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雷電山(らいでんやま) 418.2m

 
所在地 埼玉県玉川村  都幾川村  
名山リスト なし
二万五千図 武蔵小川
登頂年月日 2001年12月16日

 
 北東より
 七重峠より
 都幾川村役場付近より

 
 雷電山はいわゆる比企丘陵に属する山で、都幾川左岸にこんもりと盛り上がった低山である。登頂は至って簡単で、中腹に展開する雲河原集落から15分も登れば山頂に達することができる。このため、登山ハイキングの対象としては些か不充分である。しかも、山頂は鬱蒼とした植林の中で展望は全く得られない。よほどの物好き以外、わざわざ登りになど行かない山である。しかし、山容はなかなかの山で、細波のごとく続く比企丘陵の低い山並みの中ではひときわ存在感を示している。

 雷電山の山名は山頂に雷電神社を祀ることによる。山頂には「雷電様」を祀る木製の祠が二つと石の小さな祠が数個鎮座している。雷電とは雷のことであり雨をもたらす神様である。すなわち、この山は雨乞いの山なのである。「雷電山」なる山は全国に点在する。近くでは奥多摩に雷電山という494メートル峰が存在する。また、山名は異なるが、武蔵嵐山の大平山山頂にも雷電様を祀る祠が安置されている。

 山頂に至るルートは二つある。南西面の雲河原集落からと北東面の日影集落からである。両登山道ともよく踏まれており、道標も完備している。というのも、日影集落から山頂の南の肩を越えて雲河原集落に通じる小道があり、日影集落からの登山道の大半はこの小道と重なっている。この小道は昔の慈光寺道である。深くえぐれた道型は慈光寺の過去の栄華を物語っている。

 実は雷電山に登るルートがもう一本ある。ただし、バリエィションルートである。地図を眺めると、都幾川左岸稜は明覚駅近くの愛宕山で関東平野から盛り上がり、堂山、雷電山と西に続いている。このうち堂山から雷電山へと縦走するルートがある。このルートは地図に破線の記載もないし、また案内書にも一切紹介されていない。いわばとっておきのルートである。まずは堂山に取り付くのだが、中腹に配水場の設備があり、麓の本郷集落からこの施設まで地道の車道が通じている。この車道は二万五千図にも記載されているのでわかりやすい。配水施設の裏からよく踏まれた登山道が山頂に通じている。堂山山頂は東に展望が開けていて関東平野が一望できる。ただし、山頂には「堂山」の標示はなく、代わりに「天王山」の標示がある。

 堂山山頂から雷電山に続く尾根にはしっかりした踏み跡がある。道標はないものの赤布もある。雑木林の中の平坦な尾根をしばらく辿ると、尾根は痩せ、ものすごい急登が現れる。手足4本を動員して登り上げると、杉檜の鬱蒼と茂った広々とした尾根にでる。踏み跡に従い右に曲がって緩やかに登ると、先に述べた慈光寺道に突き当たる。この道を横切り、ほんの10メートルほど進むと、小さな祠があり、ここで辿ってきた踏み跡は突然絶える。後は、潅木の隙間を縫って、強引に斜面を15分も登るとぽんと山頂に飛び出す。最後の藪漕ぎを避けたいなら、慈光寺道を雲河原集落に辿り登山道を登ればよい。

 私は2001年12月、都幾川左岸稜最末端の愛宕山から縦走して雷電山に登頂した。愛宕山から堂山までは踏み跡もまともにないひどい薮尾根で先行きが思いやられたが、堂山からはしっかりした踏み跡が現れ、ほっとした。こんなルートで雷電山に登ったものはいないのではないかと、今でも内心で誇っている。
(2002年6月記)