捜査本部で缶蹴りをやることになった。

鬼はこの僕、夜神月。



「いーち、にー、さーん、しー、ごー」



100数える間、僕の脳は今日も冴える。
缶を狙うはこのメンバー

ベテラン刑事、夜神総一郎。洞察力、実戦経験から考えれば手ごわいが
肉親なので行動パターンは熟知している。それにこの人キャリアだから
張り込みとかしたことないし、なによりもう足腰が弱いから僕の敵ではない。

自称僕の彼女、ミサ。細身で小柄なので潜伏できる場所も多いだろう。
狡猾なところがあるし意外と頭もいい。一応の警戒は必要だ。

実直刑事、模木さん。行動力、機動力は高いが巨漢ゆえにスピードはない。
僕が缶から5メートル離れていて彼が一番近いソファーの影から飛び出してきたとしても
僕はすばやく戻って缶を踏み、「模木さん見っけ、123456789、10!」と言うことが可能だ。
さすが僕。ナイス僕。模木さん残念。

新米刑事、松田さんは・・・・・・・・・・うん。まあ、なんというか、松田さんだ。

問題はLだ!僅差で僕のほうが絶対頭がいいが僕が正義の味方なのに比べて
奴は悪の帝王。目的のためなら手段をえらばない彼はどんな卑劣な手を使ってくるか、
実直で誠実な僕には想像するだに少し難しい。少しだ。さらに体形はアンガールズなのに
その俊敏さはナインティーナインの岡村さん並。

・・・いや、待てよ。

ここは逆に缶蹴りなど放棄して、飛び出してきた奴を勢いに乗じてぶっ飛ばすのはどうだろう。
日ごろの鬱憤をはらすチャンス。
ナイスアイディア!
さすが僕!
それいけ僕!
勝利は僕の手の中に!

「きゅーじゅはち、きゅーじゅきゅ」

いやいや待てよ。

勝負を放棄しては本当の勝利は手に入らない。
Lを殴ってさらに缶蹴りにも勝利するほうがいいにきまっている。
二兎追うものは一兎も得ずというが、僕に限ってはそんなことはない。
なぜなら


僕だからだ!




「ひゃく!」


僕はパッと目を見開いて部屋を見渡した。

「僕はここだ、さあどこからでもかかって来いL!」

「夜神さまお足元にゴミが」

「あっ、どうもありがとうございます」



目の前に居た竜崎の執事さんが足元の空き缶を片付けてくれた。
さあ、気を取り直して
どこからでもこの缶を狙って来っ










この・・・缶?









「え、ちょ、いまの無し!絶対無しだろ!!」