「やあ、お嬢さん」


見上げた君の頭上、二階の非常階段からボクはハウル張りの色っぽいしぐさで声をかけたわけです。

「千石くん?」
「青学の生徒はみんな偉いね。誰も非常階段でサボってないなんて」
「どうしているの、学校は」
「うちのガッコは昨日終業式だったんだ」
「でも、制服・・・」
「実は今日終業式だったんだけどサボってきたの。ちゃんは鋭いね!ラブ!」

俺は手すりを放して非常階段をカンカンを駆け下りた。そして君に跳びつくように抱きついた。
つまりジャンプ&ハグ。山吹中ではこれをジャンパグと言ってね、流行ってるんだよ。・・・男子同士で。

「会いたかったよー!」
「待っ、ま、まっ」

オロオロと両手をつっぱって俺はひっぺがされた。照れ屋さんである。

ちゃんもうガッコおわったっしょ、遊び行こ」
「でも、まだ委員会があるの」
「それは手塚くんにまかせて」
「・・・あの、それじゃあ三分待っていてもらえるかな。言ってくるから」
「三分ね。オッケ、待ってる」
「目立たないようにね」
「うん、目立たないように待ってるよ」

駆けてく君のスカートが風にぺらーっとなるのを中腰で眺めてから、俺は非常階段の二階に戻った。

暑さのあまりうろうろと踊り場を歩き回って、あんまり暑いからちょっと中にはいっちゃおうかと思って
非常扉に手をかけた。




ゴン!




「あれ?なんかいまハンターハンターの主人公みたいな音がした、俺の額からハンターハンターの主人公みたいな音がしたよ」

俺は額を押さえよろめきつつ、俺が非常扉に寄ったのと絶妙のタイミングで中から扉を開けた人に抗議した。

「何をしている、千石」
「ちょっやばい、救急車呼んでもらえますか。手塚くんが見えるけどこれ幻覚だから」
「大丈夫か」
「・・・だ、大丈夫デス侵入してごめんなさい学校に通報だけはご勘弁を」
「以後、受付で学校名と氏名、用件を伝えてから入るように」
「はーい。つーか久しぶり!大会以来だね」
「用件はなんだ。はいないぞ」
「用件わかってんじゃん。しかもちゃん絶対いるし」
「千石に会わせるはいない」
「なんだよそのおまえにやる娘はない!的なノリは。ああ、さては新・愛の嵐。嫉妬の炎ですね。
わかったわかった、これあげるから今日のところはおとなしくちゃんの代わりに委員会出といて」

俺は手塚くんの手にチロルチョコを握らせた。

「つーか暑いね!チョコに免じて中にいれてもら」




ゴン!




「あら、いまハンターハンターの主人公のような音が・・・?」

やんわりとした君の声音がさっきの俺と同じ事を言った。