Moon Time『月姫カクテル夜話』 

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五万ヒットおめでとうございますSSS

迷探偵アキハを読んだ後の方がより笑える・・・・・・かもしれません
 
 







その少女の名は・・・・・・











written by AAA
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 琥珀は、ああ、と呟く。その花を見て、彼女は直感した。これは自分を治すためのものだと。

 そして、琥珀は、ああ、と泣いた。一筋の涙も流せず、張り付いたままの笑みを消すことも出来ず、それでも泣いた。それは、自分の愚

かさを嘲笑うため。
 
 
 
 

 なんて、

     なんて、

         愚かだったんだろうか。

                    そう、

                       あれは
 
 
 
 

「そうだったんだ」

 呟きと同時に、花が揺れ、琥珀の心が温まる。

「琥珀に」

 ゆっくりと指先で花と繋がる。

「暖かい」

 琥珀は、治し方が分かった。だからゆっくりと、直ってゆく。

 それは、今まで示されていた道から闇が消えだけだ。そんなことは琥珀にも分かっている。
 
 
 
 

 志貴

 秋葉

 翡翠

 そして、
 
 
 
 

 こはくを『あい』してくれたひとびと
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「なんて、幸福なんだろう」 

 琥珀は自分の幸福に気づいた。

 琥珀はだから、だから、もう一度呟いた

「あ  た   た    か      い」

 それは、とても罪悪感に満ちた呟きだった・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 時の起こりは何時だろうか、時間なんてものは意味を成さない。

  なぜなら観測者が無限の観測者によって見張られているのだ。

  どの観測者の時間を正しいとするのかは、疑問と問題が付きまとう。

  ただ、琥珀という人間が、それを見つけたのは、琥珀という人間にとって二日前だった。

 それは腰まで届く漆黒の髪を風で揺らし、フランス人形の様にフリルのついた服は全ての色で塗りつぶした黒、光を反射させない黒色の

瞳は必要なものだけを見つめる。

  全ての光を混ぜた白い肌は原子レベルでの傷すらも無い。

  それは、少女の姿をしていた。

 美しい少女だ。
 
 
 
 

 琥珀はそれに選ばれた。

 いや、違うのだろう。

 それに琥珀が気づけたのは、それがそれの役目だったからだ。

 琥珀はそれから目が離せなくなった。

 そこに居たのは、
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「昔の私だ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 人形だった。

 昔の琥珀と同じ、目的のためだけに生きる、人形。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 だから、琥珀は

 それに向かい、琥珀は一歩前に踏み出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

        決心した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 それの目の前で、琥珀はしゃがんだ。それと視線を合わせるためだ。

「ねぇ、何してるの?」
 
 
 
 

             彼女が与えられたものを少女にも分けることを
 
 
 
 
 

 その時から、その場は変わった。
 
 
 
 

 いや、違う。

 それが琥珀に気づかせたときから決まっていたのだ。

 そこが琥珀の場である事は。

 だれも邪魔は出来ない。

 それが、それに与えられた権限だからだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 だから、カクテルバー『ムーンタイム』は琥珀の場となった。

 そして、そこから通じる全ての世界が、琥珀のために存在することを定義する。

 それは、その場を考えるならば、奇跡に近い確率であった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 琥珀はそれの手を引いて家路に着く。

 なぜか歩きたくなったのだ。

 それは、人形のように手を引かれてゆくだけだ。

 しかし、よく見ると、時々琥珀のほうを見ては視線を戻していた。

 そんな些細なことだけで、琥珀は浮かれられた。

 そして、自分の住む屋敷に戻ると、琥珀は秋葉を探した。それを住ませるためだ。

 琥珀は駄目と言われても、どうにかするつもりでいた。

  というより、駄目と言われると確信していた。

  なにせ秋葉から見れば、絶世の美少女が愛しい兄(前科多数有:幼女も居たりする)と一つ屋根の下!!!

  そんな危険なことを許すはずがない、と踏んでいたのだ。そのための切り札もあった。
 
 
 
 
 
 
 
 

「許可します」

 しかし、秋葉はそれの目を見るなり、そう答えた。
 
 
 
 

 ラッキーですよ。ラッキーです、と頭の中で誰かに叫びながら、お礼の言葉も片手間にそれと抱き合った。

 秋葉はその様子に苦笑する。
 
 
 
 

「へぇ、可愛い子だね」

 志貴はそう言って、それの頭をなでただけで終わり、
 
 
 
 

「にゃあーーーーーぉう」

 レンはそれの足元になつき、
 
 
 
 

「・・・・・・あたいにほれんなよ」

 翡翠はアウトボクサーの様にステップを踏む。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・翡翠だけは反応が読めなかったが、概ねそれと遠野家の関係は良好だといえた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「これはこうやって、こうして」

 琥珀はそれに箸を持たせると、二人羽織の様な形でそれに箸の使い方を教える。

  それは計算されたかのような絶妙な不器用さと、琥珀にだけは分かる懸命さでゆっくりと二本の棒の使い方を習得して行った。

 計算されたように不器用ながら一生懸命なそれに、琥珀は更にのめり込む。

 暫くして、それは誰が見ても不器用ながら、震える二本の棒でご飯をつかんでいた。

「はい、良く出来ました」

 琥珀はうれしそうに頭をなでた。
 
 
 
 

「・・・・・・ふ、背中が煤けてるぜ」

 翡翠は決めポーズをとったまま、タバコの形をしたチョコを口にくわえる。何か妙なものでも食べたんだろうか?

「あなたを原因です」
 
 
 
 

 ・・・・・・・・・・勝手にナレーションと話さないように

「・・・・・・迷探偵アキハを洗脳探偵ヒスイに変えてください」
 
 
 
 

 おもろ味が無いから嫌。

「あなたに殲滅です」

 あーと、本編と関係無いから飛ばすね。
 
 
 
 
 

 酷い目にあった。いくら死なないからってあれは・・・・・・、おっと、本業に戻らないと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 遠野家恒例の食後ゲーム大会、今日は外来人、志貴が遠野家に伝えた由緒正しいゲーム、マージャンをやっている。

  卓を囲んでいるのは東から順に翡翠、志貴、秋葉、そして、それ+琥珀の連合チームだ。

 それは迷いながら、中に手をかける。

 勝つための術ではない、負けないための選択だ。

「違いますよ。ここはこうして、こっちで役を・・・・」

 琥珀は中から手を放させ、イーソーを持たせた。勝つために、琥珀の勝負士の勘がそれを選ばせた。

「ちょっと、琥珀!、ヒントはなしだって言ってるでしょう」

 すでにリーチをかけていた秋葉が、苛立った声を上げる。

  ここまで、頭はねを一回くらい、振込みを三回もしていた。

  現在最下位街道を順調に上りつめている。

  このままでは、この半壮も負け決定だろう。

  さらに、この半壮で負けると、もう総合順位も最下位からは抜け出せない。

「まぁ、良いじゃないか秋葉、初めてなんだし」

 大人気なく感じた志貴は、秋葉をたしなめる。

「ついてるのは、イカサマが得意な琥珀ですよ!!    正当な要求です」

 何かを思い出したんだろう、怒髪天を突かせながら秋葉は叫んだ。

「秋葉様・・・・・・いい気になってんじゃねぇ」

 妙にすさんだ翡翠が、ヤンキー座りで秋葉を睨む。

 翡翠がやると、妙に怖かった。
 
 
 
 

 そんな翡翠に全員が引きながら、夜は更けてゆく。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 翌日、琥珀は不思議と気持ちがよかった。

  まるで不安や悩みが無いかのように動けた。

  それが隣に居るおかげで、浮かれた気分のまま動き続ける。

 そのせいだろう庭の掃除をしている時、琥珀は小石につまづいた。

 顔面から盛大にこける。

  見た目にはとても痛そうだった。

  しかし、琥珀はすぐに起き上がると、それに向かって笑いが尾を向ける。

「大丈夫です。こんなのへっちゃらですよ」

 そう言って、それを安心させようとした。

 そしてその日一日、琥珀は幸せを感じていた。

  安心感が彼女をそうさせていたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 琥珀は夢を見た。とても暖かい夢だ。

  内容は思い出せない、ただ、とても暖かかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 それは起き上がると、歩き出した。

  別の場所へ行くため。

  この世界は直せたから、だから、他の世界を直しに向かった。

  万と言う年月すら超え、すでにどれぐらいたったのだろう。

  それでもそれは終わらなかった。

 それという物質の居る意味は、直す。

  王様が、そのためだけに作った物質。

  我侭な王様の、我侭な願いのために、それは世界を直し続ける。

 心も、身体も、すべては見かけだけ、有るのは絶対的な権力のみ。

 それは、別の世界へと渡り歩き始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 翌日、琥珀の目が覚めると、それは居なくなっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 トイレにでも行ったんだろうか、琥珀はそう考えトイレに向かうが居ない。

  風呂や庭にも居なかった。

  朝風呂や、森林浴に行ったわけでもないようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 

「まさか」

 嫌な予感がした琥珀は、すぐに志貴の部屋に押し入る。

  何かが決定的に壊れる音が屋敷中に響き渡り、志貴の部屋の扉が宙を舞っていた。

「ん、こ、琥珀さん!」

 轟音に目を覚ました志貴は、修羅の形相をした琥珀に、固まった。

  そのまま恐怖で卒倒しそうになるが、恐怖に慣れすぎたためか卒倒出来なかった。
 
 
 
 

 その事を志貴は神様に抗議した。
 
 
 
 

 無言で琥珀は布団を捲り上げる。

 そこには予感に反して、服を来た志貴以外誰も居なかった。

「ほぅ」

 琥珀は安堵のため息をつく。

「ごめんなさい、志貴さん。あの子が居なくなったんで、もしかして志貴さんが、純潔を奪ったんじゃないかなぁ、て思ったんです」

「あの子って、誰?」

 志貴は、琥珀のとんでもない事に抗議する前に、純粋な疑問をぶつける。

「いやですねぇ」

 そこまで言って、琥珀は固まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 駆け足で廊下に出る。

  体中に冷や汗をかきながら屋敷中を探した。

  しかし何処にも居ない。
 
 
 
 

 後残ったのは、ロビーのみ。琥珀はほとんど結果を予感しながらそこへと向かった。

 予想通り、そこには誰も居ない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ただ、見たことも無い花が一輪、ガラスの花瓶に入っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ああ」

 花を見た瞬間、琥珀は理解した。それがもう居ない事が、急速に理解できたのだ。だから、琥珀はそれだけ呟いた。

 ああ、と呟いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 だれもそれになまえはつけなかった
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 RETURN TO YOUR WORLD AFTRE 50000 YEARS. YOU WILL GET YOUR ・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 



 
 
 

あとがき

アレ:今回は作者をさっき(迷探偵アキハのあとがき:この作品は迷探偵アキハと同時に作られました)で殺したから一人だ。

  いえーーーーーーー、と言うわけで、可愛らしいマスコットキャラクター、アレだよろしくぅ。

  今回は、あの馬鹿がトチ狂ったせいで、元ネタの無いオリキャラを素で出してきやがった。

  せめてどこかのSSで出してりゃ開き直れたもんを・・・・・・そんな事はどうでも良くて、Lost-Way様、楽しい小ネタの有るSS

を読ませていただきありがとうございます。

  これからも応援してるぞ。

  それとAAAの怨念がこもった手紙が有るな。

  最近忙しくてまめに見に行けないのが悔しいです、だそうだ。それじゃ、あでゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
 
 



 
 
 

Lost-Way後書き。

不思議でほのぼのとくる、暖かいお話でした。

どこかに置き忘れてきた何かを思い出せるような、そんな気持ちになりました。

琥珀の痕と、過去。

存在している以上、誰しもが負うものではありますけれど。

『我侭な王様』と『その従者』に感謝を。

すべての『傷負う人達』に癒しの手を。

有り難う御座いました。
 
 
 
 

SSの感想はBBSの方にお願いしますね。
 
 

では。

Lost-Wayでした。
 
 
 
 
 
 
 


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