『狐狩り(Fox Hunting)』 ――
かつて、中世において『害獣駆除』を目的に行われた狩猟がスポーツに進化していったものである。
やがて時は流れ、それは都市型のゲームへと進化する。
『かくれんぼ』『かんけり』『鬼ごっこ』等々………
中には、ラジオ無線を使用した形式になったモノも有るのは、知ってのとおり………
―― さて、何故、わざわざこのようなコトを説明するかというと………訳がある。
「 ―― と、言う訳で………」
「……………………………………………………」
「『コレ』が例の調査で判明した現在の状況です。『気高き守護者(Gardian Hearts)』」
「……………………………………………………むう」
「………で? つまり何か? 『防犯訓練に【狐狩り】を取り入れたい』 ―― と」
「然様」
「そういうことか?」
「然様」
「却下」
「マテ」
「一体何を言い出すかと思えば ―― 」
『無窮なる理に断りなく挑む者』は、警備部長である『ガーディアン・ハーツ』の提案に、即時却下をかけた。
「 ―― 何を言い出すかと思えば………この間も『タイム・パトロール』や『幽霊船団』相手に実戦したばかりだろうが?」
それでなくとも、次元移行能力を持つ『侵入者』には事欠かないというのに。
「不足だ」
「警備部だけでやれば良かろうが」
「そうもいかん」
「大体だな………何故『防犯訓練』なぞせねばならん? 『避難訓練』や『防災訓練』ならいざ知らず?」
「『無窮なる理に断りなく挑む者』、確かに、並の輩相手なら我等でも充分太刀打ち出来るし、それ相応の『戦力』もほぼ常時と言っていいほど、『客』として訪れている。
―― しかし、だ。
相手が『次元接続』に精通している相手であったなら?
あるいは、『敵意』なくただ『トリックスター』として引っ掻き回しに来ただけであったなら?
『隠し次元通路』や『封印領域』を選んで走り回られたら、ウチの警備システム何ぞ役に立たん事が多いぞ?
………現に『未知との遭遇』が店に訪れたおり、警備システムはロクに役に立たんかった。
御主ら『陸礎』が事態を認識している、とは言え、我等『現場』からして見れば、常に『結果オーライ』ではすまされん」
「……………………………………………………………………………………………………」
「違うか?」
「……………………………………………………解った」
月姫カクテル夜話《Fox Hunting》
「…………………………………………………………………………………………………で」
「で?」
「一体………何が始まるんです!?」
秋葉はヒステリックに喚いた。
「『狐狩り』と聞いた」
悠然と応えるのは、『朱い月』。
「き………『狐狩り』ですか!?」
引き攣った叫びを上げるのは晶。
「案ずるな………と言いたいところだが………そうもいかんようだな」
「そのとおり!!」
本来ならばお酒と音楽とゆっくりした時間を楽しむべきはずのホールは、異様な雰囲気に包まれていた。
「皆さんには『キツネ』になって店内を所狭しと走り回って頂きます!!」
「………『防犯訓練』って、伺ったんですけれど………?」
「『防犯訓練』に『キツネ狩り』を取り入れました!!」
『ツァリーヌ』の言葉に応えながら、無闇矢鱈と張り切った感のある警備部員。
「なお、制限時間一杯『逃げ切る』か、『最深部』と呼ばれるエリアに『到達』出来た方は、『豪華粗品』をプレゼント!!」
豪華なのやら粗品なのやら。
「………さほど商品に興味を覚え………」
ません、と続けようとしたシオンに被せるように大声を上げる警備部員。
「商品は『志貴君と過ごす、ふたりっきりの温泉旅行一カ月』ッッ!!!」
「「「「「「「「「「「「……………………………………………………………………………………………………」」」」」」」」」」」」
ぎらり、と、目の色が変わる女性陣。
「ふ、ふ、ふ、ふたりっきり、と言うのは………」
「空間閉塞を行うことで、完全に『ふたりだけの世界』を!!! 一カ月間も!!! それはもう、しっかりとしっとりとご堪能下さい!!!」
「「「「「「「「「「「「……………………………………………………………………………………………………」」」」」」」」」」」」
うーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふふーふーふーふーふーふーふーふふふふふふふー………
恐ろしく不気味な笑い声が響き始める。
「あの、その続きを欲しい場合は………?」
「御自身で手配して下さい!!」
「……………………………………………………じゃあ………ウチに泊まりに来て頂こうかしら………」
「そんなことは許しません!!」
「ならば………勝ち残るがよい」
「言われなくても………!」
意気込んで気勢を上げる女性陣に、静かな言葉がかけられた。
「……………………………………………………そのー、言いにくいんスけど………」
「「「「「「「「「「「「なに!!??」」」」」」」」」」」」
「………使用兵器の制限がないってんで、実弾兵器とか殺傷加能武器持ち込んだ奴らが多数いるんスよね………」
「「「「「「「「「「「「はああ!!!???」」」」」」」」」」」」
女性陣一同、吃驚した顔になる。
「でも、警備主任何も言わなかったからなぁ………」
「ペイント弾じゃないんですか!?」
「殺す心算ですか!?」
「いいえ、死にません」
ひょっこりと姿を現す『死の如き静寂(トッテンシュティール)』。
「『絶対に死なない結界』が強化されましたから………死にたくても死ねなくなります。………まあ、時間が終われば回収しに行きますから………」
「じゃあ………それまでは………?」
「一定時間が経てば『死亡状態』がリセットされて動けるようになります。………けれども、それまでに『捕縛』されて『牢屋(ジェイル)』に放り込まれた場合は、その場で『失格(リタイヤ)』扱いとなりますからその御積もりで」
「「「「「「「「「「「「……………………………………………………」」」」」」」」」」」」
じんわりと冷や汗を流す一同。
「その………質問しても良いですか?」
「はい、『フューチャー・ヴィジョン』さん」
づびし! と、瀬尾を指さす警備部員。
「……………………………………………………その………『個人の戦力差』が激しすぎると思うんですけれど………?」
「御心配なく!」
恐る恐る、と言った質問に対して、警備部員はあっさりと答えた。
「諦めて下さい!」
「御心配なくじゃないですよお!?」
「頑張りましょう!」
「じゃなくって!?」
「………瀬尾?」
「ははははいい!?」
ぽん、と、肩を叩きながら秋葉はあっさりと言い放つ。
「すぐにリタイアしちゃえば、どうって事ないわ?」
「そんなのヤですよー!?」
ひーん、と、涙混じりに抗議するも、秋葉の仮想【敵】は別にあるようで。
「「「「「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」」」」」
「「「「「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく」」」」」
怖い笑い声が低く響く。
「なお!」
警備員が声高に叫ぶ。
「味方がいれば、どんどん使って下さい! それに関しては、制限を付けません!」
「ふ」
「うふふ」
「………なるほど」
「味方を、大丈夫です」
「あはー」
心当たりがあるのか、余裕の笑みを見せる者も。
「……………………………………………………えーと、正式なルールを説明します。
基本的にペイント弾を打付(ぶつ)けられたらその段階で『死亡』扱いとなります。
『キツネ』役の皆様は、ペイント弾が乾くまで、死体となって転がり、その場を動かないで下さい。
また、『狩人(ハンター)』サイドの方は、ペイントを塗られた段階で『死亡』となり、スタート地点に引き戻されます。
以上の効果は、御自身が気付かれなくとも、発生すれば自動的に『そう』なるようになってますので御心配なく」
「「「「「「「「「「「「……………………………………………………」」」」」」」」」」」」
「また、『死亡』扱いになっているときに『牢屋(ジェイル)』に放り込まれた場合は、『脱落(リタイア)』となります。
一度でも『死亡扱い』になった場合は制限時間一杯逃げ延びても『一度死んだ』と扱われますので、一度でも『死亡扱い』になった場合は、勝利条件が『最深部への到達』に変わります。
『最深部』にまで到達すれば『死亡歴』はリセットされますので頑張って下さい。
………以上です」
「「「「「「「「「「「「……………………………………………………」」」」」」」」」」」」
「御質問がなければ、このまま開始致します」
店内全域に放送が流れていた。
「ゲーム開始(スタート)!! ゲーム開始(スタート)!! 『キツネたち』は逃走を開始した!!
繰り返す、ゲーム開始(スタート)!! ゲーム開始(スタート)!! 『キツネたち』は逃走を開始した!!」
サイレンが鳴り響く中、12人の乙女たちは思い思いに走り始めた。
「………それにしてもまあ………」
そんな騒ぎの中、ある意味平然とした面持ちでグラスを空けながら、
「………いつの間にやらスゴイコトになっちゃって………」
と、その女性は呟いた。
「『こんなことならもっと早く食べてしまえばよかった』と?」
軽い笑みとともに口にしながら、オーナーはそのテーブルに歩み寄った。
「お久しぶりですね。貴女も」
「そうね」
足元に大きなトランクをおいた、赤い髪を長く伸ばしたその女性は、苦笑混じりに振り返った。
「………当人は?」
「居ないからこそ、こんなことをやっているんですよ。………とは言え、『混沌と矛盾の領主』のおふざけの所為で『分身』が加わっていますけれどね」
ことり、と、新しいカクテルを置きながら、オーナーは困ったように実況中継のモニターを眺める。
「これは?」
「この騒ぎそのもの………でしょうか?」
★キツネ狩り『Fox Hunting』★
バカルディ・ラム………1グラス(60ml)
ホワイト・キュラソー………2dashes
ライム・ジュース………1/2個分
シェークして、カクテル・グラスに注ぐ。
「……………………………………………………相変わらずね、貴方も」
「それが『観察者』の『観察者』たる宿業でしょう」
「何とかやってるから、それはそれでいいか、とか思うけれど………」
「貴女とて、所詮はただの女。ただそれだけ、と、認めてしまえば選択の幅は広がりましょう」
「……………………………………………………………………………………………………」
苦笑を浮かべながらモニターに目をやる。
そこには、実にこの『店内イベント』ならではの光景が広がっていた。
「………って、わー!?」
「 ―― 『難攻不落(インヴァネラヴル)』ッッ!!」
ヒュカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカン ――
アルクェイドに迫っていたペイント弾 ―― 一部実弾込み ―― が『金剛不壊之盾(ダイアモンド・ウォール・シールド)』に阻まれる。
「……………………………………………………エル!?」
「行きたまえ、アルクェイド嬢。此処は私が『壁』となろう」
「え………でも………」
「行きたまえ!」
「う………うん、わかった。……………………………………………………死なないでよ!?」
「安心したまえ」
ずんっ、と、通路に仁王立ちして後続の追っ手を遮る壁となる。
店内有数の『カブト』のスートを持つ益荒男(ますらお)。
一度(ひとたび)『壁』として立ち塞がれば、並大抵のことでは動かせない。
「……………………………………………………」
左手で構えた『金剛不壊之盾』。
それは、彼の存在を、意志そのものを示しているように、一点の曇りもなかった。
「………なんなんですかここはー!?」
「まあ………久しぶりの『店内イベント』だし、『実力行使アリアリ』だからねー」
四本の手に持ったエアガンやらシールドやらでシエルの援護をしながら併走する『ヨランダ』。
四本腕なのでカバー範囲が広い。
「実弾使うなんてアリですか!?」
「アリっぽい。………っていうか、何発か混じってるよ」
苦笑混じりに応える。
「ウチの主人が居てくれればいいんだけどね。………今は何の因果か女子大生のおデコにめり込んで依り代にしちゃってるから………」
彼女のお兄さんは行方不明だし………、と、続ける。
「せめてアタシの息子でもいりゃ、ちっとはマシに………って、いるし!?」
道端に転がってたキノコの干物のようなものを取り上げると、安全圏を見付けて煮込み始めた。
「……………………………………………………なんですか『それ』は?」
「……………………………………………………アタシの息子」
「はああ!?」
グツグツと煮込まれて行くキノコ。
と ――
ぱおおおおおおお――――――――――――――――――――――――――んっっ!!
ずばしゃー、と、ナベから飛び出す巨大な四本腕の象頭の『魔神』。
「……………………………………………………なるほどー」
「こいつに騎って行けば多少は早いだろ」
「おおー」
ぱおおおおおおお――――――――――――――――――――――――――んっっ!!
「あはー」
「琥珀ちゃん、こっちこっち」
「………便利ですねー?」
「あはははは」
『チェリー』(甲冑モード)の肩に乗っかかってホヴァ移動しながら、のんきな声を上げる二人。
「『チェリー』、こっちだ」
先行して【敵】を排除する『セヴンスヘヴン』に続きながら、琥珀はこの二人の強さを改めて実感していた。
「………その、『最深部』って、どんなところなんですか?」
「ああ、『最深部(セントラル・コア)』か。この“店”を作ったオーナーたち6人の事務室とか『封印領域』とかがある区画だ。俺も必要以上に近付いたことがないけど………」
ぱ、と、手を挙げて後続を止める。
「……………………………………………………だーも」
「………うっわー」
角を曲がった少し先、ちょっとしたホールスペースに。
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ………
「……………………………………………………どうしましょう?」
「突破する」
きっぱりと言い切った『セヴンスヘヴン』は、ちゃっ、と、ラップの芯程度の筒を取り出すと、ホールに向けて放り投げた。
「忌まわしき前兆(Bad Omen)!!」
瞬間、巨大な髑髏状の『ボム』が炸裂した。
はっ、はっ、はっ、はっ………
メイド服のスカートを翻しながら、翡翠は走っていた。
と ――
「いたぞ!」「こっちだ!」
「………見つかってしまいました………」
ちゅんちゅんとあちこちに跳びはねる跳弾や周囲で弾けるペイント弾。
後ろからだけでなく、前の通路からも姿を現す『狩人(ハンター)』たち。
と ――
「メイドの祈りに応えて参上!!
人妻っ! 戦士っっ!! ポニテリアンッッッ!!!」
とおっ! と言う掛け声も勇ましく、高いところから飛び降りると、ばったばったと追跡者や妨害者を薙ぎ倒していく『覆面ぽにてメイド』。
「……………………………………………………『バンシー』様?」
「違うの! 私は『人妻戦士』!!
『人妻戦士ポニテリアン』ッッ!!!」
づびしぃっ!! と、無駄にポーズを付けながらキメるぽにてのメイドさん。
「………いえ、しかし………」
「いたぞ!」「こっちだ!」
前方から姿を現す『狩人(ハンター)』たち。
「くらえ! 『汚れんジャー・タックル』ぅぅぅぅぅぅ!!」
「……………………………………………………『人妻戦士ポニテリアン』では?」
妨害する参加者たちをショルダータックルで弾き飛ばして突破口を切り開いて行く、自称『人妻戦士ポニテリアン』。
「メイドさんの御奉仕は世界一ィィィィィィィィィィィ!!!」
めいっどりあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっ!!
「……………………………………………………この方も、良く解らない方です」
「翡翠ちゃん、こっち」
「あ………はい」
翡翠は『バンシー』………もとい『人妻戦士ポニテリアン』の後に続いて歩きだした。
「………くっ!?」
ざざざっ、と、瞬間的に周囲に展開した追跡者たちを『檻髪』でなぎ払おうと意識を集中し ――
「……………………………………………………!?」
そのまま、くらり、ぱたん、と全員が意識を失って倒れたことに、アッケに取られる。
「……………………………………………………なんなの………?」
「大丈夫かい?」
後ろで声がした。
「!?」
ばっ、と、振り返ると、
「いきなり攻撃は無しにしてくれよ?」
「………『レッド・アイ』さん!?」
「ああ」
攻撃しませんよ、と言わんばかりに両手を挙げて軽く苦笑を浮かべる。
「……………………………………………………これは………貴方が?」
「まあね」
周囲でピクリとも動かない参加者を見ながら、
「こういうことなら、まあ、昔とった杵柄とでも言うべきかな?」
「……………………………………………………ありがとうございます」
「うん。素直が一番だよ、彼のような朴念仁を相手にするにはね」
「……………………………………………………もう」
顔を赤くした秋葉をそのままひょい、と、『お姫様抱っこ』すると、
「さて………ちょっと『飛ぶ』よ?」
「え!?」
きゅきゅきゅきゅっ、と、足首をねじり身体を捻る奇妙な歩方を踏むと ――
そこから姿を消した。
だだんだんだだん、だだんだんだだん、だだんだんだだん、だだんだんだだん………
『ターミネーター』のテーマが流れる中、まんま『ターミネーター』な漢が、行く手を遮る参加者を、手にした重機関銃(ヘヴィ・マシンガン)で打ち倒し薙ぎ飛ばしながら、悠然と歩みを進めていた。
「………すみません………」
「気にするな」
岩がごりごりと軋むような声が発せられる。
さつきが恐縮しながら頭を下げる。
「部下の面倒を見るのも、上司の努めだからな」
そう。
黄泉帰りを遂げ、冥府の使者となったさつきの上司 ―― 『咆哮の制裁者』。
それが、彼だった。
ちなみに、同業者である『セヴンスヘヴン』はさつきの直接の『先輩』だったりするのは余談だが。
「えと………いいんでしょうか?」
「誰も殺していない」
確かに殺しちゃいないが、両手両足を撃ち抜いてそのまま転がして置くのはどうか。
「……………………………………………………くっそぅ」
「HASTA LA VISTA, BABY?」
「……………………………………………………………………………………………………」
さつきは冷や汗をかきながら、後ろについていった。
「……………………………………………………ずるっこかも知れませんね」
「気にしない気にしない」
ごうんごうんごうんごうん………
「ふはははははははははははははははははははははははははは!!」
上甲板(アッパーデッキ)に仁王立ちし、高笑いを上げる艦長のもと、一軸推進式特殊潜行艇『いちぢく丸』は“店”の中を縦横無尽に張り巡らされた用水路を驀進していた。
「………ぃい〜〜〜〜〜ちぢくかんちょお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜お!!!」
掛け声もノリノリだ。
「いたぞ!」「あそこだ!」
「………むう!?」
かぽん、と、ハッチの中に転がり込むと、
「主砲発射用意!」
「主砲発射用意!」
「出力10%、効果界半径30mに設定!」
「出力10%、効果界半径30mに設定!」
「射角+20%、目標群全捕捉!」
「射角+20%、目標群全捕捉!」
「主砲、発射準備ヨシ!」
「よーし」
「ちょちょちょ! 艦長さん、殺すのは駄目ですよ!?」
「大丈夫じゃ。死にはせぬ!」
にやり。
「超時空ひまし弾、発射――――――――――――――――!!!!」
カカアッ!!
キャプテンお六の誇る『戦艦いちぢく丸』の主砲、艦首超時空ひまし弾 ――
その特殊な時空振動波は効果界内に存在するすべての対象の脳神経に作用し、強力な体内下痢物質を分泌させるのである!!
―― ぐるる、ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるっっ!!
「きゃーっ!?」
「トイレ! トイレはどこだ!?」
「故障中!?」
「いやーーっっ!?」
あまりのとんでもなさに、『ツァリーヌ』はびっくりだ。
「ほっほっほ、おまるじゃおまる、おまるですっきりじゃ」
バラバラとおまるをばらまきながら移動する。
「……………………………………………………今更ながら………大騒ぎが大好きな方ですねぇ………」
『ツァリーヌ』の呟きは、機関音にかき消された。
「アキラくん、伏せて!」
「はいっ!」
かつて聞いたような声にそのまま身を投げ出して頭を抱える。
頭上で鳴り響く連続した銃声。
ひとしきり鳴り響くと、かしょん、と、鳴り止む。
「………『シルヴァー・ベル』さん………?」
「まったく………貴女と一緒じゃ、騒ぎに巻き込まれてばっかりね?」
「……………………………………………………すみません」
「いいのよ。楽しいから」
「『ベル』、こっちだ」
いつも通り、『シルヴァー・ブリッド』も一緒らしい。
「……………………………………………………大丈夫でしょうか?」
「普段集まらないような連中も、ここぞとばかりに集まってるからね。ま、なんとかしましょう」
響き渡る銃声と着弾音、弾けるペイント弾に、ゲームのように消えて行く参加者たち。
「……………………………………………………思い出すな」
「ああ………『AVALON』で戦いに明け暮れた日々ね」
ふたり、晶をガードしながら話す。
「………『AVALON』………?」
「この“店”の“奥”から続く、『永遠の戦場』さ」
ただそれだけ応える。
と ――
「……………………………………………………よう、『戦友(カバル)』」
「……………………………………………………よう、『戦友(カバル)』」
「ははっ、30口径(サーティ・キャリバ)クラブの再結成か?」
「よう、『シルヴァー・ブリッド』」
「よう、『SVD(ドラグノフ)』」
ぞろぞろと通路から集まり、併走してくる『兵隊さん』。
「………あ、あの………?」
「私たちの仲間よ。心配しないで」
「……………………………………………………はあ」
「ま、全部『必要経費』で『警備部』に申請してあるし、許可も下りてるからよ?」
「そうでなきゃ、ここまで無茶な装備はしねーよ?」
「だな」
そして歌い出す。
「我等が敬愛せし ―― 」
「 ―― ハートマン軍曹に………」
「「「「敬礼!!」」」」
そして歌い出す、軍曹ソング。
「♪ふぁーみこんうぉーずがでーるぞー」
「♪こいつはどえらいしーみゅれーしょーん」
「♪のめりこめ!」
「♪のめりこめ!」
「♪かーちゃんたちにはなーいしょだぞー」
「……………………………………………………なんかちがうとおもいますそれ」
「………『朱い月』………」
「……………………………………………………ゼルレッチ………」
店内の“奥”、頭上遥か上に太いパイプ群が走る『裏側』の整備エリア。
下が見えないほどの深い吹き抜けを走る吊り橋状の『通路(キャット・ウォーク)』の上で、『朱い月』はゼルレッチと相対していた。
「……………………………………………………妾を倒さんと現れたか………」
「無論だ。如何なる理由であれ、認められた競技以外の闘争を禁じられている以上………貴様と戦えるなどまたとない機会だ」
「……………………………………………………………………………………………………」
静かに佇む二人。
ゼルレッチはいつもの黒いコート姿。
相対する『朱い月』は、何をトチ狂ったか黒衣の忍者装束。
忍んでない『くノ一』ちっくでぢつにせくしー。
「……………………………………………………我が復讐を阻みに来たか、ゼルレッチ」
「ほう………」
ゼルレッチの目が剣呑に引き絞られる。
「………復讐を続けるか………?」
「当然じゃ」
じりじりと通路を下がり、手摺りのない部分ににじり寄る。
「我が復讐は………着々と果たされつつある」
「……………………………………………………なに?」
ぎしり、と、軋む音を立てて歯を食いしばるゼルレッチ。
「よく聞け。我が復讐はな………」
「……………………………………………………」
ふふん、と、ゼルレッチを嘲るように、口元が笑みの形をとると、
「イイオンナになって、幸せになって、貴様を羨ましがらせることぢゃっ!!」
「……………………………………………………………………………………………………」
どどおん! と、書き文字効果音が飛び出すような勢いで踏ん反り返る『朱い月』に対して、目が点になり、顎が落ちる音を1キロメートル四方に響かせるゼルレッチ。
「恐れ入ったか!?」
「……………………………………………………」
立ち眩みを起こしたかのように手摺りに手を付いて額を押さえるゼルレッチに対して、からからと笑い声を上げる『朱い月』。
「故に、この場でそなたに掴まる訳にも、ましてや倒される訳にもいかん」
「……………………………………………………………………………………………………」
ざっ、と、お互いに構える。
「よって、此処は………こうじゃっ!」
ばっ、と、腕を突き出しながら虚空に身を踊らせる『朱い月』。
「……………………………………………………なんと!?」
ゼルレッチが覗き込むと、そこには ――
手首に手枷と、そこから伸びる鎖を『空想具現化』で発生させた『朱い月』が
――
「………あ〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ターザンよろしく叫びながら、通路にパイプに鎖を巻き付けてターザンのように振り子移動して消えて行く後ろ姿があった。
「………あ〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………」
エコーが響く中、ゼルレッチは何時迄も呆然と立ち尽くしていた。
「……………………………………………………何があった………『朱い月』………」
その呟きに応えられる者は居なかった。
居るはずがなかった。
「………予測不能過ぎる事態です」
「まったくだ」
「……………………………………………………どうして貴方が居るのか、それについては後にします」
「うん」
「知って居る情報があれば教えて下さい」
「……………………………………………………うーん。実は俺も良く知らないんだ」
「はぁ………」
通路を走りながら、シオンは『ブラッド・ジャケット』と彼の率いる『吸血鬼殲滅部隊(ブラッド・ジャケット)』にガードされながら、案内されていた。
「………彼らは?」
「俺の部下。………今はそれでいいだろ?」
「いろいろ質問したいことは多いですが………」
「そういう場合は『突っ込み所満載だなおい!?』………って言うのが正解なんだ」
「………受け答えに正解も不正解もないと思います」
「志貴なら絶対にそう言うし、そういうやり取りが出来た方がウケがいいと思うぜ?」
「……………………………………………………余計なお世話というものです」
沈黙と静寂を携えてただひたすら走る一団。
シオンは、冷静に考えようとして、その都度暴走し始める分割思考を何とか制御しようとやっきになっていた。
「……………………………………………………何故!?」
誰がそれに応えられるというのだ!?
とてとて、とてとて。
レンは、店内に張り巡らされた『ネコ道』を静かに歩いていた。
ところどころに扉があるものの、左手を当てて『前足(フリッパー)コード』を通す。
しずかなの。
ピクピクと時折耳を動かし、物音の伝わりを確かめる。
取り立てて、今のところ出会うものや不審な気配などなかった。
志貴と一緒に居られるの♪
尻尾振り振り、小猫の姿で、人では到底通れない道幅の『ネコ道』を悠然と進む。
わんわんわん、わんわんわんわん!
ばうっ、ばうばうばうっ!
!?
後ろを振り返ると ――
数匹の『走狗(イヌ)』が走って来ていた。
!
慌てて走りだす。
ハシゴを駆け登り、塀を乗り越え、パイプの上を渡り………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ………
はふう、と、息を吐く。
「レンちゃん、こっち」
!?
吃驚して跳ね起きると、
「大丈夫」
ウェイトレスの一団がいた。
そのうちの一人が、ひょい、と抱き上げると、
「落ち着くまで、休んでていいよ?」
と、ぬるめの紅茶と沢山のケーキが並べられたテーブルに案内する。
いいの?
「いいのいいの」
「バリケード建てましたー」
「武器弾薬ともに完備でーす」
「よーし。レンちゃんを護るよー!?」
「「「「「「「「「「おおー!!」」」」」」」」」」
えいえいおー、と、気勢を上げる。
そんな中、レンは無心にケーキを頬張っていた。
「………ネロ・カオス様」
「此処では『ジャングル・ファンタジー』と呼んで貰えると有り難い」
「はい。では、『ジャングル・ファンタジー』様」
店に居たころのウェイトレス姿 ―― 制服のメイド服 ―― のまま走っていた『ドリーム』こと『恵』は、通路の前に姿を現したネロ・カオスに一礼した。
「うむ。………手伝おう。貴様は、ある意味、私の娘のようなものだから」
「お手数掛けます」
「気にするな。これもまた一興だ」
にゅるり、と、コートの内側から『魔狼(ダイア・ウルフ)』を呼び出すと跨がり、『ドリーム』に手を差し伸べる。
素直に手を伸ばして『魔狼(ダイア・ウルフ)』の背に跨がり、ネロ・カオスに背中を預けると………
「………行け」
『魔狼(ダイア・ウルフ)』は疾風を携えて走り始めた。
「道案内は貴様の方が詳しかろう」
「はい。………二つ目の角を右に」
「うむ」
軽快な足取りで疾走る。
「……………………………………………………む………?」
「ここは私が」
前方の通路に陣取ったバリケード目がけて、スカートの下から取り出したランチャーを向け………
ずっどおおおおおおんっっ!!
もくもくした着弾煙を駆け抜けて走り去る。
「……………………………………………………ふむ。存外過激だな」
「志貴様の『裏の人格』をいただいておりますので」
「成程な」
ある意味、凶悪なタッグだった。
Mama & Papa were Laing in bed
Up in the morning to the rising sun
I love working for Uncle Sam
I don't know, but I've been told
I don't want no teen-age queen
「Semper fi!」
「女の子の前で歌うなーっっ!!」
暴れてヒスを起こす『シルヴァー・ベル』。
真っ赤な顔の晶。
どうやら英語の成績はいいようだ。
「お帰りなさい、兄上………」
にこやかな笑顔で『レッド・アイ』を向かえた『グリーン・アイ』は、そのまま顔を引き攣らせ、わなわなと震え始めた。
「……………………………………………………あ」
「………『あ』?」
「……………………………………………………兄上の浮気者ーーーっっっ!!!!!」
だらぱぱぱぱぱぱぱぱぱ………と、手に持ったエモノを機銃掃射。
「………なにをいきなり!?」
「秋葉さんの裏切り者ーーーーーーっっっっ!!!!!!!!」
「どうして!?」
はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、はーっ………、と、荒い息を吐きながら、ゆらり、と、幽鬼の如き壮絶な笑みを浮かべ、
「……………………………………………………私でも………私でもやって貰ったことないのにーーーっっっ!!!!!」
お姫様抱っこーーーーーっっ!!!!!
と、絶叫しながら、目を翠に爛々と輝かせて襲いかかる。
「ひょええええええええええええええええええええええええええええええ!!??」
「降ろして下さい! そうでないといつまでたっても!」
「降ろしたら君が殺されるだろう!?」
「お姫様抱っこーーーーーっっ!!!!!」
とんだ騒ぎもあったものだ。
「………禍レ」
「………っと!?」
「………凶レ」
「………はわっ!?」
「………魔狩レ」
「………ちょいよさ!?」
ぱっつんぱっつんのせっくしーだいなまいっ、な肢体をちょっときつめの女子校の制服に押し込めた、流れるような黒髪の美少女が視線で『念力ゃっ!』とばかりにモノをへし曲げていた。
「………ふ………」
アルクェイドが、冷や汗を流しながら問いかける。
「ふじのんは、何で曲げるのん!?」
「……………………………………………………そう言われてみれば………何故でしょうね?」
「いや……………………………………………………わたしが聞いているんだけど?」
「……………………………………………………?」
「そんなに不思議そうな顔で覗き込まれても」
「……………………………………………………何か商品でも出るんでしょうか?」
俺に聞かれてもなー。
「………へえ? 線が見えない………」
「何者ですか、貴女。………その『眼』は………『直死の魔眼』………?」
「よく知ってるな?」
着流しに革ジャンという不思議ないで立ちの女性を前に、シエルは背中を冷や汗で濡らしていた。
不完全な志貴の『眼』とは違って、この『眼』は『本物』だ。
「………まあいい。お前………この『競技』のルールにのっとって………『斬る』」
「くっ!?」
がきぃんっ! と、黒鍵と短刀が打ち合わされるかん高い音がした。
「………カット」
「!?」
ばっ、と、振り返る。
そこには………
「カット。カット、カット、カット、カット、カットカットカットカットカットカットカットカット」
「キキキキキ、キキキ、キ、キキキキキキキキキー」
「血血血血血血血血血血血血血血血血血血ー」
「……………………………………………………なんなんですかこれは!?」
「………ちびキアくん………」
数十体の、身長25センチ程度のデフォルメ人形のような『ちびキアくん』が、わらわらと周囲で踊る。
そして、全員が一斉にシオンを見詰め、言った。
しおんたんはあはあー!!
「……………………………………………………………………………………………………ふぅっ」
「………おーい!?」
耐えられなかった模様。
「……………………………………………………………………………………………………」
「……………………………………………………………………………………………………」
薔薇の花びらが舞い散る中、その男は静かに佇んでいた。
「……………………………………………………ふ」
轟く銃声。
ズギュ――――――――ン!!
ズギュンズギュンズギュ――――――――ン!?
「済まないが………貴様は0.03秒、遅い」
「残念ながらっ! 『汚れんジャー』はその程度で死なないっ!」
フライパンで防いだらしい。
「……………………………………………………『人妻戦士ポニテリアン』では?」
しかし………何故銃声が疑問形で?
「貴方を、負け犬です」
ぐーるぐーるぐーるぐーる………
その後には、
「………オレは………負け犬だぁ………」
普段と変わらない『伝説の暗殺者』がいた。
合掌。
「……………………………………………………エーエーエー、テステス、テステステス」
いきなり、館内一斉に放送が流れた。
「こちらは被服部門の『ヴェイル』。こちらは被服部門の『ヴェイル』。只今より『スプリンクラー』の作動テストを行います。繰り返します。こちらは被服部門の『ヴェイル』。こちらは被服部門の『ヴェイル』。只今より『スプリンクラー』の作動テストを行います。
……………………………………………………覚悟しろ」
「……………………………………………………『覚悟しろ』!?」
次の瞬間 ――
すべてのスプリンクラーから ――
―― ペイント弾と同じペイント薬液が噴出した。
「「「「「「「「「「「「そんなのアリかー!!!!????」」」」」」」」」」」」
「………成程。確かに、空間接続を繰り返しているので正確な『接続地図』がないのは盲点でしたね」
「全てを見通せる貴方方とと違いますから」
「……………………………………………………教訓にしておこう」
警備本部の会議室にて、『陸礎』と『警備部』の面々。
「『いつでも』『好きなところ』に行ける貴方方とは違って、我々は地道に歩くことが全てですから」
「……………………………………………………耳に痛いなー」
苦笑を浮かべる『混沌と矛盾の領主』。
「で、正確なマップは出来そう?」
「ハードコピーを創るのは無理ですね。電話帳サイズにしても十数冊レベルになりますから………アクセス型のデータベースとして設置することになります」
「『アクセス・ファイバー』での?」
「そうなります。要所要所には『端末』を設置して対応することになるかと」
「それで、今日の勝利者は?」
「『ヴェイル』です。………結局、みんなやられちゃったみたいで」
「あらあら」
「今頃張り切ってるんじゃないですか?」
「……………………………………………………御愁傷様………」
一同は、『ヴェイル』のオモチャになっているであろう女性たちに同情した。
「……………………………………………………『ヴェイル』さん、それは、それだけは」
秋葉が顔を真っ青にして脅える。
「………兄さんの前以外で着たくない………
「あらあら、『ランドスケープ=フェア』では大張り切りでしたでしょう?」
「でも、写真に撮られるなんて………そんな………そんなこと………」
「大丈夫。志貴くん以外に渡さないから」
「そんな問題じゃありません!」
「妹ー、どんな服かは知らないけど、しょうがないじゃない」
「殆ど裸に近いような格好なら、もう散々してるでしょう?」
「秋葉、今更怖じ気付くなど、見苦しいですよ」
「秋葉様、観念しましょうよ」
「あはー、秋葉さま、今になって逃げるなんてダメですよー?」
知らぬが故に勝手な言い草だ。
実際、セクシー水着やランジェリーの類いもかなりの枚数、写真を撮られているのだから。
だが、最後の一枚の名前の意味を知っている秋葉は、気が気でなかった。
「秋葉、妾もその意味を知っておる。知っておるが故に………志貴になら見せたいとも思うのじゃ」
「直接見せるのならいいんです。『フェア』の時だって、そうでした!」
叫ぶ。
「でも、写真に撮られるんですよ!?」
「構うものか。妾は『ヴェイル』を信ずる故に」
「……………………………………………………」
「それに、いい記念になるかもしれませんね。みんなでの集合写真も撮って貰いましょうか?」
落ち着いた口調で返す『ツァリーヌ』。
「平気なんですか!?」
「まわりは女性スタッフだけですし?」
「……………………………………………………」
どんよりと顔を曇らせる秋葉。
「シオン………」
「なんですか? 秋葉?」
「覚悟は………出来てるでしょうね?」
「何の覚悟ですか?」
シオンたちが、秋葉の言った『覚悟』の意味を知ったときは、既に遅かったようで。
経験者である秋葉、かつてはこの店のスタッフであった『ドリーム』こと『恵』、この店の“奥”に住んでいるために知っている『朱い月』と『ツァリーヌ』を除く面々は、秋葉の言った『覚悟』の意味を思い知らされた。
「写真になんか撮らないでー!?」
「だから言ったでしょうが!?」
「こんなの聞いてないー!?」
「はっはっは、よいではないかよいではないか」
「若さの記録だと思えば」
「思えません!!」
「『ヴェイル』、もう一枚撮って?」
「はいはい」
「悩殺ポーズ?」
『ランジェリー・アート』 ―― ボディー・ペインティング・ランジェリー
―― たる“虹”。
『ホログラム・ドレス』 ―― 実体を持たない、虚像のドレス
―― たる“蝶”。
それらを身に纏った12人の美女と美少女。
ふっ切れたか開き直ったかで惜し気もなくポーズを取る者も有れば、羞恥心が勝って
―― 当然だ、基本的に全裸なのだから ―― 身を竦める者も。
「もうヤケよー!?」
「やってられるかこんちくしょー!?」
騒乱のうちに、騒ぎは終始した。
「?」
後日、志貴のもとに届けられたやたらと分厚い『レディースファッションカタログ』は、届けられるなり秋葉に取り上げられ、琥珀さんの管理する地下の奥深くに封印されたと言う。
志貴が手元に置くことを許されたのは、大きなパネル写真が13枚。
写っているのは、ウェディングドレスに身を包んで恥ずかしげに微笑む乙女たちと、その集合写真であったと言う。
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& 『KAZ23』
THANKS A LOT!!
後書き………のような駄文。
お待たせ致しました、mm様。
3万ヒット記念………もうすぐ7万ヒットですけれど(汗)………(11月14日現在)
「志貴が居ないときに“店”に、志貴を慕うヒロインたちが全員集まって」というリクエスト。
ちゃんと果たせているでしょうか?
ドタバタになったのは………勘弁して下さい(汗)
18禁書き始めてから、そっちのネタばっかり浮かんで………
表の方もなんとかしないとなぁ。
お粗末さまでした。
mm様に愛を込めて。
今後とも宜しく。
では。
LOST-WAYでした。