比企丘陵 男衾の堂ノ入と天神山 

冬枯れの低山をのんびりと、今年最後の山歩き 

2015年12月29日


 
堂ノ入山頂
天神山山頂
                            
男衾駅(819)→コンビニ(829〜832)→男衾自然公園(852)→堂ノ入山頂(903〜916)→不動寺(935〜938)→天神尾根東端(950)→大山祇命碑1014)→鉄塔ピーク(1019)→天神山山頂(1025〜1037)→天神山尾根西端(1047)→国道254号塩沢交差点(1100)→荒川正喜橋(1137)→造り酒屋「藤崎総兵衛商店」(1145〜1150)→寄居駅(1153〜1155)

 
 今年も残り3日となった。何となく気ぜわしい感じはするが、考えてみると、小生のような暇人には特段せわしいこともない。ならば山にでも行ってこようか。ただしハードな山はごめんである。

 雑誌「新ハイキング12月号」に「天神山ー男衾自然公園」の案内が載っている。「標高は低いが、展望は広い」のサブタイトルが少々気を引く。聞いたこともない山だが、埼玉県の未踏峰とあらば放っておくわけにも行かない。行ってみることにする。

 北鴻巣駅7時20分発の下り列車に乗り、熊谷で秩父鉄道に乗り換えて寄居へ。更に東武東上線で三駅、男衾駅に8時19分に到着した。「男衾」と書いて「おぶすま」と発する。難読地名ではあるが、古代より続く伝統ある地名である。武蔵国を成す郡の一つとして7世紀には「男衾郡」が存在した。また、昭和30年までは「男衾村」という村も存在した。その伝統ある地名も今はわずかに駅名として残るだけであるがーーー。

 降り立った山里の小駅前は薄い家並みが寂しげに広がるのみで、人影もない。ただし、空は真青に晴れ渡り、今日一日の晴天を約束している。今日の登山予定は低山二つである。南北に走る東武東上線の東側に位置する男衾自然公園内の「堂ノ入」と線路の西側に位置する「天神山」である。いずれも標高200メートルにも満たない低山であるが、詳細な登山地図もルート案内も持ちあわせていない。まぁ何とかなるだろう。

 先ずは線路東側の男衾自然公園を目指すが、その前にちょっと寄り道して、線路西側を走る国道254号線沿いにあるコンビニに向う。今日の朝食兼昼食の食料を調達しておく必要がある。こんな人影薄い小集落になぜコンビニがあるのか不思議である。コンビニから国道を更に少し南に進むと、巨大なスーパー「ベイシア」が現れたのにはびっくりした。なんでこんな人家もまばらな山里にこれほど巨大なスーパーがーーー。寄居町や小川町からのお客を当てにしているのだろうか。

 スーパーの角を左(東)に曲がり、線路を渡って緩やかな坂を下る。右手前方にこれから登る堂ノ入らしきピークが朝日に輝いている。吉野川という小流を渡ると右(南)に入る小道を大きな道標が「男衾自然公園」と指し示している。古民家を利用したイタリアンレストランSORAを過ぎると男衾自然公園に達した。小広い広場となっていて、駐車場、トイレ、ベンチが設置されている。もちろん広場に人影はない。

 広場の背後に幾つもの急峻な小峰がニョキリニョキリという感じでそそり立っている。山肌は木々が伐採されたと見え、ほぼ丸裸で、どの峰にも急峻な丸太の階段が登り上げており、また、これらの小峰の間を小道が縦横に走っている。広場の隅に案内図が設置されていたが、ポンチ絵ふうに描かれているため現実の地形とうまく突き合わせができない。

 この小山塊の主峰・堂ノ入に登りたいのだが、どの峰が堂ノ入なのかさっぱり分からない。ままよとばかり急峻な階段を登り山中へ入る。しかし、上部に向う道と巻き道が複雑に絡まりルートがさっぱりわからない。道端には俳句を書き刻んだ丸太がひっきりなしに並ぶが、道標の類いは皆無である。困ったなぁと思いながら奥に進むと、見上げた一峰の山頂に「堂ノ入山頂」と記された山頂標示が小さく見えた。しめたとばかりに登り上げる。

 ベンチの設置された小さな山頂は木々が伐採され西、北、東に大展望が開けていた。ザックを下ろすのももどかしく、何はさておき山岳同定である。まず西を望む。堂平山、笠山、大霧山の比企三山が見え、そこからゆったりした尾根が皇鈴山、登谷山と続いている。そしてその前面、目の前の緩やかな尾根上にはHONDAの新しいいエンジン工場の大きな白い建屋が見える。目を北に向けると、眼下に寄居の街並みが大きく広がり、その背後に榛名山、赤城山が確認できる。ただし、押し寄せる雪雲のせいか、視界は幾分ぼやけ、期待した上越国境の山々は姿を現さない。日光連山も雲の中である。それでも、皇海山、袈裟丸山は確認できた。目を東に向ける。その瞬間、跳び上がらんばかりに嬉しくなった。何と、何と、筑波山がはっきり見えるではないか。コンビニで仕入れた握り飯を頬張りながら、眼前に広がる展望に見入る。周囲にひとの気配はまったくない。大自然の中我一人である。

 満足して山を下る。次は線路の反対側(西側)に連なる小山塊の主峰、天神山を目指す。途中、踏切の手前で不動寺と標示のある寺の裏を通過する。何となく、見たことがあるような寺なので、山門のある表側に回り込んでみた。古色濃く、少々荒れた感じの山門と本堂があらわれた。やはりこの寺は来たことがある。帰ってから調べて分かったのだが、2年前の3月にやはりこの寺を訪れていた。この寺は武蔵国男衾郡の延喜式内社「小被(おぶすま)神社」の旧鎮座地と言われている。延喜式内社巡りをしたさいに訪れたことが思い起こされた。

 東武東上線の踏切を越え、線路の西側に出る。ここに天神山を主峰とする小さな山塊が横たわっている。東西に1.5キロほど伸びる尾根を持つ山塊である。先ずはこの山塊に取り付くことを試みる。里山ゆえあっちこっちに取り付く踏跡はあるのだろうが、逆に明確な登山口はなさそうである。尾根に上がってさえしまえば、尾根上に踏跡があることは分かっている。

 この山塊の東の端を国道254号線が山塊によって少々折り曲げられながら通過している。この国道端から山塊に取り付こうとルートを探してみたが、国道と接する面はどこも笹と潅木の生えた急斜面で尾根に這い上がれそうなルートは見つからない。少々うろうろする。北側に回り込んだ所に何かの施設の庭に入り込むようなルート見つけ、人影のないのを幸いに進入して見る。と、幸いにも上部に向うルートが見つかった。やれやれである。

 すぐに確りした踏跡に行き当たり、尾根に登り上げた。ここで何と一人の老ハイカーとすれ違った。ザックを背負い、ストックを持ち、完全なハイキングスタイルである。こんな里山で私以外のハイカーがいたとは驚きである。緩やかな登りとなった尾根道を進む。確りした小道である。周りはクヌギや小楢の落葉樹と杉や檜の針葉樹の混成林で、展望は利かないが道は落ち葉に覆われている。時折弱々しい踏跡が左右から合流するが、道標の類いはいっさいない。

 緩く下っていくと、踏跡が二分した。どちらも確りした踏跡だが、ここにも道標はない。一瞬判断を迷ったが、木々の隙間から前方を眺め、右に進む踏跡を選ぶ。どこまで行っても人の気配はまったくない。珍しく急登が現れた。ただし、距離は短い。平頂に登り上げ緩く下る。何度目かの短い登りを進むと。「大山祇命」と刻まれた石碑があらわれた。こんな尾根上にも宗教的痕跡がある。

 緩やかに下っていくと、左側に急に視界が開けた。尾根を囲んでいた樹林が切れ、出造り小屋が現れ、小さな畑が現れたではないか。開けた視界の先には堂平山や笠山の比企の山々が望まれる。と同時に、左側からオフロード車なら通行可能と思われる広い道が登ってきて、尾根道に合流した。初めて道標が現れ、広がった尾根道の行く先を「天神山」、登ってきた広い道の先を「男衾駅」と標示している。どうやらこの立派な道が天神山への正規の登山道らしい。

 頻繁に現れる道標に導かれ、大きく広がった尾根道を緩く上ると、大きな鉄塔が二本立つ緩やかなピークに登り上げた。一瞬ここが天神山山頂かと思いザックを下ろす。しかし、山頂を示す標示は何もなく、何かおかしい。更に続く尾根道の先を偵察してみると、更に先を「天神山」と指し示す道標を見つけた。やはり天神山山頂はもっと先のようである。緩やかに下っていくと、右から確りした踏跡が登って来た。ただし分岐に道標はない。

 登りに転じた尾根道を進むと、ついに天神山山頂に到達した。樹林の中の小広い穏やかな頂きである。北方のみ視界が開け、大きく広がる寄居の街並みの背後に、少々霞んだ日光連山が連なっている。ただし、山頂部は雲に覆われ個々の山は同定できない。付近の薮の中を探ると、173.8メートルの三等三角点「天神山」を確認することができた。設置されたベンチに座り、握り飯を頬張っていたら、中年の女性が現れた。ただし、普段着姿であり、ハイカーではなく地元の人の散歩のようである。

 天神山登頂をもって今日のミッションは終了である。さてこれからどうするか。引き返すのもシャクである。尾根上の踏跡は更に先に(西に)続いており、道標が「川の博物館」と標示している。「川の博物館」は荒川右岸にある県立博物館である。この標示に従い、博物館の近くまで行けば、後は地図を頼りに寄居駅まで歩いて行けそうである。「川の博物館」にも立ち寄りたいが、残念なが、12月1日から来年の3月31日まで設備改修のため休館のはずである。事前にインターネットで調べてある。

 腰を上げて尾根道を西に辿る。10分も進むと、尾根は絶えた。たどってきた尾根道は丸太で整備された一筋の急な階段となって平地へ下っている。ここから先は里道歩きである。野道を歩き、住宅地を抜け、畑の中を突っ切り、ーーー。辻辻には「川の博物館」を示す道標が確り設置されている。開けた畑の向こうに辿ってきた天神山尾根が逆行の光の中に黒く浮き上がっている。

 15分ほど歩くと国道254号線の塩沢交差点に達した。ここで「川の博物館」を示す道標に別れを告げる。国道をしばらく進み、県道30号線に入り、鉢形駅前を通過し、正喜橋で荒川を渡り、造り酒屋「藤崎総兵衛商店」に寄って正月用の清酒を仕入れ、ーーー。11時53分、ついに寄居駅に到着した。全てのミッションの無事終了である。
 

 登りついた頂  
     堂ノ入  171       メートル
     天神山     173.8   メートル
                                             

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