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弘法山(こうぼうやま) 164m

 
所在地 埼玉県越生町      
名山リスト なし
二万五千図 越生
登頂年月日 2002年2月24日     

 
南面より望む
   

 
 正直に言うと、この山の存在を知ったのは今年の2月である。もう40年も埼玉の山を歩き回っているのに恥かしい限りである。弓立山へのルートを地図で検討していて見つけた。越生町郊外に盛り上がったわずか164メートルの小峰である。勿論、ハイキングの対象となるような山ではないので、案内書の類に登場することはないが、地図にはしっかり山名が記載されている。

 弓立山から越生梅林に下り、越生駅に向かう途中にちょっと寄り道して弘法山に向かった。弘法山を初めて見て驚いた。その山容は自然の造形とも思えないほどの端正な二等辺三角形である。まさにピラミッドのような山が平野の片隅にちょこんと置かれている。一目見て、この山はただ者ではないと感じた。事実、「この山は人工的なピラミッドである」との説が今なお根強く残っている。勿論、科学的には自然にできた山であることは疑う余地がないのだが。

 弘法山に設置された説明板には次のように記されている。
   弘法山は高房山とも言い、以前は山頂に浅間神社、中腹に弘法山 
   観世音、山麓に見正寺があって全山信仰の対象として知られ、特 
   に弘法山観世音が弘法大師の作と伝えられていることから、弘法 
   山とも呼ばれるようになった。弘法山は越生町周辺ならばどこか 
   らでも眺められ、『新編武蔵国風土記稿』にも「四辺は松杉生ひ 
   茂りて、中腹に妙見寺あり、夫より頂まで殊に険阻の山なり。頂 
   に浅間の祠を建て、祠辺よりの眺望最も打ち開けたり。先ず東の 
   方は筑波の山を始めとして、比企、足立、江戸を打ち越えて、遠 
   く房総の山々を見渡し、南は八王子の辺までのあたりに見え、西 
   は秩父ヶ岳及び比企郡笠山、乳首山など連り、北は三国峠より信 
   州、越州の高山みえたり。」と記され、海抜二百メートル足らず 
   の山にしては異例の扱いを受けている。なお、現在は妙見寺はな 
   く、ここには観音堂が建立されて安産子育の観音様として参拝者 
   が多数訪れている。ここに奉納する縫いぐるみの「乳房の絵馬」 
   は、民俗信仰の上からも注目されている。

 また、越生町のホームページには次のように記載されている。
   かつては「高房山」と書き、山頂に諏訪神社、中腹に妙見寺(み
   ょうげんじ)、ふもとに見正寺(けんしょうじ)という1社2寺
   を持つ信仰の山でした。現在は、妙見寺はなくなり、観音堂だけ
   が「子育て観音」として残されています。また、越生七福神めぐ
   りの弁財天も祀られています。
   この子育て観音は、江戸時代には、近隣の村々はもとより遠くか
   らも信仰を集めました。現在でも乳房の作り物を奉納し、安産を
   願う方々の姿が見られます。
   春には満開の桜が雲のように中腹を取り巻き、その円錐形の美し
   い山様は「おごせ富士」と呼ぶのにふさわしい姿です。

 現在は山頂には浅間神社に代わり諏訪神社の社殿が建つが、周りは樹木が覆い、新編武蔵風土記稿に記されたような展望は得られない。また、中腹の観音堂までは車道が登ってきている。観音堂から山頂までは植林の中の10分ほどの登りであるが、山頂付近は岩盤が露出していてちょっとした山道である。ただし、わざわざ山頂まで行くものは少ない。

 弘法山は、おそらく、古代より神奈備山として崇められて来たのだろう。この越生の里は古代より開けた古い集落である。

(2002年11月記)