せていた。

  左手に長銃身のエネルギーライフル、右手に抜き身の長大な真剣を引っ提げた無骨な装甲宇宙服姿。

  夜空の月を背にした長身の装甲宇宙服が向き直る。

  士郎は、その黒くコーティングされた無骨なバイザーの中に、燃える戦士の瞳を見たような錯覚を覚えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「こいつが………たった一太刀でランサーを倒した………」

  凜は、その姿に総毛立った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「わたしの名はクレスト・セイバーハーゲン」
 
 
 
 

  漆黒のバイザーの奥の目は、確かに士郎の目を射貫いていた。
 
 
 
 

「だが、人は私を星壊し(スターブラスト)』セイバーと呼ぶ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  ……………………………………………………いや、確かにセイバーだけどさ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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