ミーアの虚像



対峙するラクス・クライン。

「私がラクスよ。おまえなどもういらない、もういらないわたしこそが!」
「民衆があなたを望むならあなたこそラクス・クラインでしょう」
「私を望んでいるわ!」

もとからいないのですよラクス・クラインなど

「あなたこそがラクス・クラインならばそれは誰にとってもよいことでしょう。
ラクス・クラインの勢力を恐れるもの以外にとってはよいこと」

「地位も名誉も婚約者もすべてわたしのもの!」
「それはちがいますわ、ラクス・クライン」
「地位も名誉もラクス・クラインのものですけれど、アスラン・ザラは一度たりとも
ラクス・クラインのものになったことはないのですよ」
「だまれにせもの!」

ラクス・クラインはわたくしを銃で撃っちやった。
ドッペルゲンガーね

「でも大丈夫」
「ラクスさま!ああ、わたし、わたし殺すのね?」
「ええわたくしは死ぬでしょう」
「ラクスさま、ラクスさま・・・いいえ、こ、これで私が、私が本当にラクス・クラインだわ」

狂喜の笑み
狂気
立ち上がることもできなくなったわたくしの首を膝にのせて、ラクス・クラインは笑うのに
どうしておまえは泣いているの。わたくしを悼むのですか。いい子ね。

「焼けるように痛みますね。死ぬのはわたくしですが、ラクス・クライン、聞きなさい。
あなたが殺めたのは出血で死ぬような矮小な生き物です。そしてあなたは
ほかでもない偉大な人類であるラクス・クラインなのです。銃に撃たれても決して
死んではいけません。わかりましたね」





「やあ、お手柄だね」
デュランダル議長はクイーンの暗殺を見事成功させた彼女を執務室でねぎらった。
心地のよさそうな椅子に腰掛けて、机に指を組んで置いた。
「だが、そうだな。亡骸をそのままにしたのはよくない。もう回収させたが誰かに見られていたら一大事だ」
「大丈夫よ、デュランダル議長。私ちゃんとやるわ」
「もう遅いのだよ、君の失態は取り返しのつかないこと。残念でもなんでもないがそのよく動く唇は邪魔だね」
炸裂音
うすい机の板をつきぬけ、さあ銃弾はうずまったよデュランダルの膝に。
彼女の持つ小銃からけぶりが細くあがっている。
「あなたが死ねばそれで済むの。ほかにもう知る者もないのだから」
椅子から滑り落ちたデュランダル議長閣下の体にヒールの底を押し当てる。

「はじめまして、ギルバートさん、わたくしはラクス・クラインですわ」
「・・・っ」
「ごきげんよう」