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宝登山(ほどさん) 497.1m

 
所在地 皆野町 長瀞町  
名山リスト なし
二万五千図 鬼石
登頂年月日 2000.12.3

 
長瀞アルプスより
宝登山神社
 

 
 岩畳で有名な長瀞の背後に聳える宝登山は宝登山神社の拠る霊山である。標高約500メートル弱と決して高くはないが、低い山並みの続く荒川左岸稜の中ではひときわ抜きんでている。ただし、今では山頂までロープウェイが架かり、山頂には動物園まであるという観光の山であり、宝登山神社とともに長瀞観光の一翼を担っている。従って、もはやこの山にザックを背負って登る者はいない。

 宝登山神社は秩父神社、三峯神社とともに秩父三社と称される大社である。その創設は景行天皇の時代といわれる古社で、社伝は次のように伝えている。
   日本武尊東征の折り、この山で賊に襲われ、四方より火攻め
   とされ絶体絶命の事態に陥った。この時、どこからともなく
   山犬の群れが現れ、身体を火に擦り付けて消し止めた。尊は
   大山祇神の助けと信じ、この山に祠を建て大山祇命と火防の
   神である火産霊命を奉った」。以来、宝登山神社は農耕の神、
   火防の神として東国一円の信仰を集めてきた。

 現在、山名は「宝登」と好字で表記されているが、山名の由来は伝説では「火止(ほと)」に由来すると言われている。しかし、一般的には「ホト」は女陰を意味する。この山のどこかに女陰に似た岩か岩屋があるはずである。日本の神々には性に対するタブーはない。それどころかイザナギ、イザナミのミトノマグワイ以来性に対しは開放的である。性器信仰も生殖・豊饒と繋がり、日本の神々の根源の一つでもある。

 先に、この山にザックを背負って登るものはないと云ったが、正確には、ただ一つハイキングルートがある。宝登山から東に標高200メートル前後の低い山稜が続いている。この山稜は長瀞アルプスと名付けられ、稜線上にハイキングコースが開かれている。美しい雑木林の続くすばらしい縦走路である。しかも人影は薄い。長瀞アルプスを縦走して宝登山に至れば、宝登山「登山」が可能である。ただし、登山姿で宝登山山頂に立つと周りの観光客の目が気になり、何とも気恥ずかしい。

 宝登山山頂は樹林の中であるが、少し西側によると大きく展望が開け、目の前に両神山と城峯山の埼玉の誇る二つの名峰を望むことができる。その左手には甲武信ヶ岳を中心とする奥秩父主稜線が連なっている。山頂直下には宝登山神社奥宮が鎮座しており、何軒かの茶店が並んでいる。麓の宝登山神社からロープウェイとは別に登山道ともなる車道が通じている。ロープウェイを拒否した元気のよい観光客が約1時間を掛けて登ってくる。

 私は平成12年12月、長瀞アルプスから宝登山に登った。皆野の駅から歩き始め、宝登山頂に至るまで山中誰にも会わない静かな山旅であった。冬枯れの雑木林の美しさを満喫した山旅でもあった。
(2002年3月記)