「ねえぼくがオードリーのこと、どれだけすきだかあててごらん」
「私はクロトのことがこれくらい好きです」
オードリーは両手いっぱい広げてみせる。
「ぼくなんてこれくらい好きだよ」
ぼくはオードリーよりも背が高い分、広げた両手の幅も大きい。
オードリーはきょろきょろして壁際に走った。
「私は、あっちの壁から、こっちの壁くらい」
「ぼくは、あっちの壁からむこうのブリッジまでだ」
「では私は船首から船尾まで」
「じゃあぼくは赤道くらい」
「私は黄道くらい」
「こうどうってなに」
「太陽の通る道です」
「それなら、ぼくはモビルスーツに乗ってどこまでも一緒にいくくらい好きだよ」
「それはどこまで」
「たぶん、すごく遠い距離」
「オードリーも連れて行ってくれるの」
「コックピット狭いよ」
「膝の上にのせてください」
「足がしびれるからヤダー」
「クロト」
「ウソ。べつにいいよ。おっさんには内緒な」
「ないしょ」
唇の前に人差し指をたてる。
そんでデコを寄せて
鼻先をあてて
いたずらの計画にデコで乾杯をした。
でも
あー
ぼく、オードリーをのせわすれた。
一緒に、このコックピットで、膝にのせて、一緒に
どこまでもいくはずだったのに。
字はかけないけど
手紙を書くんだった。
絵もかけないけど
手紙を書くんだった。
ここ、ケータイ圏外だろうし
やっぱり手紙を書くんだった。
オードリーに手が届かないここは、きっとものすごく遠いところだ。
オードリー、
ぼくはオードリーのいるところからぼくのいるところくらいまで
大好きだよ
絵本『どんなにきみがすきだかあててごらん』に愛をこめて。
クロトに恋をこめて。