アルクの殺風景だった部屋も、随分モノが増えた。
洗面台のポプリが入っている花の形のカップに、見覚えがあった。
確か、最初はミラノケーキが入っていたはずだ。
俺が、お土産に買ってきたものだ。
月姫カクテル夜話 短編集
『ふたりで詰める愛』
Written by “Lost-Way"
俺がアルクの部屋に持ってきたお菓子の容器を、アルクは、捨てないで取ってある。
某店のカスタードプリンの厚いガラスのカップを洗って取って置いて、植木鉢に使っている。
某店のプリンの益子焼きの陶器のカップも、笊蕎麦を食べるときの蕎麦猪口に使っている。
某店のロイヤルプリンの、マスコットキャラクターのイラストがあるカップも、随分揃っている。
3種類のイラストが季節ごとに変わるので、合計12種類。
見ると、11種類まで揃っている。
プリンが入っていたのに、取っ手が付いているので、コーヒーや紅茶を飲むのにちょうどいいんだ。
キッチンの小物入れに使っている、メロンの形をした蓋の付いた入れ物は、某社のメロンシャーベットのカップだ。
小銭いれ代わりになっているのは、某社のクッキーの缶だし。
某社のゴーフレットの丸いミニ缶。
某店のキャラクターイラスト入りのキャンディーの缶。
猫の絵が描かれた某メーカーの紅茶のミニ缶。
紅茶の缶も、なかなか捨てられないモノが多い。
某メーカーのティーバッグの詰め合わせ缶は、仕切りすら捨てないで、洗ってソーイングセット入れになっている。
よく、これだけのモノを残してあるものだ、と感心する。
「だって、志貴が買ってきてくれたんだもの」
そう言われると、悪い気はしない。
そして、アルクがどういうふうに使い道を考えるか、楽しみでもある。
「こんなに買ってきてもらったのかな、って思うと、幸せな気持ちになるんだもの」
恋愛は、クッキーの缶のようなものだ。
とりあえずは、まず甘さを味わう。
食べてみないと、わからない。
食べ終わってカラッポになってから、本当の恋愛が始まる。
カラッポの缶に中身を詰めていくのが、ふたりの愛だ。
最初は同じものが入っているが、そこから先は、恋人たちによって、様々なものが詰められる。
仕切りの付いたクッキーの缶が、ソーイングセットになることもあれば、アクセサリー入れになることもあれば、文具入れになることもある。
缶に入ったクッキーを味わうこと。
それが、恋。
カラになったクッキーの缶がソーイングセットになること。
それが、愛。
アルクに会うときは、必ず何かおやつを買ってくる。
器の、お洒落なのを。
end………?
or continue………?
This Story has been sponsored by 『MOON TIME』
& 『KAZ23』
THANKS A LOT!!
後書き………のような駄文
プレゼント系のSSです。
女の身ですし、夫とまだ付き合ってた頃は、ちょこちょこしたモノをちょこちょこと買ってきてもらってました(苦笑)
貰って嬉しいもの。
アルクェイドにとって、志貴が買ってくれるものは捨てられないんでしょうね。
ラッピングしてある包装紙一枚にしても。
使うあてが無くっても、とりあえず、置いておく。
それから、どう使おうかと思案する。
そんな彼女の姿が浮かびました。
では。
Lost-Wayでした。