康生地区の活性化におけるNPO活動に関する研究

研究の目的

NPO活動の概要と実例

岡崎のボランティア活動及びNPO法人について

アンケート調査と分析

康生地区の活性化のための具体的提案

結論


研究の目的

 都市の活性化の中でボランティア活動の関心は高まりつつある。98年3月に成立したNPO法(特定非営利活動促進法)はそのような社会背景の中で評価できるものではあるが、NPOの先進国である米国と比べれば、日本のNPOをとりまく法律や社会環境は、まだその活動内容から見ても、まだ具現化の域に達していないのが現状である。
 本研究の対象地区である岡崎市康生地区商店街もその例外ではなく、高齢化と空洞化に対する対策の1つとして、このNPO活動の位置付けは重要である。
 本研究では、岡崎市のボランティア活動とNPOの現状と市民の意識を調査し、「まちづくり」の視点でNPOが具体的にはたせる役割を考察し提示することを目的とする。


NPO活動の概要と実例

1.NPO活動の概要
 1995年の阪神・淡路大震災の際に、被災地で約130万人のボランティア団体が災害救助や生活の復旧・復興に活躍したことを契機に広く認められるようになったNPOは、自由度が高く、市民のポジティブな想いを、形にしてゆくことのできる可能性を秘めた民間組織として位置付けられた。さらに非営利活動という特徴をもつ企業とは異なる組織の中で行政セクターが行うべき仕事の一端を担うことができる利点を持っている。

2.NPO活動の運営資金
 活動を行うには、様々な支出、費用が生じる。NPOが活動を行うための収入源は、会費・料金、政府補助金、民間寄付に分けることができる。会費や料金収入は、日本のNPOの収入全体の52%を占め、助成金、交付金、依託調査など補助金は45%であり、民間による寄付は3%を占めるにすぎない。また、米国の場合、利用者負担以外の資金が団体運営の3分の1は必要というのがNPO運営に対する考え方である。

3.NPO活動の実例
 米国における代表的なまちづくりNPOの中にコミュニティ開発法人(CDC)がある。CDCは都市、農村いずれかに対しても、衰退し荒廃するコミュニティの再生を目的に、その地域の中で組織され、そのコミュニティのために中心となって活動している団体である。
 日本では玉川まちづくりハウス(東京都世田谷区)の例代表的である。ここでは市民が主体となって行うまづくりを、まちづくりの専門家や専門的知識を持っている人たちが支援して進めている。活動の一つとして、ワークショップ形式による住民参加によって作られた「ねこじゃらし公園」がある。これは行政と民間が協力してつくった公園の先駈けとして、全国から注目されている。内容として、5回にわたって開催されたワークショップでは、企画案の作成から、模型を使った内容の評価、公園に何を作るか、住民参加の管理協定についてなどの検討が行われた。また、敷地に接する中学校の学生とのワークショップなども行われた。公園オープン後は、参加者による住民組織が形成され、40人近くの地域住民が8つのグループを作り、それぞれが一週間交代で公園を管理運営をする形で世田ヶ谷とタイアップしながら展開している。

表1 ボラントピア岡崎に所属する団体
活動内容 団体数 会員人数
視覚障害者関係 点字・点訳 1 51
朗読・録音 3 52
盲点ガイド 1 50
拡大写本 1 30
聴覚障害関係 手話 3 94
要約筆記 1 23
股体障害関係 車いすガイド 5 165
その他障害関係 7 126
児童保育・青少年育成 児童 2 14
青少年 2 21
施設援助関係 老人施設 9 277
授産施設 5 249
養護施設 6 162
股体障害児施設 2 432
その他 10 214
10 217


岡崎のボランティア活動及びNPO法人について

 岡崎市では昭和61年度より厚生省の指定を受けて、2ヶ年の間に活動の基盤作りの運動を進めていく岡崎社会福祉協議会がある。その中には岡崎のボランティア活動の参加と促進をはかる目的として68のボランティア団体が所属する「ボラントピア岡崎」がある。2177人のボランティアが所属する68の団体の中には同種の活動をしている団体も多々あり(表1)、互いの団体が協調できるようにまとめることが大切である。
 また、岡崎市内でも年々増加する高齢者福祉施設の数に比例して介護するスタッフの増加が求められており、ここでのNPOに対する期待も年々増えている状態である。 
 現在、岡崎では産業界と行政と市民の間にギャップがあり、この問題を情報化という切り口で活性化された米国のシリコンバレーをモデルに「21世紀を創る会・岡崎」という団体を、市長が顧問となり、医師会、婦人会、農協等様々な団体や個人が集結し、いい街を創ろうという目的で、その団体をNPO法人にしようとしている。


アンケート調査と分析

 ボランティア活動に関する調査を康生地区商店街周辺に生活する住民418人と店舗経営者120人に対してアンケート調査を行った結果である。
 図1ではボランティア活動に参加した事がある人は活動経験のない人の3分の1にも満たないことがわかるが、図2では「参加したい」または、「機会があればボランティアに参加したい」という意見が80%を占めており、また図3では「活動内容を良く知らない」、「活動を市民に知らせると良い」という意見が50%を占めていることからボランティア活動状況の情報が行き渡っていない現状が伺える、従ってボランティアに対して関心が低いわけではく、身近に機会がないことによるもので、もっと積極的なボランティア活動の場の提供が必要である。

図1 ボランティア活動の経験(図C-1)

図2 ボランティアに関しての意見(図C-4)

図3 ボランティアに対する関心(図C-3)


康生地区の活性化のための具体的提案
1)康生地区には多数のオープンスペースがあり、そのほとんどが駐車場として利用されているのが現状である。オープンスペースの活用方法として公園などの安らげる場が適していると考えられるが、その公園設備の管理が問題となっている。この解決策として2.1で紹介した「ねこじゃらし公園」を参考に、企画の段階から対象地域周辺の住民に参加をうながし、運営から管理までNPOとして活動する。
2)日本でも最近、高齢者などの情報弱者の問題が議論され始めた。米国ではNPOがこの問題に取り組み、成果を上げつつある。康生地区商店街の空き店鋪を利用してのインフォメーションギャラリーを設置し、その中には岡崎の最新情報、住民の意識調査結果、さらにはボランティア活動の情報までも容易に入手できるギャラリーを設け、その運営管理を地域住民のNPOで行うことで地域との親密性を深める。
3)住空間対策として、現在、社会問題となっている欠陥住宅に対して、すでに第一線を退いた高齢者の専門家を中心としたNPOを結成し対処する。これは現在、若年層の技術者が不足する一方、質の高い高齢者技術者が年令を理由に現役から退かなければならない状況にあることに注目するもので、高齢者をサポートする若者社会という考え方から高齢者層が独自でその社会をサポートする高齢社会への抜本的な改革を求めるものである。


結論

 これらのことから岡崎市康生地区を活性化するためには企業と行政が個々の要求に応えるだけでは限界がある。そこで利益を目的としない個人の責任による自発的な活動を推進するNPO法人の役割が必要となってくる。そのために岡崎で活動しているボランティア団体の意識をさらに高めNPO法人として位置付けることにより活動の拡大と効率を上げることが考えられる。
 そのためには、NPO法人間を調整するNPO法人も重要であり、このような社会構造の変革こそがまちの活性化につながると考える。




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