街情報ステーション

研究の目的

中心市街地の現状と要望

街情報ステーションの方針

実践活動報告

実践活動での評価

結論


研究の目的

 前年度同研究室で行った、岡崎市康生地区における調査研究において、市民からの声を直接行政や商店街に反映されていくようなシステムの構築が要望されていることが明示された。
 そこで本研究では、商店街、商工会議所、市役所との共同により岡崎市中心市街地を主対象とした地域振興活性化事業の一環として、実際に岡崎市康生通り2丁目43番地(図1)に、「街情報ステーション(中心市街地活性化支援施設)」を設立し、様々な地域活性事業関連団体と関わり合いながら、街情報ステーションの管理運営の方法を具体的に提案、実践する中で、その役割について検証することを目的とする。

図1 街情報ステーション位置図


中心市街地の現状と要望

岡崎市中心市街地の活性化を妨げている要因として、次のようなものがある。
・まちづくりにおける特色ある具体的戦略不足
・地区の文化資源が十分に活用されていない
・既成市街地内での人口空洞化と商業立地の空洞化
・来街、集客のための利便性の低下
・消費者ニーズへの対応不足による中心市街地支持低下
・高齢社会に対する対策不足


このような問題を解消し、中心市街地が活性化するための街情報ステーションへの要望として以下の項目があげらる。
・まちづくりにおける特色ある具体的戦略不足
・中心市街地内の特性・文化資源の情報提供
・活性化による都市のにぎわいづくりの発信
・情報化による都市発展戦略の拠点
・個性豊かな人材の育成の呼びかけ
・高齢社会への対応に関する情報発信


街情報ステーションの方針

 活動対象エリアは岡崎市中心市街地とし、そこを日常生活圏としている住民、商店街に店を持つ商業者、そして市内外から商店街を訪れる人々に対して様々な情報サービスを行う場として街情報ステーションを位置づける。
 街情報ステーションにおける必要機能は、研究部門、情報発信部門、地域交流部門及び高齢者サポート部門の4つが考えられる。
 研究部門は地域振興活性化事業に関する産・官・学共同研究の場とし、情報発信部門は産・官・学の計画をリアルタイムで公開し、住民がその地域で何が行われているかを自由に、気軽に知ることのできる情報公開の場とする。地域交流部門については、従来行われてきたような行政主体の街づくりの難しさを考慮し、街情報ステーションが窓口となり、行政と住民双方の考え方や意見を話し合うことのできる場とする。そして、高齢者サポート部門では高齢者の雇用や生き甲斐喪失の対策を提案、実践していく場とする。
 各部門での具体的な活動を提案したものが以下の項目である。

研究部門
・バリアフリー具現化研究
・駐車スペースの有効利用研究
・商品宅配システム研究(バーチャルモールや有店舗仮想商店街や商品宅配システムの研究)
・街づくり勉強会
情報発信部門
・展示(実際に行われている計画の進捗状況を随時視覚的に展示する)
・商店及び商店街情報の発信(インターネットによる情報の受発信)
・機関誌発行(街情報ステーションで行われる全ての事業についてまとめて、定期的に発行する。)
地域交流部門
・インターネット教室
・空き店舗情報サポート
・街のリーダー育成
・商店街セミナー
高齢者サポート部門
・NPOの活動サポート


実践活動報告

街情報ステーションの活動内容の提案にもとづき、実践化されたものは以下の事業であり、ステーションの来訪者は図2が示すとおりである。
・インターネット無料使用
・空き店舗情報発信
・歴史・観光情報発信
・インターネット教室
・各種セミナー開催(新商品開発、まちづくり、商店主)
・中心市街地バリアフリー研究会
・まちの魅力提案コンテスト
・商品情報センター

図2 来場者の割合

 上記の実践活動の内、本研究として関わった事業は、商品情報センター、まちの魅力提案コンテスト企画提案、中心市街地バリアフリー研究会、前年度研究分の情報公開及び情報ステーションのスタッフとして店頭に立っての展示物の説明である。


実践活動での評価

 インターネット教室は、開催時から人気があり、商店街に店を持つ商業者を中心に、子供から高齢者までの参加があった。商業者の情報化に対する意識の高さが見受けられ、インターネット無料使用による情報の発信と併せて、情報化による都市発展の第一歩となる試みであったと言える。
商店主や商店街を対象とした各種セミナーの開催は、交流の機会を増やし、刺激し合いながらやる気を高める場となり、TMO設立に向けた、街づくりに対する民間サイドの積極的な取り組みを促進することが出来た。

 中心市街地バリアフリー研究会では、東康生通りから伝馬通りまでの歩面の調査、商店の駐車場のバリアフリー対応、店舗内のバリアフリー対応、照明の度合いなどを調査し、街路全体に対する複合的な提案を行った。単なる歩面整備の提案にとどまらず、より実現性の高いものとなった。

 まちの魅力提案コンテストは、市民に対して中心市街地の建物・場所・店・公園・ストリートファニチャー・歩道などを利用して、アイデアや工夫を加え、「魅力ある街」となるような提案を募集したところ、134作品もの応募があり、大変な盛り上がりを見せた。応募作品全体を通して、中心市街地を真剣に考えていることが伺え、特に入賞作品は二七市や岡崎の歴史を取り入れる等、岡崎の中心市街地らしさが出ているものとなった。134作品に関わる応募者全員が中心市街地を訪れ、その現状を見て、中心市街地を真剣に考える機会を与えることが出来たことはたいへんな成功と言える。

 商品情報センターは、康生町商店街、籠田商店街、伝馬通商店街の内の25店舗について、商店主と若者の調査者で店のおすすめ商品の選出を行い、20才前後の若者に対してその商品についてのアンケートを実施し、店の一品の選出とその商品の購買力に結びつく魅力について調査した。その結果から、商店主と特に若い消費者との間の商品に対する感覚の差異が見らたことから、商品の対象年齢層を明確にする必要性を示唆している。各年齢層に適した今後の商品や商品販売システムの開発に対して明確な方向性を示すことが出来た。

 実践活動を行ってきた中での問題点は、中心市街地の高齢化が顕著に現れているにも関わらず、高齢者の来訪者数が非常に少ないことである。その要因は、情報発信の方法がインターネットによるものに偏っているため、高齢者への対応が成されていない情況によるものと考えられる。他の媒体による情報公開を含め、高齢者に必要な内容を充実させると共に、若者、高齢者どちらにも偏らず、誰もが自由に情報を受発信できる場所であることが街情報ステーションの本来的役割と考える。また、市役所、病院、シルバー人材センター等と連携体制を整え、情報による生活サポート機能を充実させ、生き甲斐喪失や雇用問題の対策にも役立てる事が重要である。
また、事業全体を通して単年度の事業として予算が組まれていて、継続的に事業を行えない可能性があることは、現段階での最大の問題と言える。


結論

 以上のことから街情報ステーションの役割とは、継続的に研究、情報の受発信、地域交流、及び高齢者サポートを行い、誰もが気軽に使うことのできる情報サービス施設であり、住民と関連団体へのパイプとなることである。また、そのような活動を行っていくことで、中心市街地に人を集めるとともに、商店街や商業者自身のやる気を高め、住民自らが率先して地域の交流を持ちながら街づくりに参加できるようにし、中心市街地全体の活性化を促すものである。
 本研究として関わった事業を含め、実践された事業については、大きな成果が上がったといえる。しかし、実践された事業に偏りが見られるため、本来の役割が発揮されない情況になっている。これを踏まえ今後の事業を展開する必要があると考える。



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