プレゼントには、二通りの贈り方がある。
テニスで言えば、『スマッシュ』のようなプレゼント。
もう一つは、『ロブ』のようなプレゼントだ。
『スマッシュ』というのは、ボールを上から叩きつけるように強打して打ち込む事だ。
それに対して、『ロブ』と言うのは、相手の頭の上を通り越すように、ふわりと高く打ち上げることだ。
『スマッシュ』が続いた後に、『ロブ』を打たれると、意外にレシーブが難しい。
一種のフェイント攻撃だ。
『ロブ』のコツは、ふわりと打つことだ。
『ロブ』の方が、一段、高度な技術なんだ。
プレゼントをする時は、つい、肩に力が入って、『スマッシュ』攻撃に偏りがちだ。
時には、知らん顔して、ふわりと打ち上げるんだ。
月姫カクテル夜話 短編集
『忘れた思い出』
Written by “Lost-Way"
「ただいま、兄さん」
遠野グループの会議が終わって、秋葉が帰ってきた。
「お帰り、お疲れさま」
「はい、兄さん。お土産です」
「嬉しい、何?」
「紅葉の天麩羅です」
紅葉の紅い葉を天麩羅にしたモノだ。
「子供の頃、有間の家で一度食べて、美味しかった、と、言ってらしたでしょう?」
「そんな話、したっけ?」
話した当の俺が忘れていた。
秋葉は、何げなく俺の言った一言を覚えていてくれた。
好きなモノの話をする。
「じゃあ、買ってきてあげる」
と、その場で約束する。
すぐ、買ってくる。
これが、『スマッシュ』型のプレゼントだ。
それに対し、好きなモノの話が出ても、「買ってきてあげる」とは、わざと言わない。
聞き流した振りをしている。
すぐに買ってこない。
たまたまそこに行った時に、買ってくる。
暫く時間が経っているので、そんな話をした本人は忘れている。
これが、フェイントをかける『ロブ』型のプレゼントだ。
「欲しい、欲しい」と言っているモノをもらうのは、嬉しい。
何げなく話したことを覚えていてくれて、それをもらうのは、もっと嬉しい。
プレゼントで大事なのは、記憶力だ。
何げなく言ったことを、忘れないで覚えていてくれたことが、嬉しいのだ。
今、密かに計画しているモノが、沢山ある。
だから、どうか、そのまま忘れていてほしい。
いや、別に、何でもないんだけどね。
うん。
end………?
or continue………?
This Story has been sponsored by 『MOON TIME』
& 『KAZ23』
THANKS A LOT!!
後書き………のような駄文
プレゼント系のSSです。
貰って嬉しいもの、ビックリさせられるもの。
そう言えばこんな事言ってたっけ? と、不意に思い出せる。
そうやって、愛する君の言葉を思い出し、お店の中で買い物をする。
そんな「いい女」になれれば、と。
秋葉のことですから、志貴の好みとかはすべて覚えていそうな感じですね。
何気ない一言までも。
だからと言って、志貴が覚えているかといえば………微妙………かな?
では。
Lost-Wayでした。