都幾山、金岳から士峰山、雷電山へ 

 比企丘陵の薮尾根縦走復讐戦 

2012年4月8日

士峰山山頂の畠山重忠の墓
                                                         
慈光寺入口バス停(820)→慈光寺(850)→観音堂(855〜900)→都幾山(915)→冠岩(930〜935)→金岳(950〜955)→林道(1010)→328.4メートル三角点峰(1035〜1040)→送電線鉄塔(1135〜1145)→士峰山(1155〜1200)→雷電山(1230〜1235)→200メートル峰(1250〜1300)→160メートル峰(1310)→車道(1320)→松岡醸造(1330〜1335)→小川町駅(1420)

 
 3月29日に比企丘陵の薮尾根縦走を試みたが、山中ルートを失い、見事に失敗した。このまま引き下がるわけにはいかない。東京の桜満開の報の届く中、復讐戦を果たすべく勇んで出かけていった。ときがわ町のせせらぎバスセンターから奥地に向うバスは、平日はワゴン車であったが、休日の今日はマイクロバスであった。ただし、今日も乗客は私一人である。

 8時21分、慈光寺入口バス停着。勝手知った道を慈光寺に向かって歩き始める。今日は一日穏やかに晴れ、5月並みの温かな気温になるとの予報である。約30分の歩行で慈光寺に着いた。未だ参拝者の姿はなく、数人の女性が洗濯に勤しんでいた。そのまま通過して観音堂に向う。今日は御本尊御開帳の日とかで、観音堂ではその準備に多くの人が立ち働いていた。休む気にもなれずそのまま裏手より都幾山に登り始める。

 つい9日前に辿った道、わずか15分で都幾山山頂に登り上げた。山頂はつい最近間伐がなされたと見え、多くの伐材が転がり座る場所とてない。早々に先に進む。杉檜の鬱蒼とした植林に包まれた462メートル標高点峰を越えると、冠岩に達した。備えられたベンチに座りパンを頬張る。今日初めての休憩である。朝日が燦々と差し暖かい。

 いよいよここから道なき山中に突入する。行く先を「天文台」と示された登山道は稜線の左にと去って行き、金岳に向う稜線上には微かな踏跡の気配だけが残る。その気配も、金岳への登りに入ると消えうせ、鬱蒼とした杉林の中の平斜面が眼前に広がる。打ち枝の残骸が散乱し、歩きにくい斜面をひたすら登る。人の気配はまったくしない。それでも勝手知ったルート、わずか15分で金岳山頂に登り上げた。539,5メートルの三等三角点「平萱」と消えかけた私製の山頂標示が迎えてくれた。

 ひと休み後、北に向って縦走を開始する。潅木の少々うるさい杉林の尾根を下っていく。やがて尾根は急峻に切れ落ち、眼下に尾根を乗っ越す林道が見えた。林道に向って慎重に下降を試みる。一番いやなところだ。最後は切り通しの絶壁となった斜面をを滑り落ちて林道に下り立った。すぐに林道の反対側で尾根に取りつく。最初の小さな瘤・460メートル峰でルートは右に曲がる。前回はルートに気を配りながら慎重に進んだが、今日はすでに承知しているルート、地図をチェックする必要もない。

 ここからは落葉広葉樹の雑木林となった。厚く積もった落ち葉を蹴立てて急斜面を下る。狭まり、明確となった尾根は北東から北へと緩やかに向きを変えながら続く。二万五千図には現されていない小さな瘤を幾つか越える。尾根上に踏跡はないが、それでも微かに人の通った気配はある。降り口が岩によって閉ざされている顕著なピークを左から危なっかしく巻く。林道から25分歩いて328.4メートルの四等三角点「千本立」と思われる小さなピークに達した。ただし、探してみたが三角点は確認できなかった。小休止する。

 ピークからルートを右に取り、緩く鞍部に下る。二万五千図にはこの鞍部を乗っ越す点線(山道)が記されているが、この山道は確認できなかった。大きなピークへの登りに入る。地図上の338メートル標高点ピークである。本格的な登りに息を弾ませる。登り詰めたピークの山頂部はどこが最高点とも分からない広大な広がりで、鬱蒼とした杉檜の植林に覆われている。

 前回はこの山頂部で右往左往してルートを失った。今日は何が何でもルートを見つけ出さなければならない。前回は、辿ってきた踏跡の気配とそれに伴うテープに引きずられ、北西に延びる顕著な尾根に引き込まれた。間違いに気づいて、山頂部に引き返したものの、今度は北に延びる尾根に引き込まれてしまった。正しくはこの広々とした山頂部を東に進まなければならない。二万五千図をザックからズボンのポケットに移し、いつでもチェックできるようにする。

 山頂部を慎重に東に進む。あちこちにテープがあるが、どうやらこのテープはルートを示すものではなさそうである。東の端から斜面を緩やかに下る。未だ尾根筋はなく、ルートに確信は持てないがーーー。下るに従いようやく尾根筋が現れた。ルートは正しそうである。しばらく緩やかな下りが続いた後、登りに転じ、はっきりしたピークに登り上げた。ここで私の足はぱったりと歩みを止めた。次の一歩を踏み出す方向がわからないのである。

 二万五千図を睨むも、このピークに相当するピークは記載されていない。明らかに10メートル以上は登ったゆえ、ピークを示す等高線の記載があって然るべきなのだがーーー。したがって現在位置も正確にはわからない。鬱蒼とした樹林の中で、展望もまったく利かない。先ずは、東に下ってみる。しかし、尾根筋もない急な下りが続きルートとも思えない。尾根が北へ伸びている気配なので、この尾根を下ってみる。尾根上には、かなり荒れているが、小道の痕跡が認められる。しばらく下るが、どうも様子がおかしい。立ち止まって二万五千図をつくづく眺める。ようやく地図を読みきった。やはりピークから東に下るのが正しいのだ。山頂へ登り返す。

 改めて東に下る。しばし斜面をずり落ちると鞍部に下りついた。ここでルートの正しさを確信した。ここは地図上の315メートル標高点ピークとの鞍部なのだ。右から現れた尾根筋に登り上げる。尾根上には送電線鉄塔巡視路があった。一面杉の植林に覆われた尾根は向きを北へ変えながら緩やかに登って行く。

 前方に、杉の植林が切れて陽の光があふれる空間が見えてきた。そして、その空間に立つ送電線鉄塔も。この鉄塔こそ、前回、今回と山中迷いながら目指した目標物である。ついに鉄塔に達した。大きく切り開かれた草原の中にそそり立つ巨大な鉄塔。ついにここまでやって来たとの思いが強い。草原に座し、パンを頬張る。陽の光が燦々と降り注いで暖かい。何と気持ちのよいことか。目の前には比企の名峰・笠山と堂平山が陽春の光を浴びてそそり立っている。今日初めて得られた展望である。

 重い腰を上げる。この地点は予定している行程の未だ半分である。先は長い。しかも、何が起こるか分からない未知のルート、先を急がなければならない。再び杉檜林の薄暗い植林の中を緩やかに登り、316メートル標高点ピークを越える。鞍部に少し下り、次の289.8メートル三角点峰を緩やかに登る。このピークは、二万五千図に山名記載はないが、「士峰山」と呼ばれるようだ。杉檜の植林の中の穏やかな山頂に達すると、まるで場違いのごとく立派な祠が一つ静かに鎮座していた。伝畠山重忠墓である。今回の山行で最も楽しみにしていた場所である。

 畠山重忠(1164〜1205)は源頼朝に仕えた鎌倉幕府初期の有力な御家人である。最後は莫府内の権力闘争に巻き込まれ、北条時政に謀殺されるが、その豪勇廉直な生きざまは鎌倉武士の典型として後世に語り継がれた。歌舞伎や浄瑠璃にも登場する伝説に綾取られた人物だけに、縁の地と伝えられる場所が関東一円に点在している。この士峰山頂の塚もその一つで、畠山重忠の遺髪を埋葬した場所と伝えられている。麓の上古寺集落から弱々しい踏跡が祠まで登り上げていた。山頂に289.8メートルの四等三角点「西ノ谷」があるはずなので探してみたが見つけることが出来なかった。

 山頂を辞し。先を急ぐ。尾根上には送電線鉄塔以来弱々しい踏跡が確認できる。瘤を一つ越え、鞍部に下ると小さなアンテナがあり、踏跡は次のピークを右から巻きに掛かる。尾根に戻って緩やかに進むと、壁のごとき急斜面に突き当たった。もはや踏跡も絶え、潅木の薮っぽい斜面を這い登る。息を切らして登り上げた山頂には三角点があった。280,2メートルの四等三角点「向山」である。このピークを雷電山と呼ぶらしいが、山頂標示はなかった。樹林の中で展望もない。ひと休みする。

 尾根に沿って下っていくと、露石をまじえた急な下りとなった。踏跡も消え、いやな下りである。すでに標高は200メートル台なのだが、まだまだ気の抜けないルートである。次の標高200メートルの小ピークもなかなかの急登である。足も大分疲れており苦しい。小さな山頂でひと休みする。傍らのアセビが白い壷形の花を沢山つけている。山中で初めて目にする花である。左側は絶壁に近い急斜面となって槻川に落ち込んでおり、川沿いの集落が見える。

 最後の行程に出発する。辿ってきた稜線最後のピーク・160メートルの小峰を越え、緩やかに尾根を下っていくと、ルートが尽きた。前方は絶壁となって大きく落ち込み、前進不能である。右側の緩斜面にルートを求める。萱とと潅木の生えた薮だが、未だ冬枯れのため何とか通行できる。薮を縫って下へ下へと進むと、過たず、槻川右岸の車道に飛びだした。時に13時20分、踏跡なき薮尾根縦走の終焉である。

 途中、造り酒屋・松岡酒造に寄り、小川町駅までの長い道程を歩き通した。

登りついた頂  
   都幾山  463     メートル
   金岳   539.5 メートル
   士峰山  289.8 メートル
   雷電山  280.2 メートル
    

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