「子供たちも寝ちゃったし、みんなで外行こう、外!」

ダダダダダダッ

「あーもうカガリ!ちゃんと上着はおっていけよ」

タッタッタッ

「アスラーン、それぼくのサンダルなんだけどー」

テケテケテケ

「あらあら。みなさん足が速いですわー」

しゃなり しゃなり



夜、子供たちがすっかり眠った時間に16歳の少年少女は浜辺に飛び出した。
飛び出したはいいが波打ち際でとまった。
四人で円を作る。
さて作戦会議。

「なにして遊ぼうか」
「ドッヂボールしよう!ハロで」
カガリがハロを鷲掴みにすると『ミトメタクナーイ、ミトメタクナイ!』とわめいた。
「当のハロが嫌がってるからやめとこうよ」
「そういうキラは何かないのか」
「えっと、それじゃあかくれんぼとか」
「こんな時間にやったら朝になるまで見つからないぞ、キラ」
「そういうアスランはなにかいい案あるの」
「・・・・・・・・・・・・ビンゴ、とか」



ザッバーン



アスランはキラによる足払いとカガリによる諸手投げを受け、
夏の夜の海につかった。

「しょっぱっ」
「しょっぱいのはアスランだよ」
「ビンゴとかあり得ん」
「アスラン、大丈夫ですか」

仁王立ちをして手を貸す気のない双子の傍らからラクスだけはアスランに手を差し伸べた。

「ラクス・・・」

アバウトでバイオレンスな双子と比較すると彼女の優しさが胸にしみた。
ああやっぱり婚約解消したのは少し未練がのこるなあ、と思いつつその白い手をとる。


「でもビンゴはあり得ませんわ」
「・・・す、すみません」


「ラクスはなにか思いつかないか?」
「そうですわねえ・・・歌、などいかがでしょう」

キラもカガリもアスランも、カラオケのことを指しているのだと思ったが
ラクスは首を横に振って意外なことを言った。

「輪唱ですわ」
「よくカエルのうたとかでやるやつだ」

キラがぽんと手を打つ。

「物は試しだ、やってみよう。でももっとカッコイイ歌がいいんだがな」
「カッコイイ歌ってマジンガーz・・・じゃなくてドラゴンアッシュとかか?」







ザッバーン!





またしてもアスランは双子のタッグに海に投げ込まれた。
マジンガーZは絶対怒られると思ってうろ覚えの人気アーティストに訂正してみたのに
投げられた。

「アスランのくせに生意気だ!」
「アスランが”ドラゴンアッシュ”はないよね」
「ちょっと待てよ。キラもカガリもさっきから」
「アスラン、お風邪を召されますわ」
「ラクス・・・」

ラクスの優しさに苛立ちをおさめ、アスランは今度こそやわらかな手をとった。


「ツッコミにくいですわ」
「・・・す、すみません」


「かっこいい歌といったらあれだ!」
「どれ?」
「大地讃唱!」
「「「あー」」」

カガリの提案に三人もうなずいた。
三人共通で知っている歌が判明すると、すぐに四人は波打ち際に横一列に並んだ。

「でも輪唱はできますかしら」
「ひとのこらー、のとこならできそうじゃない?」
「おれ、歌は苦手なn」
「とりあえずアスランがバスな」
「え?」
「じゃあ僕テノール」
「だから俺、歌はにがt」
「私がアルト、ラクスはソプラノ。決定!」

「では、せーの」




「ひ、ひとのこらー」
        「ひとのこらー」
              「ひとのこ」
                  「その立つ土に感謝せよー」




「おーできたできた」
「意外とできるものだな」
「では戻りましょうか。中でUNOでも」
「いいねえ」
「ラクスはカードゲーム強そうだよねえ」
「いいえ。お手柔らかに」
「あはは、絶対強そうだよ」

三人が盛り上がりながら砂浜を戻っていくのを見つめて、ずぶ濡れのアスランは空を見上げた。
遠いプラントに思いを馳せる。

「イザークとの諍いがかわいく思える日がくるなんて・・・」

「アスラーン、そんな格好だと風邪ひくよー」

両脇に女の子二人を連れてそんなことを言ったキラにはとりあえず靴を投げた。
カガリの後頭部に当たった。