足利市郊外 大小山から大坊山へ縦走

低山なれど、歩きでのある岩尾根を長駆縦走

2005年4月17日

                 
大坊山手前より大小山を望む
 
両毛線富田駅(805)→ 養老碑(830)→ 阿夫利神社(840〜850)→ 仙間神社(900)→ 見晴らし台(910〜920)→ 大天狗の頭(925〜930)→ 大小山・妙義山山頂(935〜950)→ 鷹巣分岐(1005)→ 280mピーク(1020〜1025)→ 越床峠(1055〜1110)→ ベンチのあるピーク(1140〜1145)→ 尾根分岐ピーク(1150)→ 大坊山山頂(1200〜1210)→ 尾根分岐ピーク(1220)→ 展望ピーク(1235)→見晴らし台(1250〜1300)→ 林道終点(1325)→ 車道横断(1335)→ 浅間神社ピーク(1345〜1350)→ 長林寺(1410)→県道(1415)→足利市駅(1510)

 
 足利市は関東平野北限に位置する都市である。背後に迫る北関東の山並みは、いくつもの好ハイキングコースを提供してくれる。大小山や大坊山もそれらの一つである。いずれも標高わずか300メートル前後の低山であるが、大小山は栃木100名山にも選ばれた地元では名の知れた山である。ただし、低山だけに1時間もあれば登れてしまうため、わざわざ出かけて行くにはちょっと躊躇する。地図を眺めると、大小山と大坊山は越床峠を真ん中にしてU字型の尾根で結ばれている。この尾根を辿ればちょうど1日の行程になりそうである。案内書の類いが無いので尾根の状況はよく分からないが、低山だけに踏跡はあるだろう。

 ちょうど8時、両毛線の富田駅に降りる。跨線橋の上から北を眺めると、山頂直下に「大小」と大きな看板を掲げた山が目に飛び込む。これから向う大小山である。街中の細道を進む。かなり分かりにくい道だが、辻辻に大小山登山口を示す道標がしっかり建てられていて心配はない。交通量の多い県道にでると、目印となる三柱神社が、山を背に鎮座していた。市長選挙が今日から始まるらしく、神社では出陣式が行われていた。山裾に沿って、里道を進む。道端にはタンポポやスミレが咲き誇り、春満開である。今日は1日穏やかな晴天が約束されている。しかし、春霞が濃く、視界は余りよくない。行く手に優雅な形の実に格好いい山が見える。地図で確認してみると、大小山から東に続く尾根上の159.0メートル三角点峰、地図に山名の記載はない。山肌は煙るような新緑に覆われ、なかにピンクの桜が混じる。

 養老碑を過ぎ、緩やかに登っていくと、登山口となる阿夫利神社に達した。駅から35分の道のりであった。神社前の駐車スペースには10数台の車が止まり、多くの登山者が既に入山している模様である。ベンチに腰掛け朝食の稲荷寿司を頬張る。頭上から盛りを過ぎた桜の花びらが降り注ぐ。ここから登山道は2本ある。1本は大岩を経由して大小山の主峰・妙義山に直接登り上げるルート。もう1本は、大小山の本峰・大天狗ノ頭を経由して妙義山に達するルートである。後者を選択する。

 杉木立の中を小沢沿いに登ると、男坂・女坂が分岐する。当然男坂を選択する。石段となった小道を登ると小さな社の前に出た。「大小山仙間神社」「大小山祈祷道場」との石碑が立ち並んでいる。ここから激しい岩場の急登となった。久しぶりの山行のためか、どうも体調が余りよくない。心臓がぱくぱく言う。後から来た若者にあっという間に抜かれてしまった。女坂ルートと合流すると、その上の絶壁の中腹に四阿があり、「見晴らし台」と標示されている。ひと休みする。眼下に展望が開け、関東平野が春霞の中に煙っている。この四阿のすぐ上に、駅から眺められた「大小」の大文字が掲げられている。

 鉄梯で絶壁を抜け、ひと登りすると、そこが大天狗ノ頭とも呼ばれる一峰の山頂であった。360度の大展望が開ける。標示はこの頂きを大小山山頂としている。ただし、すぐ北側に最高峰である妙義山ピークが覆いかぶさるように聳え立っている。西側には谷を挟んで大坊山がそそり立っている。小休止の後、妙義山ピークに向う。わずか5分の急登で山頂に達した。313.9メートル三角点の設置された狭い頂きで、ここも360度の大展望が得られる。これから辿るU字型の稜線がいくつものピークを連ねて、大坊山へと続いている。標高わずか200〜300メートルの山稜とは思えない迫力である。見渡す山肌は薄緑色に煙り、その中に点々と山桜の淡いピンクが混じる。何とも美しい。山頂には子供二人を連れた夫婦と二人の単独行者が休んでいた。

 小休止の後、いよいよ縦走に移る。山頂には「越床峠」を示す道標も有り、踏み込んだ稜線上にもしっかりした登山道が開かれていた。ルートに心配はなさそうである。岩稜を下る。一峰に達すると、鷹巣集落を示す踏跡が左に下っている。稜線は狭い岩稜で樹木はなくツツジなどの潅木がまばらに生えているだけである。それだけに展望が実によい。ただし足下はかなり注意が必要である。次の一峰を越えると稜線はナイフリッジとなり途切れた。左側から危なっかしく捲き、取り付けられたザイルを頼りに稜線に戻る。足下を埋めるヤマツツジがちょうど見ごろで、レンガ色の花が目に優しい。

 妙義山から三峰目に当たる280メートル峰でひと休みする。この山頂も実に展望がよい。辿ってきた稜線が一望できる。縦走路に入ってから人影がまったく消えた。次の一峰で稜線は向きを北から西に変え一気に越床峠に下る。ここで縦走路に入って初めて単独行者とすれ違う。急坂をぐんぐん下ると、越床峠に達した。樹林に覆われた暗い小さな鞍部である。上部が半分失われた石柱がある。ここまで妙義山から1時間、快調な足取りである。座り込んで昼食とする。反対側から4人パーティが下ってきた。

 いよいよ縦走の後半に移る。樹林の中の急登に挑む。足裏をまともに置けないほどの急斜面である。1人が足裏を滑らしながら下ってくる。稜線直下に達すると、捲き道となった。上部のピークは西側のゴルフ場開発により稜線直下まで削り取られている。このためルートが付け替えられたと見える。緩やかに斜登すると稜線に達し、すぐに小さな岩峰に登り着いた。地図上の254メートル標高点ピークである。実に展望がよく、ベンチも設置されている。ひと休みしながら展望に見入る。谷を挟んだ向う側には大小山から越床峠に続く辿り来し稜線が連なり、行く手には、これから向う大坊山が形のよい山容を聳え立たせている。振り向くと、開けた平地の向こうに一筋の山稜がうっすらと見える。昨年の1月に辿った行道山から両崖山へ続く山稜である。視界のよい冬ならば足尾や日光連山の景色がさぞ素晴らしいであろう。

 小さな上下を繰り返しながら岩稜を進む。相変わらずヤマツツジが至る所に咲き誇っている。下界からは選挙運動のマイクの音声が聞こえる。大坊山一つ手前の270メートルピークに達する。このピークはジャンクションピークとなっていて西に稜線が分かれ、その尾根道を道標が「長林寺」と示している。今日下山路として予定しているルートである。従って、ここから大坊山を往復することになる。大きく下って、岩道を登り返す。かなり疲れを覚える。ゆっくりゆっくり登る。ちょうど12時、山頂に達した。

 山頂は意外な景色であった。広大な平坦地となっていて、小さな祠や板碑が建てられている。広場の真ん中には「大坊山」との馬鹿でかい山頂標示がある。以前には大きな社があった気配である。真昼の太陽の日差しが暑い。木陰に座り込んで握り飯をほお張る。子供二人を連れた夫婦連れがやって来て隣でお弁当を開いた。
 一瞬、ここから下ろうかとも思ったが、思い返して縦走をさらに続けることにする。重い腰を上げて、270メートルジャンクションピークに戻る。今日も足回りはジョギングシューズである。このためか爪先が痛みだす。西に延びる稜線に入る。いったん下って小ピークに登り上げると、そこは展望ピークとなっていてベンチが設置されていた。ただし数人の団体が占領していたのでそのまま通過する。やがて稜線は西から南に向きを変える。

 顕著なピークに達する。地図上の220メートル峰である。展望台となっていて、「富士山」「赤城山」「日光連山」と矢印が3方向を示しているが、今日はすべて春霞みの彼方である。次のピークとの鞍部に達すると右に捲き道が分かれ、そちらを「初心者コース」、尾根上の道を「健脚者コース」と示している。単に「捲き道」と標示されていれば、捲き道を選ぶのだが、初心者コーストの標示には抵抗を覚える。やせ我慢して尾根上を進む。登り上げたピークは痩せた岩峰で展望は素晴らしい。鞍部で初心者コースを合わせ、さらに縦走路を進む。続いてきた展望の尾根道は終わり、樹林の中に入る。ベンチのある小峰でひと休みする。

 ここからルートは稜線を離れて、樹林の中の急な下りとなった。すぐに踏跡は2分し、一方を「健脚コース」と示している。意地になって、健脚コースを選択する。すぐ後を下ってきたアベックは「初心者コース」を下っていった。ひとしきり急坂を下ると、初心者コースを合わせ、細い林道にでた。爪先がますます傷み、歩くのが苦痛になる。10分ほど平坦な林道を進むと、立派な車道を横切る。またもや踏跡は2分し、「初心者コース」と「健脚コース」と標示されている。なんで「一般コース」「健脚コース」と標示しないのだ。何とも意地が悪い。健脚コースは鎖場を経て、再び稜線に登り上げていく。もういい加減くたくたである。登り上げた小ピークには浅間神社と標示された小さな祠が祀られていた。地図上の130メートルピークである。座り込んで水をがぶ飲みする。足もそろそろ限界である。

 痛む足を引きずり、のろのろと下る。道了尊と標示のある改修中の建物を過ぎると、しっかりした道となる。さらに下ると、ようやく長林寺に下り着いた。無事の下山である。長林寺は曹洞宗のなかなか立派な寺である。人影のない境内には禅寺特有の凛とした空気が流れている。集落内の道を5分も進むと、車の往来の激しい県道にでた。ここに足利市営バスの「上宮先」バス停があるのだが、次のバスは2時間も先、足利市内まで歩かざるを得ない。

 足を引きずり、県道をひたすら歩く。1時間歩いて、ようやく足利市駅に辿り着いた。今日も本当によく歩いた。満足といえば満足である。

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