桐生市の里山 観音山からガッチン山へ 

 山肌は美しい落葉広葉樹の森

2021年2月6日


 
観音山山頂
ガッチン山より浅間山を望む

 
泉龍院駐車場(736〜740)→中尾根三等三角点(804〜807)→秋葉山三尺坊大権現(824〜826)→観音山(831〜842)→雷電山(848)→ガッチン山(904〜911)→車道(934)→駐車場(954)

 
 コロナ禍による混乱が今だ日本中を、否、世界中を覆っている。非常事態宣言も延長となり、政府も対応に必死である。三密を守れ、マスクをせよ、外出をするな。社会活動は大きな制約を受けつづけている。国の方針に従うべく、昨年暮れよりじっと家に閉じこもっていたが、そろそろ限界である。車を使っての単独行の山登りなら、他人と接することもなく、国の指示にも反しないだろう。出かけてみることにした。

 もはや近郊に未踏の山はほとんどないのだが、重箱の隅を突いて見つけたのが、桐生市郊外の里山・『観音山』である。安蘇山塊の一峰・仙人ヶ岳から桐生市に向かって伸びる尾根末端の小峰である。この山を中心に標高200〜300メートルの小さなハイキングコースが開かれている。桐生市ならば車を使えば我が家・鴻巣市からそれほど遠くはない。ただし、このハイキングコースは観音山―ガッチン山とコースをひと回りしても標準所要時間はわずか1時間半である。これでは、いくら足腰の弱った最近の私でも物足りなすぎる。思いついたのは桐生市の隣り。太田市にある金山である。太田の呑龍様で有名な大光院の裏手に広がる里山で、ハイキングコースが開かれているはずである。桐生市の観音山と太田市の金山を二つ登れば一日のハイキングとして適当だろう。

 6時10分家を出る。今日の日の出は6時37分、まだ夜は明けきらず薄明かりの中である。国道17号線で熊谷市へ、そこから国道407号線を太田市に向かって北上する。利根川を越え、太田市を抜け、桐生市を目指す。もはやルートはカーナビまかせである。怪しげなルートを通らされたが、7時36分、無事に目的地。泉龍院の巨大な駐車場に到着した。所要走行距離は48キロ約1時間半のドライブであった。
 
 駐車場は数十台の駐車が可能と思われる実に広大な広場で数台の貨物車が止まっているだけであった。登山者の気配はない。駐車場の隅にはハイキングコースの案内盤も建っている。山懐奥に位置する泉龍院に向かう道路を10メートルほど進むと、道標があり、ハイキングコースが右に分かれる。しっかりした小道である。
 所々階段整備された小道を緩くきつく登っていく。周りはコナラやクヌギの純生林である。これほどの広葉落葉樹林は珍しい。紅葉の季節、新緑の季節はさぞ美しいであろう。ただし、冬枯れの今は葉を落とした枝が空に突き上げているだけであるがーーー。辺りに人の気配は全くない。

 30分ほど頑張ると、尾根に登り上げた。中尾根三等三角点地点と呼ばれる場所である。三等三角点「一色山 290.04メートル」が設置されている。ここに大きな涅槃仏像が場違いのように設置されている。木立の中で展望はない。道標が南西に向かう小道を「観音山」と示している。これから私が辿るルートである。そして、北東に向かう踏み跡を『前仙人ヶ岳』と示している。何時か辿ってみたいルートである。
 ゆるく下って、小峰を越えると観音山への登りとなる。山頂直下で、道標がメイン登山道と別れて、左斜面に向かう細い踏み跡を『秋葉三尺坊大権現』と示している。寄ってみることにする。やぶっぽい踏み跡を少々進むと、大岩の割れ目の奥に小さな祠が安置されていた。そばに建てられた説明盤によると、秋葉三尺坊大権現とは火伏せの神で、麓の泉龍院でお祀りしているようである。

 ひと登りで観音山山頂に達した。雑木林の中の穏やかな頂である。当然無人である。展望は開けてはいないが、それでも木々の間から北西方向に吾妻山が確認できる。2,004年10月、鳴神山から長躯縦走してその頂を踏んだ。備え付けのベンチに腰をおろし途中コンビニで調達した握り飯を頬張る。ここまで朝から何も食べずにやってきた。

 次のピーク・ガッチン山を目指す、少々下ると傾斜の緩んだ小平地に小さな石の祠が安置されていて『雷電神社』と表示されている。周りの落葉広葉樹林が実に見事である。ルートは急な下りとなる。ついにロープの張られた急斜面となる。危険というほどではないが、ロープにつかまっての下りを強いられる。下りきると傾斜は緩み、小道は二分する。道標が右の踏み跡の行く先をガッチン山、左の踏み跡は麓の文昌寺と示している。迷わず右の踏み跡を選択する。踏み跡の状況は一変し、背を没するシノタケの密生の中の切り開きとなる。少し進むと、行く手に小高い岩峰が現れた。目指すガッチン山である。

 9時4分、最終目的地ガッチン山に到達した。積み重なる巨岩の上に上がると、北から西方面の遮るもののない大展望が得られる。西方遥か彼方に真っ白に雪をかぶった巨大な独立峰が見える。浅間山である。眼を右に振ると桐生の街並みの向こうに吾妻山のどっしりとした姿をとらえることができる。ここは第一級の展望台である。標高わずか201メートルの小峰であり、2万5千図には山名記載はないものの、201メートルの標高点はしっかりと記載されている。他に登山者がやってくる気配はない。
 いよいよ下山に掛る。尾根伝いに南西方向にルートをとるが踏み跡がはっきりしない。背を没するシノタケの中に微かに踏み跡らしき気配が行く筋か確認できるだけである。あっちこっちともがき続けるが埒が明かない。少々弱った。覚悟を決めて一筋の気配を追い求める。何とか危機を脱して下界の自動車道に降り立った。ヤレヤレである。ところが降り立った場所がどこなのかよくわからない。車まで戻らなければならないがーーー。見当をつけて少々歩くと、見覚えのある菱小学校に行き当たった。ヤレヤレである。

 9時54分、無事愛車に巡り合った。時刻がまだ早いので計画通り太田市の金山に向かうことにする
 
 

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