楞厳寺から仏頂山、高峯へ

登山道は凄まじい階段の連続

 

2020年2月11日


 
 高峯山頂
 仏頂山山頂
                            
楞厳寺駐車場(722~730)→仏頂山山頂(847~858)→奈良駄峠(949)→南飯田分岐(1017~1022)→高峯山頂(1058~1117)→奈良駄峠(1153)→仏頂山山頂(1256~1301)→楞厳寺駐車場(1341)

 
 この冬は記録的な暖冬である。天気予報は今日成人の日も一日中穏やかな晴天が続くと告げている。ならば、久しぶりに山にでも行ってみるか。考えた末、茨城県と栃木県の県境、焼き物で有名な笠間市の奥に位置する仏頂山から高峯に行ってみることにした。一昨年登った雨巻山と尾根続きの山である。高峯は栃木百名山にも名を列ねている。ただし、この山域は恐ろしく交通の便が悪い。車で行かざるを得ず、しかも、下山は同じ道を出発地点に引き返しざるを得ない。すなわち、麓の楞厳寺を出発し、仏頂山、高峯と縦走した後、元のルートを引き返すことになる。
 
 早朝5時22分、家を出る。まだ夜は明けていない。羽生インターから東北自動車道に乗り、栃木都賀ジャンクションから北関東自動車道に入る。ちょうど昇って来た朝日が、真正面から光を水平照射する。眩しくて仕方がない。笠間西インターで降り、カーナビに導かれて細道を山裾に進む。7時22分、目的地である楞厳寺の駐車場に到着した。家からの走行距離は119.5キロであった。駐車場はひっそりとし他に車も人影も見えない。山裾斜面の一段上にはなんとも風情のある寺が佇む。帰りにお参りして行こう。

 支度を整え、道標に導かれて仏頂山への登山道を進む。確りした小道が緩やかな登りとなって山中に続いている。辺りは静寂そのもので人の気配は全くない。木々の間から見上げる空は雲一つなく快晴である。現れる小さな登りには必ず丸太の階段が整備されている。事前に調べたルート解説によると今日のルートは階段、階段、また階段のルートらしい。雑然とした林の中の道を20分も辿ると支尾根に登り上げた。

 支尾根に沿って登る。幾らか急な長めの階段の登りが現れるようになる。しかし、まだ出発したばかり、足どりは快調である。小ピークに登り上げた。前方、木々の間越しに仏頂山と思われるピークが見える。まだまだ距離がありそうである。

 長く急勾配の階段が現れた。今度は少々息が切れる。これを登りあげれば仏頂山山頂との期待が膨らむ。しかし、そんなに甘くはない。登り上げたピークは何の変哲もない小ピークであった。山頂はまだまだ先きのようだ。

 目の前に天をつくような長大な、かつ極めて急峻な階段が現れた。見上げる階段の先きは樹木の彼方に消えている。登山道としてこれほど長大にして急峻な階段道は出会ったことがない。これを登れと言うのか。戦慄が全身を覆う。しかし登らなければならない。側に標示があり「勾配54%(28°)」と記載されている。設置されている手摺にしがみつくようにして、一歩一歩身体を引き上げる。時々立ち止まり息をつく。

 しばしの後、ついに、目指す山頂に登り上げた。山頂は樹木の中で展望はなく、テーブルとベンチが設置されているだけである。もちろん人影はない。意外にも、山頂標示はなく、ただ道標が設置されているだけである。傍らに三等三角点「仏頂 430.83m」が確認できる。持参の握り飯を頬張り一息つく。

 10分ほどの休憩の後、次の目的地・高峯に向け出発する。しかし、山頂から下りに入る地点で足がはたと止まった。見下ろすと、長大な階段道が視界の彼方まで続いている。傾斜は先ほどの登りルート程ではないが、その長さは匹敵しそうだ。さしあたり、下ることはなんら問題ない。ただし、帰りにこの長い長い階段を登らなければならないのだ。そう思うと気が重い。

 階段を下りきり、少し進むと、右側が伐採されていて、初めて展望が開けた。はるか彼方に雪をかぶった高嶺の山並が幽かに見え、すぐ目の前には近郊の低山の連なりが見える。おそらく雨巻山辺りが見えていると思われるが、この辺りの山々はなじみが薄いため同定できない。ただし遠くに霞む雪山は日光の男体山と女峰山で間違いない。形から判別できる。

 高峯を目指してさらに進む。相変わらず人の気配は全くない。短い急な登り下りが頻繁に現れる。いずれも階段道となっている。仏頂山と高峯の最低鞍部の標高は約320メートル程度であり、仏頂山の標高430メートると比べると約100メートル下ることになる。ルートは幾つもの小ピークを越えて行く。登りの階段が現れる度にため息が出る。

 短いが、急傾斜の階段道を手摺で身体を確保しながら下ると、そこが奈良駄峠であった。仏頂山と高峯の最低鞍部である。南側の桜川市池亀からと、北側の茂木町上小貫からと登山道が登ってきており、縦走路と交差して十字路となっている。そのまま通過して先きを急ぐ。さらに短い急な登り降りを経て20分も進むと南飯田分岐に達した。「仏頂山2.0km 高峯1.2km」との道標が立っている。

 さらに30分、もがき苦しむと10時58分、ついに高峯山頂に到着した。山頂はほぼ平坦な広がりでベンチとテーブルが設置されている。周りを雑木が覆い展望は得られない。この山頂も仏頂山と同様に山頂標示はない。私製の小さな標示が木にぶら下がっているだけである。何となく寂しい。代わりに立派な道標があり、「県道2.0k   仏頂山3.2k」と標示している。その足下には二等三角点「池亀」519.61mが確認できる。

 あわよくば、この先さらに進んで雨巻山まで行くとの野望を抱いていたが、体力的にも時間的にも到底無理、おとなしくここから来た道を引き返すことにする。のんびりと握り飯を頬張っていたら 何と! 人声がして反対方面から歳の頃50前後の女性二人連れが現れたではないか。今日山中で初めて出会う人間である。相手も私を今日初めて出会った人間だといっている。池亀集落の五大力堂から登って来たとのことである。彼女達は山頂で休むこともなく奈良駄峠方面に去って行った。と思ったら、何と、新たに一人の若者が私と同じ方向からやってきた。聞けば、私と全く同じルートと歩いている。「駐車場に1台だけ車が停まっていました。あなたの車でしたか」と笑っている。

 10時58分、コンロを炊いて食事の準備を始めた彼を残して帰路に出発する。どうせ途中で抜かれるだろうが。奈良駄峠までは基本的には下り、登りの時より36分早く到着した。ここからはいよいよ登りが基本となる。行きに辿った幾つもの急な階段道が頭に浮かび少々憂鬱である。峠を出発しようとしたら何と、先ほどの若者がもう追い付いてきたではないか。彼を先きに行かせる。急斜面の階段を飛ぶように登り、あっという間に視界から消えて行った。残念ながら若さにはかなわない。

 幾つもの急な階段道を登る。もはや連続しては登れない。一歩一歩、一段一段、ゆっくりながら、それでも休むことなく前進を続ける。ついに仏頂山直下の長い長い階段の登り口に到着した。見上げる先きに長大な階段が上部に向かって果てしなく延びている。やるっきゃない。覚悟を決めて階段に挑む。思いのほかスムーズに登れる。まだ余力があるようだ。ついに登りきった。やれやれである。もうこの先、大きな登りはない。ほっとして備え付けのベンチに腰を降ろす。

 休憩5分。今日最後の行程に出発する。登りに恐怖さえ感じた凄まじい階段の上部に立った。今度は下りであり体力的な不安はないが、この凄まじい角度の傾斜は恐怖を覚える。手摺にしがみつきながら一歩一歩足を運ぶ。もし、足を踏み外したら、一気に下まで転げ落ちること必至である。途中まで下ると、何と、若い男女が登ってきたではないか。いったいこの時間にどこまで行くつもりなのだろう。

 何とか無事に超危険な階段道を下りきった。後は終点の楞厳寺の駐車場まで緩やかな尾根道を下るだけだ。足早に支尾根上の登山道を急ぐ、もはや気にする程の登り下りはないはずだ。ところが、いいかげん下ったところで不安が湧いてきた。この道は間違っていないだろうか。既ににかなり歩いたのに、見覚えのある地点が現れない。ルートを間違っていなければよいが。不安を感じながらしばらく歩くと、楞厳寺を示す道標が現れた。やれやれ、不安は杞憂であった。

 13時41分無事に愛車に下りついた。

      

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