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恋哀履歴

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ちょっと面白い見せ物があるんだけど、見ていかない?
うん、僕は不二っていうんだ。3-6。
うちの部の部長、手塚国光って知ってるだろ?
彼さ、ついこの前から付き合い始めたんだよ。生徒会の副会長と。
ああ、そう。手塚と同じクラスの美人で有名な、あのさん。

あのテニス馬鹿がだよ。
それだけでもイイ見せ物なんだけど、もっと面白いんだよ。
僕、ちょうど部活後に生徒会室の前を通りかかったんだけどね、
そのときに会話が聞こえてきたんだ。

「あ、手塚くん帰る?」
「ああ。………一緒に帰るか」
「う、うん。か、帰りたい」
「……手、は繋ぐか?」
「う、うん。つな、繋ぎたい、やも」
「……どこかに寄るか?」
「え?うん…寄りたい」
「……駅ビルでアイスでも、食べようか」

っと、ここまでの会話に要した時間がざっと二分。

「…」が多すぎるんだよね。
僕、廊下で聞いてて笑い堪えるのに必死だったよ。


「た、食べたい!」
「……それじゃあ、行くか」
「うん…」

ガラッ!

「手塚居るー?」

僕、ホントいいタイミングで入っちゃったらしくて。
手塚が手を出して、さんがそれを丁度掴もうとしている時に入ったんだ。
二人の手をひっこめる速度の速いこと速いこと。

会話もそれくらいはやくしてね。(待ってるのめんどくさいから)



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大石秀一郎です。
手塚がさんと付き合っているのはうちの部員たちの仕業で学校中に知れ渡っています。
みんなに知られていることを知らないのは本人たちだけて、少しかわいそうです。
かわいそうといえば、先日こんなことがありました。

部活終了後、手塚はいつもは最後の方まで残っていて部員たちが帰るのを確認するのに
その日はやたら早く着替えていました。

「大石、後をまかせて構わないか」
「ああ。お疲れ」

手塚は随分急いでいる様子で部室を出て行った。

「あれ?手塚もう帰ったんだ」
「なんだか急いでいたみたいだぞ。用事でもあるんだろう」
「忙しいよね、相変わらず」
「そうだな」
不二と話していると、コンコンコン、と部室の扉をノックする音が聞こえた。

扉を開けてみると、が立っていた。
さん、どうしたの?」
「あの、手塚くんいませんか」
「手塚なら今さっきどっか行ったよ」
「そうですか。着替え中、失礼しました」
「おやじゃないか。どうしたんだい?」
「竜崎先生」
ちゃん手塚のこと探しにきたけど入れ違いでどっか行っちゃたんですよ〜」
「なんだそうなのかい。ちょっと待ってな。すぐ呼んできてやるからここにいるんだよ」

「え、竜崎先生?せんせーい!」
「どうしちゃったんだろうね」
「まぁなんでもいいじゃん!来るまで大貧民しよーゼ」
「あ、いいッスね〜」
先輩も。こっち。ここ座って」
「は、はい」
「先輩なんでドモるの?」
「ご、ごめんなさい」
「かわいいからいいけど」
残っていた部員全員で大貧民を始めることになり、越前がを横に座らせました。
その時です。



ピーンポーンパーンポーン



『3年の手塚、が待っているので至急部室に戻るように。繰り返す、
3年の手塚。が待っているので大至急部室に戻るように!』




まだ学校にはたくさんの生徒が残っている時間の悲劇でした。
そのときの手塚がどんな顔をして校舎内を走っていたのか、痛々しくて
俺には想像できません。



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やあ。乾だ。
今日は俺が今まで書き溜めてきた丸秘データを公開しよう。


手塚とが下校時に手を繋いだ回数:33日間中18日
手を繋ぐまでかかった時間の平均:321.4秒
の文頭がドモる率:日常会話の62%
手塚が教科書を忘れる率:0%
が教科書を忘れる率:0%
ふたりが授業中に机をくっつける率:32%
最近が一番買う魚:うなぎ
付き合い始めてからの手塚のGATSBY消費量:1.8倍
付き合い始めてからのの歯磨き時間増加平均:+263秒
手塚が買う雑誌の推移:
      (交際前)月刊プロテニス/スマッシュ
        ↓
      (交際後)月刊プロテニス/スマッシュ/メンズノンノ/東京ウォーカー
の好きなお菓子:プリッツ(ロースト味)
手塚が最近よく買うお菓子:プリッツ(ロースト味)
海堂が最近よく買うお菓子:プリッツ(ロースト味)
越前が最近よく買うお菓子:プリッツ(ロースト味)
校内で手塚との交際を知らない人:0人
全校生徒(教職員含む)に交際を知られていることに気づいてない人:手塚、
海堂がのことが好きな確率:94%

なぜかな。少し切ないのは。



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菊丸英二参上!
つか聞いてよ!マジうけんの!
あの手塚に彼女出現
ビビったでしょ?
俺もさー、はじめてきいたときには信じられなかった。
でもさ、オレ見ちゃったんだよね、こんなシーン!

昼休みなんだけどね、なんか手塚ったらやたら彼氏の在り方とかに悩んじゃって
やっぱり恋人同士なら昼休みは一緒に居るべき、とか考えたらしいんだよね。

「……一緒に食べないか」

一世一代の告白だったとおもうよ、コレ。
教室中の視線が手塚に一直線だったもんね。
ちなみに副会長は手塚と同じ1組なんだけど、オレは1組の友達のとこ遊びに来ててこれ見てたの。
それにしてもちゃんかわいいよなー。

「う、うん、食べよう!」
「……屋上へ、行くか」
「う、うん!行こう」
「……よし」
「でもその前にちょっと、手とか洗ったりしてくる」
「……そうか」

相変わらず「…」の多い会話だよネー。

っで、教室から出てった副会長をおっかけて手塚が出てって、それをおっかけて
オレも教室出たんだ。
それで、副会長は水道のところに行って、手塚も背後霊みたいにそれについて
行ってて、副会長全然それに気づいてなくてさ。

手塚が女子トイレに危うく足を踏み入れるところだったんだよ!

そんだけでもケッサクなのに、副会長が気づいて慌てて女子トイレの入り口の
ドアを閉めたもんだから、

ゴッって!

手塚がゴっッて女子トイレのドアに額ぶつけたんだ。ああもうだめだ、思い出しただけで
息できないくらい笑える。

んで、副会長が出てきたところで
「オレも一緒にご飯たべてイー?」
って言いながら特攻してみました★

副会長はみんなのモンだもんネ!



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こんにちは河村です。
手塚とさん仲いいよね。
手塚は気難しくて古風なところあるからあんまり恋愛とかに興味なさそうに見えるよね。
でも違うんだ。
二年の生徒総会のときの話をするね。
あの頃は二人ともまだ付き合ってなくて、会長と副会長の関係だけだったんだ。

生徒総会は全校生徒を一堂に体育館に集めて行われるから、結構ざわざわしちゃうんだよね。
さんは新・生徒会役員だから場をまとめるためにがんばってたんだ。
手塚は舞台袖と舞台上を行ったり来たりして資料を運んでてやっぱり忙しそう。
学校行事で生徒を静めるのは『副会長』という伝統があって、押しの弱いさんも一生懸命声を
だしててね。でも生徒がざわついていてマイクでいっても声は届かなくって・・・。

開始予定時刻を5分過ぎても静まらない会場内に、先生方もいらついてきてました。
「静粛に。静粛におねがいします」
先生方と生徒の間で、今にも泣き出しそうな声でさんが言った、その時。

さんかわいー!」

騒いでいた男子の誰かがふざけて大声でさけんだんだ。
ひどいよね。
さん一生懸命だったのに。
さん真っ赤になっちゃって、下を向いちゃった。
そしたら手塚が壇上にあがって、マイク無しで

静粛にっ!

って、叫んだ。

あの手塚が叫ぶことなんて滅多にないから、みんなびっくりしちゃって
一瞬で会場が静まって。
手塚は何事も無かったように「これより生徒総会をはじめます」って言ったんだ。
生徒総会も滞りなく終わった。

今思えば、あれってさんにヤジをとばした男子に怒ったんだよね、きっと。
あの頃からさんのこと好きだったのかなって思うと、なんかいいよね。



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2年の桃城ッス!桃ちゃんでいいゼ。
いやーホントに部長には驚かされたよ。
テニスと生徒会と勉強しかしてない人かと思ったらいつのまにか
ものすごい美人な彼女がいるんだもんなー。
すみにおけねーなー。おけねーよ。

そういやさ、この前屋上でさぼろうかなーって思って階段あがっていったら
部長と先輩がいてさ。
ひそひそ話してるの聞いちゃったわけだ!

「どうするんだ」
「でもあの場はわたしがそうしないと、収拾つかないかなって…」
「何を言っているんだ。そんな危ない仕事をがやる必要は無いだろう」
「ご、ごめんなさい」

修羅場っぽかったから、俺は聞き耳立ててたわけだ。

「まったく…体育祭実行委員を任されるなんて。辞退できるように俺が
体育祭の実行委員長に話をつけてくる」
「いいのよ。今更かわってくれる人もいないしわたし平気。できるわ」
「できるとかできないの問題じゃない。危険だといっているんだ」

こんな問答がしばらく続いて、体育祭実行委員のどこが危ない仕事なんだろーって
思ってたらついに先輩が泣き出しちゃって。

「わたし…そんなに頼りない?わたし、頑張れるよ」
。すまない。言葉がキツかったか、大丈夫か」
「大丈夫…、泣いたりしてごめんなさい」
「いや。俺こそひどいことを言った。謝る」

そのあたりで丸くおさまって、けれど俺には先輩がどんな仕事を
するのかはわからなかった。


そして迎えた体育祭当日。
先輩の役職は、



スタートの空砲係でした。



こりゃあぶねーな。・・・いやあぶなくねーよ。



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…ッス。
越前ッス。
手塚部長と先輩が付き合ってる。
学校中の奴が知ってる。
最近他校にまで知られてる。
本人たちは気づいてないみたい。
先輩と俺は家が結構近い。たまに先輩と会う。
この前は、夜に俺の家の前で会った。

「あ、越前くん」
「ッス」
「ここ越前君のおうちなの?すごい。お寺なんだね」
「別に。古いだけッス。先輩なにしてるんスかこんな時間に」
「散歩」

手ぶらだからたぶん本当に散歩なんだろう。
けど。

「…危ないッスよ」
ひとりだと
このへん痴漢とか、いるし。

先輩は珍しそうに俺のうちを見てるから、門の中にいれてあげた。
「石畳かっこいい。あ、鐘もあるのね」

先輩ははしゃいでる。
嬉しそう。
かわいい。

「猫だ」
カルピンが来た。先輩の足のあたりくるくる周って、身体を摺り寄せてる。
「うわあかわいい。越前くん猫いたんだ」
「…」
「よしよし」

先輩の手がカルピンの撫でて、気持ちよさそうにしてる。

「カル!」
俺はカルピンを先輩からひっぺがしてもちあげた。
それで先輩と反対方向にカルピンを放した。

別に嫉妬とかじゃないッス。
最近、あいつ洗ってないし
だから…。
そんな寂しそうにしないでよ、先輩。

「先輩、もう遅いから送るッス」
「え。大丈夫よ、すぐそこだから」
「いいから」
俺は無理やり先輩ひっぱって家まで送った。

先輩の家の前まで来ると、先輩は俺にお礼を言った。
「ありがとう。今度また行ったら猫さんにも会わせて。名前なんていうのあの子、カル?」
「カルピン。先輩気にいったんスか」
「だってすごくかわいい」

先輩のほうがかわいいよ。
言えないけど。

「それに、毛がくるってなっててちょっと手塚君の髪みたい…」

ポッと赤くなる。

「そ、それじゃ。ほんとうにありがとうね」
先輩は家に入ってしまった。





その日、家の居間で寝転がりながらカルピンと遊ぶ。
「…ねぇ奈々子さん」
「なあに?」


「猫にストパーってできる?」





「何言ってるのリョーマさん!?」



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海堂…ッス。

先輩、
あの…
ずっと前から
俺、先輩のこと………





























フ、フシュー!







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