はずっと暖かな陽射しの白い部屋の住人だった。
古人は森羅万象久しくとどまりたるためしなしとうたった。
一度だって病院の外に出たことのないも変わりつづけているのだろうか。


「イザークはせかいでいちばんやさしいから」
「世界を知らないくせに生意気をいうな」
「しっていますから」
「世界は病院の外にあるんだ」
「でも私のせかいはここです」
「・・・ここだな」
「だから、イザークはせかいでいちばんやさしいから、私は嬉しいです」
「よかったな」
「棒読み」
そう言って満足そうには笑った。

「まもなく、自律心肺機能が80%を下回ります」
医者は云った。
「そうなれば存命は危うくなります」
医者は云った。
最善を尽くしたが手の施し様がないと、医者は云った。
この医者にできないのなら俺がやろう。
今から勉強して医者になって、の命に間に合うだろうか。

「イザークはお医者様になられますの」
「ならない」
「ではなぜ難しい医療の本をよんでいらっしゃいます」
「わからない」
は死にますが、とても寂しいですが、せかいでいちばんやさしいひとが
そばにいてくださったからとても幸せです」
「おまえは死なない」
「うん」
「死なない。絶対に治す方法はどこかにあるんだ」
「うん」
「でも、どの本にも載っていないんだっ」
「うん」
「どうしておまえがこんなっ・・・こんな」

「かなしまないで。せかいでいちばんやさしいひと」
「かなしい」
「かなしまないで」
「かなしくなくないっ」
「どちらです」

は呼吸器のむこうで頬をあげてわらった。