栃木100名山の小峰 二股山

ついに生涯800座の頂きを踏破  万歳!

2018年6月22日


 
 麓より望む二股山
  二股山北峰山頂より古賀志山を望む
                            
下沢登山口駐車場(704〜733)→沢ルートと尾根ルートの分岐点(738)→山ノ神(742)→休憩場所(811〜815)→支尾根に登り上げる(824)→加園ルート合流点(850〜855)→展望地(903〜908)→南峰山頂(913〜927)→北峰山頂(942〜948)→上坪・北風ヶ沢林道分岐(955)→つつじ平(1007〜1015)→城跡入り口(1028)→322メートル地点(1033)→不動岩(1036)→368メートルの城跡(1043)→尾根ルート・沢ルート分岐点(1100)→下沢口登山道入り口の駐車場(1104)

 
 家族とともに歩いた幼少の頃の思いでは別として、私が自分の意志で登った最初の山は尾瀬の燧ヶ岳である。1963年6月8日、私19才の初夏であった。以来55年、今年の4月21日に奥多摩の鹿倉山に登り、踏み締めた山頂の数は799座となった。次は800座目、区切りの山頂である。本来なら、未登の憧れの山、例えば屋久島の宮之浦岳あたりに記念登頂したいのだが、もはや体力的に無理である。

 どこか適当な山はないものかーーー。偶然手にした日本山岳ガイド編「日本百低山」なる小冊子に「二股山」が紹介されているのを見つけた。栃木県鹿沼市郊外の標高569.8メートルの低山である。調べてみると、この山は「栃木百名山」にも選ばれている。標準登頂時間は登り1時間30分。この山なら我が体力を持ってしても容易に登れそうである。

 早朝5時22分、車で家を出る。天気予報によると、今日一日梅雨の晴れ間が期待できる。すでに夜は完全に明けており、朝の光が眩しい。昨日は冬至であった。我が家の玄関軒下に造られた燕の巣の中で、数尾の雛が盛んに鳴き声をあげ羽ばたきをしている。今日にでも巣立ちを迎えそうである。

 東北自動車道を鹿沼インターで降り、カーナビの指示に従い鹿沼市内を抜け、古峰ヶ原街道(県道14号線)を北上する。大芦川を大関橋で渡ると、一面に広がる田んぼの向こうに存在感のある双耳峰が眼に飛び込んできた。一目これから登る二股山である。山裾に点在する下沢集落内を抜け、現れた表示に従い、集落最奥の人家裏の登山者用駐車スペースに辿り着いた。他に車は見当たらない。今日一日山は私の独占になる様子である。

 支度を整え、いざ出発。足下から谷の左岸にそって奥へ延びる砂利道の細い林道を辿る。100メートル程進むと、 立派な砂防ダムがあらわれ、林道には冊が設けられ「通行止め」の表示。ただし、これは車に対する表示と思われる。この場所にいくつかの私的な注意書きが掲示されていた。「悪質者にロープが切られている」「山名板の盗難が頻発している」「登山者用に無償で用意した杖が返却さけない」。困った事態である。

 さらに5分程進むと、林道は終点。ここが沢コースと尾根コースの分岐点であった。しっかりしたコース案内地図が掲げられている。この下沢登山口からは山頂に至る登山道として沢コースと尾根コースの2ルートが開かれていて回遊できるようになっている。私の今日の計画は沢コースを登り尾根コースを下る予定である。

 左岸沿いの登山道を進む。道型はしっかりしているが、季節がら夏草が繁茂し、両側から道に覆いかぶさる。さらに、朝露のためか、昨日の雨のせいか、草はたっぷり水を含んでおり、たちまち足下はビチョビチョとなってしまった。登山道分岐から5分程で、道ばたに小さな石の祠を見る。「山ノ神」との表示がある。辺りの山肌は手入れのよい鬱蒼とした杉林である。すべての杉の立ち木が丁寧に枝打ちされている。登山道は沢の左岸から右岸に移る。

 踏み跡は明確で道標も頻繁にあらわれる。ルートに不安はない。鬱蒼とした杉林の中は静寂そのもので風の音さえしない。突然ルートは行き止まり。「新道」と表示された道標が右に抜ける踏み跡を矢印で示している。ジグザグを切って急斜面を登りあげる。新道のためか、道の状況はあまり良くない。傾斜がいったん弛んだところに「休憩所」の表示がありベンチが置かれていた。やれやれと座り込む。

 ジグザグを切っての急登が続く。休憩所から約10分で支尾根状の地形に登りあげた。やれやれと思った瞬間、踏み跡を見失った。あれ ! と思って周囲を探ってみたが踏み跡が見当たらない。あれ程明確な踏み跡を見失うはずがないのだがーーー。斜面を少々引き返してみるとすぐに踏み跡は見つかった。覆いかぶさる草に隠されてしまっていたのだ。やれやれである。

 上方に見える稜線に向かってジグザグを切って急斜面を登る。最後は固定ロープの助けを借りて尾根に這い上がった。ここで加園(かぞの)ルートが合流する。備え付けのベンチに腰をおろしひと休みである。

 急な尾根を登ると左側に大きく展望が開けた。今日初めて得られた展望である。「展望地」との表示があり、立ち木に詳細な展望図が掲げられている。彼方に連なる山々に眼をこらすが、さっぱり分からない。展望図には「富士山」「雲取山」「甲武信岳」などの山名が記されているのだがーーー。

 尾根をほんの5分程登り上げると、待望の二股山南峰山頂に達した。すぐに569.8メートルの三等三角点「二叉」にタッチする。これで800座目の山頂踏破達成である。座り込んで握り飯を頬張る。朝から何も食べずにここまで登ってきた。陽がぽかぽかと差して暖かい。もちろん山頂に人陰はなく、私の独占である。

 山頂の一角には小さな石の祠が祀られており「雷電様」と表示されている。また山頂部の立ち木には「二股山 569.6m」の山頂表示板が掲げられている。ただし記載された標高が気になる。国土地理院の5万図では標高は569.81mである。潅木の枝が少々うるさいが、左右に展望が得られる。東側眼下には栃木百名山の一つ「岩山」が望める。

 15分程の滞留の後、すぐ隣に聳える北峰に向かう。ただし、この南峰と北峰を結ぶルートが二股山登山の最難所である。両峰の間は深く切れ落ちており、この鞍部に向かって南峰側も北峰側も山頂から鋭い岩壁となっている。まずは鞍部に向かっての下りに入る。張られた固定ロープ、潅木、岩角を頼りに、凄まじい急斜面を慎重に下る。さすがに恐い。足を少しでも滑らしたら一貫の終わりである。

 なんとか無事に狭く暗い鞍部に降り立った。まずは神に感謝しよう。続いて北峰への登りとなるのだが、事前の調査によると、このルートはさらに危険度は大きいとある。しかし幸いなことに、より安全な迂回ルートが開かれている。若い時ならいざ知らず、この歳になって無理することはない。道標に導かれて迷うことなく迂回ルートに踏み込む。

 樹林の中の急な、ただし危険のない踏み跡を辿ると北峰北側の肩に登り上げた。ここにNHKの送信施設と巨大なアンテナが設置されている。下界からもよく見える施設である。そのわずか10メートル程先が北峰山頂であった。山頂は山頂表示もなく、小さな石の祠がまつられているだけである。ただし、若干潅木が邪魔をしているが東、西、南方面への展望が得られる。東眼下に岩山が見え、西には古賀志山がみえる。しばし座り込んでみたが別段面白いこともない。時刻はまだ10時前だがこのまま下ることにする。

 NHK施設まで下り、西に下る下久我ルートと別れ、道標に従い、北へ下る下沢尾根ルートに踏み込む。このルートも踏み跡の確りした、かつ道標も多い整備された道である。すぐに「上坪、北風ヶ沢林道分岐」、さらに固定ロープの張られた急坂を下ると「つつじ平ら」の表示を見る。別に何かがあるわけでもないがベンチがあるのでひと休みして握り飯を頬張る。

 尾根道を快調に下っていくと「下沢城跡」を指し示す表示が現れ、小峰への登りとなる。進むに従い堀切跡や石垣の跡などの城跡の遺跡が現れる。322メートル表示の一峰を越えると「不動岩」と表示された大岩が現れた。やや急な登りとなって368メートル峰に登り上げた。ここに下沢城跡の表示が掲げられている。また、背戸山の表示も立ち木に打ち付けられている。遺跡からここに山城が築かれていたことは確からしいが、いつの時代、誰が築いたのか詳細は不明らしい。

 ルートは東から南へと向きを変え、一本調子の急な下りとなった。心持ち踏み跡も薄くなり、ルートを踏み外さない様に気を使う。11時ちょうど、今朝程別れた、沢コース・尾根コース分岐点に下りついた。ここから車の置いてある登山口までほんの一足長である。なんと早い下山のことか。

家に帰りつくと、燕の巣はすでにからであった。無事に巣立ったようである。こちらもやれやれである。
 

登りついた頂き
   二股山      569.8 メートル
  
         

トップ頁に戻る

山域別リストに戻る