大雪山系 裾合平から北鎮岳へ

秋晴れの下、紅葉の高原から新雪の高峰へ

2009年9月12日

              

裾合平より北鎮岳を望む
 
旭岳ロープウェイ「すがたみ駅」←→裾合平←→中岳温泉←→中岳←→北鎮岳

 
 今日は裾合平から大雪山系第二の高峰・北鎮岳に登る。朝4時、車で大雪高原温泉を出発、一路、旭岳の登山口でもある旭岳温泉を目指す。大雪山塊を半周して山塊の西側から東側への移動である。未だ明けぬ空に明けの明星がキラキラと輝き、予報通り晴天が期待できそうである。時折ヘッドライトの先をエゾジカが横切る。走るほどに夜が明けてきた。真っ青な空が広がっている。

 6時過ぎ、大雪山旭岳ロープウェイの乗り場である旭岳温泉に到着、すぐに6時45分発のロープウェイに乗り込む。ロープウェイはわずか数分で標高1,600メートルの高度へと運んでくれた。目の前に大雪連峰の主峰・旭岳が新雪に山頂を染めて青空の中にくっきりと聳え立っている。聞けば、昨日は旭岳も大荒れで登山者の多くが7〜8合目で引き返したとのことである。

 ロープウェイを降りたほとんどの登山者は旭岳に向うのだが、我々は夫婦池の岸を抜けて裾合平への道を辿る。這松や低い潅木、草原の点在する緩やかな道である。右側には山頂部を白く染めた旭岳が常に見えており、中腹からは雲と見まがえるほどの白煙を吹き上げている。幾つかの小さな沢を横切り、平坦な道を1時間半も進むと、裾合平の入り口に達した。

 そのまま直進する当麻乗越方面に向う道と別れ、右にルートを取って裾合平の中心部へと進んでいく。程なく何とも素晴らしい大草原の中の道となった。右側(南側)には大きな山体の旭岳が山頂を新雪で白く染めながらゆったりと聳えている。上信国境の浅間山によく似た山容である。左側(北側)には比布岳、安足間岳、当麻岳と続く平坦な尾根が長々と続いている。山裾はいずれも這松の緑と赤く染まったナナカマドの林が色鮮やかなコントラストをなしている。ルートはその間の見渡すかぎりの草原の中を続いている。これほど広大な草原を見るのは初めてである。季節がら草原に既に花はないが、咲き終わり萼だけとなったチングルマの大群生が何処までも続いている。花の時期には凄まじいばかりのお花畑となるのだろう。

 大草原の行く手には中岳を中心とした緩やかな尾根が盛り上がっている。その左手奥に、真っ白に雪を被ったおむすび型の形よい山が見える。これから向う大雪山系第二の高峰・北鎮岳である。まだまだずいぶん距離がありそうである。辿る草原の道は板を連ねた桟道となって何処までも続いている。時折、反対側から来る登山者とすれ違うようになる。聞けば、朝一番のロープウェイで入山し、旭岳、間宮岳を越えてここまで下ってきたとのこと、ずいぶん速足である。

 時々泥濘に足を取られながらも、草原の中を1時間も進むと、草原の西を区切る山並み、すなわち、中岳の麓に達した。地形が変わり、大岩のごろごろした谷間に入った。硫黄の匂いが辺りに立ちこめ、付近の河原からお湯が湧き出している。ここが「中岳温泉」である。地図には温泉マークが記されている。ただし、特段施設があるわけではなく、河原に露天ぶろとなりえるお湯溜まりが二つほど掘られている。誰もいない。我々も止まることなくそのまま通過する。

 荒れた谷間を暫く遡行した後、ジグザグを切って右岸の高みに登って行く。今日初めての本格的な登りである。登りきると再び視界が大きく開けた。上部に間宮岳から中岳に続く稜線が立ちはだかり、ルートは、そこから延びる支尾根を登り上げていく。状況が急激に変わり、寒風が吹き寄せる。慌てて立ち止まってヤッケを羽織る。ただし、空はあくまでも晴れ渡っている。遥か彼方に見えていた北鎮岳もいつの間にか間近に迫っている。登るに従い、ついに雪道となった。昨日降り積もった雪だろう。ここはもう標高2,000メートルを越えている。

 稜線に達した。間宮岳と中岳の鞍部の「中岳分岐」と呼ばれる地点である。稜線は強風が吹き荒れていた。これほどの好天でも、やはり高山である。稜線を北に辿ると、ひと登りで標高2,113メートルの中岳山頂に達した。旭岳と北鎮岳を結ぶ稜線上の小ピークで、この山自体を目指す登山者はいない。山頂にはそれを示す標示がぽつんと立っているだけであった。我がパーティも証拠写真を撮っただけですぐに出発する。目の前には目指す北鎮岳の真っ白なピークが高々と聳え立っている。最後の登りはかなり苦労しそうである。稜線の右側(西側)眼下の景色が凄まじい。「御鉢平」と呼ばれる巨大な噴火口の跡である。あちこちから有毒ガスが噴出し、現在でも立ち入り禁止となっている。大雪山系の過去の凄まじい火山活動を知る地形である。

 緩く下り、ひと登りしたところが北鎮岳の肩である。いよいよ山頂に向けての最後の急峻な登りが待ちかまえている。「山頂まで400メートル」との標示がある。風が一段と強まりヤッケのフードを下ろす。積雪は30センチほど、完全な雪道である。踏跡を辿り、キックステップで足場を築き、一歩一歩登って行く。何人かの登山者が前後する。雪に埋もれた岩の隙間からエゾシマリスが顔をのぞかせている。人を恐れる様子もなく、何とも可愛い。もう、冬眠の準備なのだろうか。

 思ったほど苦労することもなく山頂に達した。遮るものなき大展望が待っていた。ここは表大雪山のど真ん中である。山頂部を白く染めた山々が周囲に望まれ、北東側遥か下界には忠別湖の青い湖面も見える。荷物を下ろし天下の絶景を眺める。ただし、寒風が激しく吹きつけ、のんびりと休むような状態にはない。早々に山頂を辞す。

 下りはキックステップが効くので早い。あっという間に肩まで下る。山頂を目指すパーティと多々すれ違う。既に時刻は11時近い。未だ朝から何も食べていない。何処かで昼食にしたいのだが、稜線上は寒風が吹きすさんで休むのもままならない。中岳を越え、中岳分岐から稜線を離れ、少し中岳温泉に下った地点で漸く昼食とした。後は下るだけ、天気も崩れる気配はない。

 中岳温泉に下ると、多くの登山者が休んでいた。さすがに裸になって湯船に浸かるものはいない。何人かが足湯を楽しんでいた。再び裾合平の大草原の中を進む。何度眺めても素晴らしい景色だ。午後に入ったせいか、旭岳、北鎮岳の山頂に時より薄雲が掛かる。14時、行楽客で混雑するロープウェイの「すがたみ駅」に帰り着いた。何と素晴らしい山行であったことか。下りのロープウェイは満員であった。 

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