本白根山コマクサ群生する活火山 |
2000年8月27日 |
コマクサ
ゴンドラ山頂駅(730〜740)→鏡池(835〜840)→展望台(900〜920)→ゴンドラ山頂駅(1005) |
天下の名湯・草津温泉の背後に聳える白根山は通称「草津白根山」と呼ばれる。活火山であり、昭和57年、58年にも水蒸気爆発をおこしている。今でもあちこちで亜硫酸ガスが噴き出しており、立ち入り禁止区域が多い。この山は日本百名山に選ばれたほどの名峰なのだが、そのゆったりした地形が災いして、今では観光道路とリフトが山腹・山頂を縦横に走っている。おそらく、深田百名山の中で最も観光地化が進んでしまった山であろう。もはや登山対象とはならず、私もこれまで一顧だにしなかった。
しかし、今年の5月、白砂山から眺めたこの山は素晴らしかった。緩やかにうねる大きな山体。地形を特徴づけるいくつもの火口跡。白銀に輝くこの山はうっとりするほどの美しさであった。一度は訪れて見る価値がありそうである。正確に言うと、今から50年ほど前にこの山を訪れた記憶が微かにある。両親につれられて草津温泉からバスで登った。エメラルド色の毒々しい湖の印象が微かに残っている。おそらく、湯釜を見学したのだろう。晩夏の徒然なる一日、ドライブがてら妻を連れて出かけてみよう。
鏡池の火口壁に添って緩やかに登る。火口壁を離れ、続いてきた潅木の林を抜けると周りは這松帯となる。その先は火山性の砂礫に覆われた荒れ地となり、目指す展望台ピークが現れる。荒涼とした砂礫の斜面を登りながらふとロープの張られた遊歩道の両側を見ると、何と! 何と! 辺り一面コマクサの可憐な花が咲いているではないか。今日コマクサの花に出会えるとは思わなかった。大感激である。本白根山は昔コマクサの大群生地として有名であった。しかし、高山植物の女王と言われるこの可憐な花は激しい盗掘にあい、絶滅寸前に追いやられた。最近懸命に再生を図っていることは承知していたが、コマクサの花期は7月。8月末の今日これほどの花に出会えるとは思ってもみなかった。 すぐに展望台山頂に達した。二人連れが休んでいるだけであった。展望盤もあり、晴れていれば素晴らしい展望が得られるのだろうが、雲が渦巻き何にも見えない。しかし、周りの斜面は総てピンクのコマクサ、その中に紫のイワキキョウと黄色いキンレンカが混じる。これだけで満足である。本白根山の山頂部はいくつもの噴火口およびそれに伴う火口壁が絡まり、どこが山頂ともつかない地形となっている。この展望台も火口壁の一部で標高は2145メートルである。この地の南西に2164.8メートルの三角点峰があり、一応ここが山頂とされているが亜硫酸ガス発生区域のため立ち入り禁止である。さらに地図を眺めると、2171メートルの標高点もある。どうも山頂をあえて決めることは無意味のようである。この展望台をもって本白根山、強いては白根山全体の山頂としよう。反対側から数十人の大パーティがやって来るのが見える。山頂がうるさくなる前に下山に掛かる。 相変わらずコマクサの群生する砂礫の斜面を下ると三差路に出る。回遊して元の登山口に下るのは右のルートである。ここで上からみえた大パーティとすれ違う。おばちゃん・おじちゃんばかりである。そういえば朝から若者の姿はみていない。若者は百名山巡りなどしないのだろう。大きな噴火口の火口壁に沿って登る。相変わらず両側の砂礫の斜面はコマクサである。これほどの群生に復活させるのには大変な努力があったことだろう。登りきるとシラビソやモミ、トウヒの樹林となった。もう花は咲いていない。階段整備された道をどんどん下る。何組ものパーティとすれ違う。休むほどもなく、今朝ほどの登山口の側に下り着いた。ここには立派な道標がある。どうやら我々は逆廻りをしたようである。 帰路、白根山の観光名所・湯釜を見学した。夏休み最後の日曜日とあって家族ずれで満員であった。草津温泉で一風呂浴び、混雑する道路に耐え、5時前に家にたどり着いた。 |