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大川戸登山口駐車場(707〜713)→尾根コース・沢コース分岐点(729)→沢コースのルートとなる沢との出合い(730)→清滝分岐(739)→清滝(747)→清滝分岐(754)→足尾山山頂(821〜831)→御嶽山山頂(848〜852)→足尾山尾根コース合流点(859)→峠(917)→猪ころげ坂(937)→雨巻山沢コース合流点(1014)→雨巻山山頂(1019〜1039)→雨巻山尾根コース合流点(1051)→栗生・雨巻山沢コース合流点(1103)→大川戸分岐(1112)→栗生・三登谷山展望コース合流点(1129)→三登谷山山頂(1136〜1143)→林道(1217)→駐車場(1221) |
観測史上最高気温を記録した猛暑、頻発する台風の襲来、おまけに大地震。惨澹たる夏もどうやら終演を迎えそうである。ようやく家から飛び出して山に行ってみる気になった。行く先は栃木県百名山の一つ・雨巻山である。雨巻山を頂点とする馬蹄型の山稜によく整備されたハイキングコースが開かれているらしい。数ヶ月前にこのコースを発見し、2万5千図を買い揃えて踏破すべく準備を整えたのだが、天候不順が続き、今日に至るまで果たせずにいた。ようやく天気予報が「明日は一日晴天、絶好のお出かけ日和」と告げている。
朝5時13分、車で出発する。夜は既に薄らと明けているが、期待に反して空は厚く雲に覆われている。東北自動車道、北関東自動車道を経て真岡インターチェンジで降りる。ここから先はカーナビ任せ、陶器窯の並ぶ益子町中心部を抜け、7時7分、目的とした登山者用駐車場に着いた。自宅から103キロ、1時間54分のドライブであった。 駐車場は広大で約50台も駐車可能、隅にはトイレも設置されている。おまけに片隅に木箱が設置されていて、中に、雨巻山およびその周辺の山々のハイキングマップが置かれている。自由にお持ちくださいとの地元・益子町の好意である。何たる親切、感謝感激である。早朝のためか広大な駐車場に駐車している車はほんの2〜3台であった。 支度を整え、いざ出発。今日の登山計画は「馬蹄形山稜に囲まれた真中に位置するこの駐車場から、まず馬蹄形の左(東)に位置する足尾山に登る。そこから尾根を南に縦走し、御嶽山を経て、馬蹄形最奥に位置する雨巻山に達する。さらにそこからUターンして北へ稜線を辿り、馬蹄形の右(西)に位置する三登谷山に達する。そして出発点の駐車場に下山する」というものである。 道標に従い「茶屋雨巻」の裏手より山中に踏み込む。まず目指すのは足尾山である。空は、ところどころに切れ目はあるものの、一面雲に覆われている。小さな沢に沿ってしばらく進んだ後、右手山稜めがけて急登となる。登りついた小尾根が足尾山への尾根コースと沢コースの分岐点であった。 道標があり、この小尾根を上部に向かって登っていく踏み跡を「尾根コース」、尾根を反対側に下る踏み跡を「沢コース」と示している。私は沢コースを選択する。沢コースは直接目指す足尾山に登り上げるのに対し尾根コースは足尾山の一つ南のピーク御嶽山の南の肩に登り上げている。従って御嶽山から足尾山をピストンしなければならなくなる。立ち止まっていたら若者が一人登ってきて、一言挨拶をして尾根コースを進んでいった。彼とはこの先、後になり先になり行動を共にすることになる。 小尾根を反対側に下ると、小さな沢に下りつく。道標がこの沢に沿って奥へ進む踏み跡を「足尾山」と示している。左岸ぞいにしばらく進み、飛び石を利用して右岸に移る。よく踏まれた小道で不安は全くない。ただし人の気配は皆無である。10分も進むと道標があり、右に分かれる小さな流れの奥を「清滝」と示している。たいした滝があるとも思えぬが、事のついでに行ってみることにする。足を濡らすこともなく8分程小流を遡ると目指す清滝があった。ただし、滝と呼ぶのはちょっとおこがましい。岩の割れ目を小さな水流が流れ下っているに過ぎない。 分岐に戻り本谷をさらに遡行する。谷は狭まり傾斜も増す。やがてナメ滝状の地形となった。右岸沿いに張られたロープを頼りに慎重に滝を登る。滑りやすいが水量は少なく靴を濡らすこともない。谷を離れて急な斜面をジグザグを切って登り詰めると、そこが目指す足尾山413.1メートルの頂きであった。周りを自然林に囲まれ展望はない。いたって静かな頂きである。 どっこいしょと荷物を降ろした瞬間、何と、先程尾根コースと沢コースの分岐点で別れた若者が反対側から登ってきたではないか。彼は尾根コース経由、私は沢コース経由、到着がびったり重なった。おかげで登頂証拠写真シャッターを押してもらうのにちょうどよかった。彼は休むことなく御嶽山方向に戻っていった。私は座り込んで持参のコンビニおにぎりを頬張る。ここまで朝から何も食べずに登ってきた。 ところで、この足尾山の標高である。国土地理院の2万5千図には山名の記載はあるが標高の記載はない。山頂は410メートルの等高線に小さく囲まれているだけである。従って読み取れる標高は410メートル以上420メートル未満である。しかるに今朝頂戴した益子町発行のガイドマップおよび山頂表示板には413.1メートルとメートル以下の数値まで記されている。この標高はいったいどこで得られたのだろう。 10分ほどの休憩の後、次のピーク御嶽山を目指す。いったん下ると、御嶽山への岩場の急登となる。少々厳しい岩場である。持参のストックが邪魔で仕方がない。足尾山から17分で御嶽山山頂に達した。山頂では何と、先ほどの若者が私の到着を待っていてくれた。再び私のカメラのシャッターを押してもらう。彼はすぐに雨巻山を目指して出発していった。山頂は東に展望が開けている。巨大な送電鉄塔の列が地平線に向かって延びているのが印象的であった。 4分ほどの休憩で、私もすぐに雨巻山へ向け出発する。緩く下ると、登ってくる単独行の女性とすれ違った。足尾山尾根コースを登ってきたのだろう。すぐに右より足尾山尾根コースが合流する。幾つかの小ピークを越えながら稜線を進む。周りはどこまでもコナラやクヌギの自然林で、中にブナが混じる。人工林が一切ないのが気持ちがよい。ただし展望はいっさい開けない。単独行の妙齢の女性とすれ違った。この時間にこの場所ですれ違うとはどんなルートを辿っているのだろう。ちょっと不思議だ。 御嶽山から25分で小鞍部である「峠」に到着した。右より峠コースが登ってくる。そのまま通過し、緩やかな上下をくり返しながら稜線を進む。「峠」から20分も歩くと、ついに「猪転げ坂(ししころげさか)」に到達した。このコース最大の難所といわれる急な長い登り坂である。覚悟をきめて一歩一歩急登に挑む。丸太で階段状の整備されており思いのほか登りやすい。どうと言うこともなく10分少々で登り切る。登り上げた小ピークにはベンチが一つ設置されていた。 いよいよ雨巻山への本格的な登りが始まる。登り下りをくり返しながら次第に高度を上げていく。相変わらず樹林の中で視界は一切ない。空は相変わらず雲に覆われ、時折薄日が差す程度である。年配の男性に抜かれた。今日初めての追い抜かれである。そんなに私の歩みが遅いとも思えないのだが。雨巻山沢コースが合流した。山頂はもうすぐである。人かげが急に濃くなり、何組かのパーティとすれ違う。前方上空から人声がしてきて、ついに雨巻山山頂に飛び出した。 山頂は533.25メートルの三等三角点「雨巻」を中心に小広く開けた平坦地で、幾つものベンチとテーブルが設置されている。既に数組の登山者でにぎわっている。中に、足尾山、御嶽山で出会った若者を見つけた。ガスコンロを炊いて食事の準備中であったが、目があうと飛んできて三度目のカメラのシャッターを押してくれた。もはや顔見知りである。 山頂はブナ林に覆われているが東に展望が開けている。仏頂山方面が見えていると思われるが、初めての山域であり同定はできない。私もベンチに座り握り飯を頬張る。次々とパーティが到着して山頂は賑やかである。 山頂の道標が南に向かう踏み跡を「栗生尾根コース、展望塔」と指し示している。すぐ近くの様子なので展望塔まで行ってみることにする。荷物を山頂にデポして尾根を2〜3分辿ると樹林の中に立つ櫓が現れた。登ってみると南に視界が得られ、筑波山が霞んで見えた。満足して山頂に引き返す。 いよいよ今日最後のピーク・三登谷山を目指して出発する。時刻はまだ10時半ちょっと過ぎ、昼過ぎには下山できそうである。すぐに踏み跡が分かれそれぞれに「岩の道」「階段の道」と示されている。どうやら小岩峰を巻くか乗っ越すかの違いらしい。安全を考慮して「階段の道」を選ぶ。 変化のない樹林の中の尾根道が続く。雨巻山尾根コース合流点、続いて栗生・雨巻山沢コース合流点を過ぎる。突然左手に展望が開けた。ただし、だだっ広い関東平野の広がりが霞んでいるだけである。視界がよければ日光連山が見えるとの事だが。さらに変化のない尾根道を進む。突然人の気配に振り向くと、あの若者が追い付いてきた。雨巻山山頂を私が先に出発したのだがーーー。「山頂で待ってますよ」と一声かけて飛ぶように視界から消えていった。栗生・三登谷山展望コース合流点に達した。南側に大きく展望が開けている。ただし山岳同定は全くできない。三登谷山はもう目の前である。 11時36分、今日最後の山・三登谷山山頂に達した。樹林の中の小さな頂きである。ベンチとテーブルが一組設置されている。約束通り、あの若者が待っていてくれた。そして、例のごとく私の記念写真のシャッターをひと押しすると、「もう会えないですね」の言葉を残し、走るように下っていった。山頂は北西方向に大きく視界が開けている。眼下の高館山は分かるがあとは同定できない。視界がよければ日光連山が見えるのだがーー。 11時43分、下山に移る。もはやスタート地点の大川戸の駐車場まで一本道である。樹林の中の確りした小道をグイグイ下る。この時間でも登ってくるパーティと幾つか出会う。下るに従い、今日初めて杉檜の人工林が現れた。この山域はどこまでも自然林の中で気持ちがよかったのだがーーー。12時21分、ついに我が愛車の待つ駐車場に到着した。広い駐車場も既に満車でった。あの若者の姿を求めてみたが、見つけることはできなかった。
登りついた頂き
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