みずみずしい曲線
張りつめている
薄い皮膜を鋭利な刃物で突き破り四つに切り分け、手が濡れたので吸う
甘いのに舌に刺激がくる
初々しい感覚に一瞬ひるむ


雲雀の白い指が赤いそれを一つ取り、赤い舌が迎えた
果肉をじゅうと噛む
白い手のひらにパタパタと汁が落ちたので、雲雀の赤い舌は己の手首から中指の付け根まで舐めあげる







いやらしいトマト







俺は果汁の付着した果物ナイフを拭っている最中だったが見入っていた。
視線に気付いた雲雀が汁を吸う舌を引っ込め、窓からの陽光を背負ってこちらを見つめた。
みずみずしさの乗り移った唇が動く

「なに」

声は凛

「いや、かわりに舐めてやろうかと思って」

大人の余裕をかもして唇の端をきゅっと持ち上げる。
そのわりにはよく我慢したと自分を褒めたいほど目の前の二十代半ばは妖艶だ。
病院ていうのはこれだから好きじゃない
白い壁 白い服 白いカーテン 白い肌 ピンクの乳首 白いベッド
ぜったい、教育上よくない場所だここは。
ナースもいるし
お注射もある
けしからん

雲雀は眉一つ動かさず、(いつものセクハラ)とでも思っているのだろう。

「もうひとつ」
「どーぞ」

唇の粘膜がピタ、とトマトを包み
やわい果肉をわずかに吸ってからキュと皮を噛む
再び汁が白い指を伝って

「・・・うまい?」
「あまい」
「じゃあまた来るときなんか持って来てやんよ」

雲雀の声が全部ひらがなに聞こえてきたので俺の脳みその落ち着きがなくなっているのだと気づく。
丸い椅子から速やかに立ち上がり「またな」と言い置いて廊下に出る。
あぶねーあぶねー保健体育の授業のあとの中学生みたいになるとこだった。



駐車場まで戻ると黒スーツ、黒ボーシ、肩レオンのリボーンと出くわした。

「よ!雲雀の見舞いか?」
「ああ」
「そっかそっか・・・」

まだトマトふた切れ残ってたけど、あれ食ってるとこ見たらリボーンのやつ雲雀が弱ってるのをいいことに
ほにゃららをペケペケしてにゃーんにゃんなことになんねえかな。いやいやまさか、考えすぎだ。
リボーンって手ェ早いけど愛人多いしそういうの困ってねえか。

「それじゃ雲雀によろしく」
「おう」

短い返事を受けてすれ違ってから、リボーンが手にもっていた果物カゴを振り返る。


中には、バナナ。









「リボーンのエッチ!変態!バカバカバカ!それは俺が次にやろうとおもってたの!」