プレゼントは、歩きながら、買う。
「ちょっと、まって」
アルクが、俺の腕を引っ張る。
アルクは、まるで猫のように、急に立ち止まる。
文房具屋さんの前だった。
月姫カクテル夜話 短編集
『百円の宝石』
Written by “Lost-Way"
アルクが急に立ち止まって、俺の腕を引っ張るのは、必ず、珍しいモノや、かわいいモノを見付けた時だ。
「これ、かわいい」
俺は、すぐ、店の中に入って行って、買ってあげる。
「うれしい。ありがとう」
プレゼントと言うには、あまりにも安いプレゼントだ。
それでも、アルクは、何億円もする宝石をもらったように喜んでくれる。
百円の宝石だ。
王国のお姫様になったようだ。
俺は、王国の王子様になったような気がする。
アルクは、文房具屋さんの前を歩いていたことを、すっかり忘れてしまっている。
お姫様が俺の腕を引っ張るのは、たいてい、決まっている。
文房具屋さん。
安売りの化粧品が並んでいる薬局。
今、ケースに詰められたばかりの、菓子パンが沢山並んでいるパン屋さん。
コンビニのアイスクリームのボックス。
そして、何でも百円のコーナー。
「いいの?」
一応、アルクは気にする。
「大丈夫。お金持ちだから、現金で買う」
そう、俺は、アルクに、籠を渡す。
お姫様は、笑いながら、そこで豪遊する。
歩きながら買う百円のプレゼントに勝るプレゼントは、無いのかもしれない。
さっき、雑誌を見ながら、「これ、いいね」と、俺は言った。
アルクは、すかさず言った。
「いいの? ダメダメ、こんな高いの。でも、本当にいいの? うれしい」
俺は、あげるとも何とも言っていない。
そういうところも、大好きだけどね。
end………?
or continue………?
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& 『KAZ23』
THANKS A LOT!!
後書き………のような駄文。
プレゼント系の短編です。
無邪気で素直なお姫様。
ころころ動く猫の眼の様な表情。
モノの値段云々以前に、「志貴に買ってもらった」というだけで大喜びしそうな。
そんなひとこまを。
実際、値段やら気にしちゃうのが私たちの問題点でしょうか? (苦笑)
では。
Lost-Wayでした。