傷だらけの子供たちで集まって、傷だらけの古い寺院に眠った。しばらくの間。
しばらくの間。

明け方に海岸に出たアスラン・ザラにならってラクス・クラインも。


アスランは貝殻を耳に当てていた。
「耳が痛いのですか」
「海の音がすると聞いたことがあって」
「まあ」
ラクスは貝を拾い上げ、それは二枚貝の片割れだったけれどアスランの真似をして耳に当てた。
桜色の、小指の先ほどの小さな貝殻
「月にいた頃、キラが言ってたんです」
こういう形の方ですよと、ラクスに自分の持っていた巻貝を手渡した。
「こういう、ヤドカリがはいるような形の貝で聞くんです。渦を巻いている構造だから海の音が反響して
それがずっと反響し続けるんだって言ってました」
ラクスはその話を熱心に聴いている。
「でも出口が空いてるから、ずっとは反響しないですよね」と身も蓋もないことをいってしまったアスラン、
それを聞いてラクスはあわてて指で巻貝の入り口を塞いだ。
これで音は出て行かない。
そんなことしたってもとからきこえませんよ、とまたも身も蓋も情緒も無いことを言おうとしたアスランは
彼女の真面目な表情にぐっとかみ殺した。
「アスラン、セロテープをもっていませんか」
海に散歩にくるのにそんなものもっているはずがない。
「あいにく。すみません」
「そうですか・・・」
ラクスは残念そうに肩を落として、ずっと貝殻の入り口を指で塞いでいた。
ああなるほど、ずっと指で塞いでいることはできないからセロテープでとめておこうと思ったわけだ
「そんなことし・・・」
そんなことしなくても音はもとから入っていませんよ、とまた言おうとして大慌てで口をつぐんだ。自分には
いっそ場を興ざめさせる才能があるようにさえ思われる。
「そ、そんなことしなくても・・・その、もしかしたらこの貝殻の奥のほうは実は四次元空間になっていて音は
そこに吸い込まれていってるのかもしれません。だから大丈夫ですよ!・・・たぶん」


傷だらけの子供たちで集まって、傷だらけの古い寺院に眠る日々。しばらくの間。
しばらくの間。
くだらない会話をゆるしたまえ