ザフトの訓練で泊まった合宿所は四人一部屋、
畳だった。
アスランは異質な環境にたいして抵抗はなく
ディアッカは「えー」と前時代的作りに嫌な顔をし
ニコルは笑ったままだが何も言わず笑ったままなのでたぶん嫌なのだろう
で、イザークは「部屋はどこだ」と部屋を見ながら尋ねた。

見渡せるほど広くない部屋に男四人の合宿荷物をどすんと置けば
あるのは足の踏み場だけ。

「これは絶対四人で寝っ転がれませんよね」とニコルが微笑みながら言った。
「バカかニコル。これは部屋ではない、ベッドがないのがその証拠だ」
イザークは本気だった。
本気で部屋を間違えたのだと思っている。
そのイザークがなにか見つけて「ああ」と声をあげた。
「なんだ、奥へ行くドアがある。貴様ら、部屋はこっちだ」
イザークは言いながら土足で畳にあがり、押入れの襖に手をかけた。

襖を開いたその向こうに希望を見出せなかったイザークに
ディアッカは目頭を熱くした。



さて、疲れきった合宿一日目の夜、
問題が発生した。
押入れの空いたスペースに荷物を全部押し込んでも、
部屋は布団を三枚敷くので限界だったのである。

「仕方ないな、三枚の上に四人で寝よう」
アスランはイザークが激しく反応することをわかっていながらも提案した。

「誰が貴様などと同衾するか!」
「あはは、同衾って表現が卑猥ですね」
「え?何!?ワイ談?しちゃう?好きな人いる?」
「文句を言ってる場合じゃないだろう、消灯時間まであと三分だ」
「くっ・・・」

アスランにたしなめられた事にことさら怒りを隠しきれないイザークは
とりあえずディアッカのすねを蹴った。

「あのう」
ニコルが控えめに挙手したので皆が振り返る

「かわの字、作って寝ませんか」
「河の字?」とアスラン
「皮の字?」とディアッカ
「川です、川。River」
「River!?五文字だぞバカか!」とイザーク
「いえ、川は無理なので四画の漢字で」

二分後、イザークとアスランが決して隣り同士にならないように配慮された
絶妙なポジションニングが決定した。


そして、深夜2時。
クルーゼ隊長が隊員の各部屋を巡回した。
アスラン、イザーク、ニコル、ディアッカの班の扉を開いてすぐに
「ふむ」と顎を撫でる。

「見事だ」







































ディアッカの位置だけ即決。
「山の字」