重箱







「わたくしお聞きしたのです」

「何をです」
「土方さんは二言目には斬る、とおっしゃると」
「その情報は誰からです」
「沖田さん」



名を聞く前から予想はついていた。いや、確信に近かった。
総悟は人の醜聞を広げるのが特技だ。
よりによって、これに話すか。
これは斬るとか殺すとか、そういう言葉をあまり聞きなれていない。
必要以上に怖がらせたら可愛想だろう。・・・たぶん。








「ですから、三言目にはの名をおっしゃっていただけますか」

そう来たか、
そう来たかこの箱入り娘。
重箱入り娘。

「三言目もすでに決まっておいでなのですか」
「や、決まっているとかそういうことじゃなく」
「ちがうのですか」
「言葉のあやというかですね」
「では一言目も二言目もあいているのですか」

あいているって言うか言葉のあやだつってんだろ!
と言えるはずもなく

「とりあえず、空いておりますね」
とやる気なく答えておいた。
適当に流すのが吉と見たり。

すると目の前の女は三つ指ついて頭をさげた。


「どうかを二言目あたりにおいてくださいまし」


二言目とは妙な慎ましさだ。
やはりこの人は生まれてこのかた重箱にはいっていたらしい。
どういうふうに言ったらこの無意味な問答をとめてもらえるんだろうか。
話をするならも少し生産的な話がしたい。
生産的というのは性交渉という意味ではない。
こんな小娘に手を出すほど不自由はしていない。
こんな小娘に。
小娘?
小娘、ねぇ・・・
まあ微妙な年だわな。
あと数センチ乳があったらこっちの理性も危ういが、体つきはまだ小娘だ。


「一言目でもいいですけど」
「・・・ひ、一言目は沖田さんのお名前をどうぞ」
「なんで総悟」
「だってそれは、それは、その」

女は頬をあからめ、ばつが悪そうに俯く。







「お二人はお付き合いをしていらっしゃるのですから・・・」







重箱の角に頭をぶつけて盲腸になるような衝撃を受けた。
痛い。
これは痛い。

「申し訳ありません!先日沖田さんからお聞きしてしまったのですが
ほかの誰にももらしておりませんし、これからも秘密にしますから」

重箱恐るべし。

「俺ァ一応まっすぐに健全なんで男に興味はねえんですけど」
「沖田さんは女性なのですか」
「男子便所でよく一緒になります」
「・・・よくわかりません」

真剣に悩んでいる。
誰かこの人を重箱から出してやってくれ。




「よくわかりませんが、私にもまだ望みがあるということでしょうか」
「さあ」と短く応えて、粗茶といわれて出された玉露をすする。
マジメに受け答えするのはあと何年かしたらだな。

「私の胸がもう少し大きくなりましたらよいのですか」

思わず茶を噴き出す。
素でコントみたいになった。


「な、なん、なにをっ」





















「山崎さんという監察の方が”土方さんはおっぱい大好きですよ”と」







山崎ぃいいいいい!!!