二万ヒットおめでとうございますSSS
俺は殺される
殺される。
そう奴等に殺される。
遠野志貴は、カウンターに突っ伏したまま、紫色の顔をバーテンダーに向ける。
「志貴さま、顔色が悪いようですが、大丈夫ですか?」
「・・・・・・たぶん、対丈夫だったらいいなぁ」
心配そうに尋ねるヴァイオレットに、希望的観測を呟いた。
「何か、体に良いものでもお出ししましょうか?」
「カクテルで?」
ヴァイオレットは、残念ながら、と言い、本当に残念そうに首を横に振る。
「志貴さまは強いアルコールが駄目と言う事なので、幾つかのハーブを使った料理になりますね」
料理、その一言に、志貴の顔が紫から赤に青に変わり、最後には土色から肌色になった。
「ハハハハハハ、チョットエンリョサセテイタダキマス」
急にロボット調の片言喋り話した。人形のような何も移さない瞳は、怪しく何処か別の世界を見ている。
「あ、あのぅ」
ヴァイオレットが、ためらいがちに何処かへ逝っている志貴へ声をかけた。
「今日は、もう翡翠、レン、の料理を食べて死にそうなんです」
志貴は辛そうに、そして唐突に呟いた。
「もう、毒としか思えないものが出てきて、断ろうと思ったんですけど、両手に張られている絆創膏を見るとどうしても出来なくて・・・・・・」
死刑囚のざんげとしか言いようの無い口調で、志貴は愚痴る。
「食べて悶絶するわけにも行かないでしょ。うまいよ、て笑顔で言ったら、歓んじゃって更に持ってくるんですよ。もう辛いです」
志貴は泣きながら、顔色を元通り紫にした。
「そういえば、ヴァイオレットさんも手にばんそーこ、つけてますけど、怪我でもしたんですか?」
志貴は、ヴァイオレットの左指を刺して尋ねる。そこには蒼い絆創膏が張られていた。
「いえ、これはおまじないです」
「おまじない?」
「ええ、近頃女のヒトの間ではやっているんですよ。手に赤い絆創膏を巻くと、好きな人がお弁当を・・・」
金髪の美女が鼻歌を歌いながら、包丁を握る。既に何度も手を切っているのだろう、両手には怪しいほどの赤い絆創膏が張られていた。
「志貴、歓んでくれるかな〜」
そのアーパーな口調は、以前の彼女を知る者が見たら嘆くだろう。あの、『アルクェイド=ブリュンシュタッド』が何と嘆かわしい、と。それほど彼女は変わっていた。
真祖を殺すために作られた真祖、それ以上でもそれ以下でもない、殺すためだけの究極の兵鬼にして、最凶の化け物、冷徹なる狩人たる、不死身の死神『アルクェイド=ブリュンシュタッド』。その化け物が、たった一人の男のために楽しそうに包丁を振るう。見るものが見れば、堕落以外の何者でもない状態。本来ならすぐに直せる傷を治さず、その痛みすら楽しげに受け取って食材を切り裂くなど、だれが想像しただろう。
誰も出来はしない、それほどまでに変わってしまったのだ。
それでも変わらないものはある。その残虐性も、破砕力も、兵忌としての純粋さも失ったわけではない。ただ、それが隠れてしまっているだけだ。壊れてしまった心の隙間に、滅殺者としての彼女は埋もれ、その代わりに真祖としての彼女が顔をのぞかせたに過ぎない。
そう変わったわけでないのだ。
その危うい彼女は、『はじめてのお弁当〜愛妻編・ちょっと難しいかも?〜』を片手に、真心を込めた料理を作ってゆく。愛しき人に食べてもらうために、歓んでもらうために一生懸命がんばっていた。はぁと型のふりかけも、少しこげた出汁巻き卵も、ちょっと型が崩れたハンバーグも、彼女が精魂込めて作ったものだった。
「アルクェイド、弁当ならいらないぞ。と言うか、しばらく弁当は見たくない」
夕日の中、これからが血を狩る者達の時間が始まるその時に、正常な判断力を失った遠野志貴は、自らの未来を選択する。
彼女は変わったわけではないのだ。アルクェイド=ブリュンシュタッド、彼女の二面性はどちらもまさしく彼女なのだ。
では
もし
彼女の二面が重なれば・・・・・・
今は夕方、これからが、世界の異なるもう一つの姿が見え隠れする時。
吸血鬼の本来の世界。
志貴は、七夜の血が、バクチクの某メロディーを流そうとする事を本能で感じた。
アーメン
〜あっとがき〜
AAA:どうも、へたれ駄目人間のAAAです。読んでくださりありがとうございます。
アレ:どうも、二回目から何故か登場するぷりてぃなマスコット、アレだ。よろしくぅ。
AAA:二万の記念で送るはずが・・・
アレ:遅い上に短いか、最悪だなおい。
AAA:仕方ないんだ。一度没にしたネタがあるんだから、しょうがないんだよ。
アレ:ああ、なんか月姫でやる意義がなくなったアレか、途中で気づいてたんだからやめればいいものを・・・
AAA:だってノートで十五キロだぞ。やめられるかよ・・・
アレ:そうやって見通しが悪いからこうなるんだ。
AAA:う、うるさいやい。もう良いだろう、疲れたよ。
アレ:勝手に死んでろ。
AAA:酷い、死んでやるぅ。
アレ:さっさと死ね。
AAA:ちょっと待て、ハンマーは流石にヤバ・・
アレ:そういうわけで、AAAの駄目人間が死んだので幕を引かせてもらう。
最後に、Lost-Way様二万ヒット+あるふぁおめでとうございます。
これからも、予測できないオチのSS楽しみに待っています。
煉獄に落とされて転生しかけている作者に代わり、アレでした。
アデュ〜
アレ:そうそう、カレーパンのテーマソングの歌手がバクチクらしいぞ。言い忘れてたな、ハッハッハッハッハ。今度こそさよならだ。運
が良かったまた会おう。さ〜よ〜な〜ら〜〜〜〜〜
Lost-Wayの後書感想
AAA様、いつも有り難う御座います。
一万ヒットに続いて二万ヒットまでSSを戴いてしまいました。
ああ………愛されてるなぁ、私。
これからも御贔屓に。
………私も何かSS贈らなきゃね。
2003年6月17日。
「最近ハーブティーに凝ってます(笑)」
Lost-Wayでした。
追記。
SSの感想はBBSの方にお願いしますね。
では。