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御嶽山山頂より日光連山を望む
林道駐車スペース(800)→ 登山口(805)→ 滝不動(815〜820)→ 中興開山之碑(840)→ 御嶽山山頂(850〜910)→ 下山道分岐(920)→ 古賀志山山頂(925〜930)→ 林道(1030)→ 林道駐車スペース(1010) |
猛暑の夏から一転して寒々とした長雨と度重なる台風の襲来。今年の天候は完全に狂っている。9月半ば以来久々の行楽日和との予報に、山に行ってみる気になった。前々から、宇都宮市郊外の古賀志山が気になっている。2年前、古峰ヶ原高原に向う途中にこの山を眺め、登山意欲を刺激された。恐竜の背中を思わすギザギザシタ岩稜が、平野の中に悠然とそそり立ち、標高の割によく目立つ山である。そのためか、関東百名山にも選ばれている。
しかし、前日に二万五千図「大谷」をしげしげと眺め、少なからずがっかりした。山があまりにも小さいのである。山頂往復なら1時間もあれば充分だろうし、端から端まで縦走しても2時間もあればお釣りが来そうである。西端の赤岩山からの縦走が、唯一興味を覚えるが、案内書によると「要ザイル」となっている。危険を冒す気もおきない。丸一日と、数千円の交通費を掛けて、わざわざ登りに行く山とも思えなくなり、よほど他の山に行こうかとも思ったがーーー。 朝6時、車で出発する。鹿沼インターで降り、分かりにくい道を地図を見い見い山に向う。やがて前方に見覚えのある古賀志山が見えてきた。やっぱり格好いい。萎えていた登山意欲も幾分回復する。城山西小学校の脇を抜けて山懐に入る。登山者用の立派な駐車場があったが、一台も停まっていない。登山口を見送り、そのまま南面を走る林道に入る。しばらく行くと、数台の車の停まる駐車スペースがあった。 5分ほど林道を戻り、道標に従い登山道に入る。小沢に沿って、鬱蒼とした杉檜林の中を登っていく。辺りに人の気配はない。次第に傾斜の間した道をしばらく辿ると、不動の滝に着いた。高さ20メートルほどの垂直の絶壁から水流が落下している。ただし水量は少なく、迫力はない。傍らには「滝尾大権現(お滝様)」と標示された祠が設けられている。ひと休みする。岩壁から湧き出る水を樋で導いた水飲み場が設けられている。 両側から絶壁が迫り、ルートは巨大なルンゼの中を行くようになる。踏み跡は千々に乱れるが、ひたすら急斜面となったルンゼの中を上方に登ればよいので心配はない。もはや水流はない。大石のゴロゴロした沢状のところを登る。左側絶壁に巨大な洞窟があり、「中興開山米山活平翁之碑」と刻まれた石柱が立っている。上空に稜線が見えてくると、傾斜はますます増し、その急斜面を、てんでんばらばらな踏み跡が上部に向う。ついに痩せた岩稜となった稜線に達した。道標に従い左に登る。鉄梯と短い鎖場経ると、あっさりと御嶽山山頂に達した。 小さな祠の建つ山頂は無人であった。青空の下、視界の限り大展望が広がっている。備え付けのベンチに腰掛け、朝食のパンを頬張りながら、山々に見入る。視線の先は自ずとまず北に向う。遠くに高原山が見え、そこから左に女峰山、小真名子山、大真名子山、男体山と見慣れた奥日光の山々が連なっている。目をさらに左、北から西へ振る。日光白根山、皇海山、袈裟丸山と続く山並みがあるはずなのだがーーーー。あれ、兜のような白根山、肩の辺りが二段になった皇海山、いくつものピークを連ねた袈裟丸山。一目で同定できるはずの山々が見当たらない。一瞬焦る。なお目を凝らすが同定できない。何度も何度も見慣れた山並みのはずなのだが。仕方がない、写真を撮って帰ってから同定を試みよう。西側すぐ目の前には、赤岩山が見え、そこから足下まで稜線が続いている。見た目には険悪な縦走路とも見えないが。東側にはこれから向う古賀志山本峰が手の届く距離にある。 古賀志山本峰に向う。肩まで戻り、稜線を東に向う、鎖場やカニの横ばいの難所があるが、危険というほどでもない。小峰を鞍部に下ると右に下山道が分岐する。次の小峰には、何やら新興宗教の祠の跡みたいなものがある。雑木林の中を軽く登ると、そこはもう、古賀志山山頂であった。何とあっけないことか。この頂きも無人であった。ただし、雑木林の中で展望は一切ない。しかも傍らには大きな電波塔が建ち、情緒もない。備え付けのベンチに腰を下ろしてみたものの、長居をする雰囲気ではない。早々に山頂を辞す。 先ほどの下山道分岐まで戻り、下山に掛かる。実によく整備された登山道で、丸太の階段が絶え間なく敷き占められている。このため、歩きにくくて仕方がないのだがーーー。どうやらこの登山道が古賀志山登山の本道のようである。途中、単独行の男性とすれ違う。山中で初めて出会った人影である。ウエストポーチだけで歩いている。この山は、ザックを背負うまでもないのだろう。階段状の道をすたこら下ると、いともあっさり、林道に下り立った。山頂からわずか20分である。 踏み跡が林道を横切り、そのまま南に続いており、道標が「坊主山200メートル」と示している。興味本位で踏み込んでみると、すぐに小さなピークを過ぎ、次の高みで行き止まりになった。不思議なことにここに屑入れと灰皿が設置されている。結局どこが坊主山なのか分からなかった。地図で見るかぎり最初のピークなのだろうが。林道に戻り、のんびりと西に辿る。林道の隙間には、至る所車が停められている。登山者のものなのだろうが、山中出会ったのは唯一人。他の人は何処へ消えてしまったのだろう。15分も林道を辿ると愛車が待っていた。何ともあっけない登山である。
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