オープンスペースの利用形態に関する研究

研究の目的

康生地区の調査・分析

1.アンケート調査

2.オープンスペースの利用実態

3.観察調査

結論


研究の目的

 ここでのオープンスペースは、地域コミュニティー活動の空間として、公園や河川敷、歩道などの「公的空間」と貸駐車場や空地等の「私的空間」を対象とするものである。
 岡崎市康生地区は、近年、商業機能低下により、中心市街地の空洞化が見られる。その原因を「暮らしの文化」の場という視点で検証すると、必ずしも上手く機能していない。そうした中、公的空間・私的空間を含めた利用形態が、地域コミュニティーの形成と商店街活性に果たす役割は大きいと考えられる。
 本研究では、「暮らしの文化」としての地域コミュニティー活動の場となりうる空間について調査・検証を行い岡崎市康生地区の商店街活性に繋がる新たなオープンスペースの利用形態を提示することを目的とする。


康生地区の調査・分析

1.アンケート調査
 康生地区市民、商店主、岡崎市民を対象として、オープンスペースについての意識調査を行った(表1)。
 図1では、「岡崎公園・岡崎城」を6割近くの人が岡崎の名所としてあげており、歴史的文化価値のある場所として,効果的な演出の仕方を考える必要がある。図2は、街路を使った催事である「二七市」への参加状況であるが、7割強の人が参加経験を持っている。その理由として、「コミュニケーションが得られる」と言った意見が多く、人の繋がりを求めている人が多い事がわかる。
 図3は、商店街内のオープンスペースへの要望を聴いたもので「休憩場所を増やしてほしい」「自然を取り入れてほしい」等の回答が多く、街路空間について、世代間を通し、6割の人が落ちついて休める場所を求めており(図4)、オープンスペースに対してその必要性と具体的な要望があることが明示された。

図1 最も岡崎らしい場所(図E-4)

図2 岡崎の「二七市」への参加状況(図E-6)

 図3 商店街内の交流スペースの要求(図F-7)

図4 オープンスペースへの要望


2.オープンスペースの利用実態
 私的空地利用調査では,商店街街路沿いにおいても、閉店による家屋取り壊し跡地として空き空間となっている敷地が多く、ほとんどが、駐車場として使われている(図5)。また、既成市街地の中で公共空間を今以上に確保するのは難しく、私的空間の商店街余暇空間としての利用が考えられる。

図5 オープンスペースの現状


3.観察調査
 康生商店街に隣接する岡崎公園、籠田公園、シビコ前公園、乙川河川敷において、時間帯別利用実態調査を、また商店街路において時間帯別歩行者人数調査を男、女、子供別に行った。調査日時は平日、休日の11時〜13時、14時〜16時、17時〜19時とした。調査日の天候は、平休日共に晴れであり、風も無く過ごしやすい一日だった。
 図6は、岡崎公園の時間帯別利用者人数を表したもので、ここでは、17時以降の利用者が激減していることがわかる。また、平日、休日共に、歴史観光を目的とした団体客が多く、休日の午後は、平日の二倍以上の訪問者があることがわかる。これに対し、自由意見を聴いたところ公園の設備に必ずしも満足していない事が指摘されている(表2)。
 図7、8は、商店街街路の歩行者通過人数を表した図である。平日は休日に比べ正午前後の通過が多く、場所別では、休・平日と共にほぼ、同じ傾向がある。また、この地点では、女性の人数が男性よりも多く、東西方向の動きが集中している。これらの人の動きに対して、オープンスペースの位置づけをすることも重要となる。

表2公園整備に対する意見

・公園の整備(ゴミ箱・ベンチ・手洗い・水飲み場)
・ゆったりとできるスペースが少ない・狭い
・きれいな公園・清掃(川、公園)
・中途半端。きちんとした公園
・楽しめるスペースが欲しい
・夜、危険が無いよう、照明を増やす。

図6 目的別による時間帯別利用者人数

図7 商店街街路歩行者人数(15分間平日)

図8 商店街街路歩行者人数(15分間休日)


結論

 康生地区住民の商店街への意識は、余暇空間の充実に対して極めて高く、人との繋がりも求めている。これは、「暮らしの文化」としての地域コミュニティー形成の原動力である。また、商店街内の利用について、現在ある私的空間を駐車場としてだけではなく、歩行者のためのゆとり空間として開放することもコミュニティー形成のための一つの方法と考えられる。その際、車道の一部を時間制等により、商業駐車スペースとして開放する事も可能である。隣接した公園等では、木陰、ベンチやトイレ等の景観の設備を充実させ、岡崎の象徴として市民の意識も高いことから、観光集客拠点としての位置づけとそれに伴う設備が必要である。歴史性を考えた設備配置と、さらにそれらの空間と商店街との回遊性を持たすことで、商店街の活性化に結びつけることが可能と考える。



Copyright(C): 愛知産業大学山田研究室,S.S.I. All right reserved.