肝試し
夏の真っ暗闇のなか、ジェイドはグランコクマ郊外にある、数十年前に廃棄された洋館にいた。
「凛少尉、怖くありませんか」
手をぐいぐい引っ張って洋館に引きずり込む。
「はい怖くありません」
「ははは、そうですか」
「ですが、なんだか寒くなってきました」
「ははは」
悪寒がするそうだ。
村雨は自分の腕をさすってあたりを伺い、その姿は心なしか怖がっているように見える。
寒いのはジェイドが小声でアイシクルレインを詠唱したからだが、彼は笑ってごまかした。
「大佐は寒くありませんか」
「いえ全然。むしろぽっぽしてきます」
「(ぽっぽ?)ここは何をする場所なのですか」
「ゴーストが出ると有名な場所ですよ」
「ゴーストとはなんですか」
一拍置いて、なるべく冷たく、不気味な声音を響かせる。
「この世に未練を残して死んだ人間が彷徨っている姿です」
村雨がビクと震えて立ち止まる。
「死んだ人間・・・」
「おや?どうしました凛少尉」
目が潤んだ。
よしっ。
「・・・か、家臣たちに会いたいです」
ぼろぼろ泣いた。
かわいいが求めていたのはこの反応ではない。