大雪山系 緑岳

残雪を踏んで、お花畑の美しい山へ

2005年8月29日

              
 
大雪高原温泉←→緑岳

 
 昨日のトムラウシ山登山に続いて今日は緑岳、白雲岳に登る予定である。ただし、「白雲岳までは無理、緑岳で引き返そう」との声も強い。まぁ、緑岳まで行って、あとは天気と体力を見ての相談だろう。

 4時30分、トムラウシ温泉を出発し、然別湖を経て、登山口の大雪高原温泉に向う。国道273号線から地道の山道に入ると、北ギツネが道端に現れる。意外に時間がかかって、7時30分大雪高原温泉に着いた。駐車場はがらりとして人影もない。今日は月曜日、山は空いていそうである。

 支度を整え出発。いきなり250メートルの大急登である。相変わらず先頭に立つHさんはすたすたと先に行ってしまう。意外なのはTさん。昨日の状況から、今日はダメではないかと思っていたのだが、Hさんにびったり付いて登っていく。私は相変わらずマイペースである。樹林の中の一直線の急登が続く。ただし、昨日のトムラウシ登山道に比べれば、道はよく整備されていて登り安い。約1時間歩いて、「展望台」で小休止。天気はまぁまぁで、白雲岳から忠別岳に続く平坦な尾根がよく見通せる。8月も末というのに残雪が至る所に見られる。

 ひと登りで、急登は終わり、広大な平坦地となった。ただ一面のお花畑である。特にチングルマノの白い花が多い。「第一花畑」、「第二花畑」と、お花畑の道をのんびりと進む。行く手には、緑岳が高々と聳え立っている。小さな雪原を横切る。まさかこの時期、雪の上を歩くとは思わなかった。さすが北海道の山である。エイコノ沢上部の崩壊地点を慎重に通過すると這松林の中の緩やかな登りとなる。見上げる緑岳の山頂はいつの間にかガスに覆われ、天気は悪化の兆しである。

 いよいよ緑岳への高度差250メートルの急登である。岩剥き出しの斜面を黙々と登る。あちこちからナキウサギの声が聞こえる。やがてガスの中に入った。一切の展望が遮断される。風も出てきた。気温も明らかに低下してきた。剥き出しの手が冷たい。キタキツネが現れ、我々を導くがごとく先頭を切って歩き出した。

 10時過ぎ、ついに山頂に達した。と同時に、ものすごい寒風が襲いかかる。風速20メートルはあるだろう。立っていられないほどの強さである。山頂標示にタッチだけして、岩陰に逃げ込む。辺りは濃いガスが渦巻き、もはや何も見えない。下では想像できないほどの悪天である。楽しみにしていた、トムラウシ山の展望も絶望である。震えながら握り飯をほお張る。おそらく気温は10度前後だろう。この天候では白雲岳への縦走など思いも寄らないことである。うっかりすると、下山路さえ見失いそうである。後続の二人連れが登ってきた。彼らも到着と同時に我々の陣取る岩陰に逃げ込んできた。

 10時30分、早々に山頂を辞す。ヤッケのフードを降ろし、手袋までして、真冬並の格好である。這松帶まで下ると、天気はがらりと変わる。風は弱まり、ガスも消えて忠別岳方面に視界が得られる。見上げる山頂はガスが渦巻いている。これから登る何組かのパーティとすれ違う。あの強風吹き荒れる頂に向うのかと思うとかわいそうになる。お花畑の道をのんびり下り、12時30分、無事に大雪高原温泉に下り付いた。疲れた身体を温泉に沈めて極楽極楽である。