13.女


「もしもし?ああ、粧裕?」
大学でのランチタイム、同席していた夜神くんのケータイが鳴りました。
どうやら相手は妹さんのようです。

「駅前の本屋で?めぐみが?」

めぐみ、とはどんな関係の女性でしょうか。
そのめぐみさんという女性が駅前の本屋で働いていたのでしょうか。
「わかった、じゃあ帰りがけに寄ってみるよ」
帰りがけにめぐみさんのところに寄ってみる!?
ということは、やはり夜神くんの恋人なのでしょうか。
しかしこれまでの調査では夜神くんに関係する人物で、めぐみという女性は
いなかったと記憶しています。
とすれば、新しい恋人。
それとなく訊いてみましょう。
何かしら新しい情報が得られるかもしれません


「恋人ですか?」
「ちがうよ。今の電話は妹」
「いえ、その、めぐみさんという方が」
「・・・」

おや、これは聞いてはいけないことだったのでしょうか。
夜神くんが怪訝な顔をしています。

浅はかでした。

確かにいまの質問は突然私が尋ねるにはおかしなものでしたし、
答える夜神くんにとってもプライベートな事柄であって、
加えて、別に私個人が夜神くんの交際相手に興味があるわけでも、決して無く



「め組の大吾の愛蔵版第三巻が出てたらしいから、帰りに本屋に寄って帰ろうと思ったんだけど?」


夜神くんはにんまりと含みをもって笑いました。
私は無表情のまま

こんちきしょうぜってー捕まえてあんあん言わせてやる、と思いました。







ライトくんだってマンガを読むのです