15.パンチラ



「お兄ちゃんお待たせー、お風呂いいよ」

「ああ」


粧裕は脱衣所から出てくるなり、下着姿でクーラーの前に座った。
夕飯の片づけをしていた母さんが、それを見てたしなめる。

「粧裕、もう中3なんだから下着で歩き回るんじゃないの」
「だって暑いんだモーン」

僕はソファーから立ち上がり、テレビのリモコンを粧裕に渡して
脱衣所に向かった。
『それ以上見てたら、これからはトマトがおやつだ』
粧裕の方を振り返っていたリュークを小声で脅すと、リュークはぱっと前を向いた。
粧裕も中3か。
彼氏とかできてもおかしくない歳だけど、どうやらまだ悪い虫はついていないようだ。





湯船につかったころ、リュークが言った。

『なーライト、おまえの妹なんでイチゴのパンツなんだ?』
「そんなにプチトマトが食べたいか、リューク」
『だって、リンゴのパンツのほうが絶対いいぞ?』
「プチトマト決定」
『ご、ごめんライト』


風呂からあがり、適当に体と髪をふいてトランクスを履く。
そこで「あ」と気づく。


着替えを部屋に忘れてきたので、足早に脱衣所を出た。


「きゃー!お兄ちゃんの変態っ!!トランクス一枚で歩かないでよ!」


と、まだパンツとキャミソール姿の粧裕が叫んだ。




部屋に戻り、服を着た。
そして、


体育座り。


『ラ、ライト。おれ、一日くらいならプチトマトでも我慢するから元気出せよ、な?』
「・・・」
『おまえの妹だってパンツ一枚だったんだから、気にすることないって』
「・・・」
『男が家の中でトランクスで歩いたって全然変態じゃないって!』

「リューク」
『なんだ?』
「ゴムボールでも食ってろ」




パンツ一丁 些事のもと