城山から発端丈山へ富士山と南アルプスの大展望台の山 |
1997年4月29日 |
葛城山より富士を望む
大仁駅(820〜825)→城山登山口(850〜855)→城山分岐(930〜935)→城山山頂(950〜1005)→城山分岐(1015)→林道(1025)→葛城山分岐(1030〜1035)→葛城山山頂(1105〜1125)→林道(1140)→うぐいす谷(1150〜1155)→益山寺入口(1210)→益山寺(1215)→益山寺入口(1225〜1230)→発端丈山山頂(1245〜1305)→県道(1340)→三津郵便局(1350〜1405) |
三島駅から乗った伊豆箱根鉄道が大仁に近づくと、右側に狩野川河畔からすっくと盛り上がったなんとも格好のいい岩山が見える。ロッククライミングの練習場として有名な城山である。城山と尾根続きの西側の山は葛城山。伊豆長岡の温泉街から山頂までロ−プウェイが掛けられた観光の山である。さらにその西隣が発端丈山。展望絶佳といわれるハイキングの山である。この三山を結ぶと軽い一日のハイキングコースとなる。今日はみどりの日。一日好天が約束されている。一昨日、熊伏山から観音山まで命懸けの超ハードな縦走をして心身ともに疲れはてた。今日は地図を読む必要のない気楽なコースを歩いてみよう。城山と発端丈山は「静岡の百山」に選ばれている。
朝マンションのドアを開けると、夜半まで降り続いていた雨も上がり、雲が竜爪山の斜面をどんどん上がっていく。予報通りの晴天になりそうである。静岡駅発6時44分の上り列車に乗る。東に行くに従い空は曇り、天気の回復が遅れている。8時20分、大仁駅着。町並を抜け、狩野川を渡って土手に出る。行く手に城山が奇怪な姿の岩峰となって盛り上がっている。前方の田圃の畔道を数人のパーティが気怠そうに進んでいく。同じく城山へ登るのだろう。小室集落を抜け城山に近づくと、大岩壁はますます迫力をもって迫ってくる。のんびり歩いて駅から25分で城山登山口に着いた。 雨上りのハイキングコースをのんびりと登っていく。誰もいない。鶯の声だけが照葉樹林の森にこだます。やはり一昨日の疲れが残っていてピッチは上がらないが、今日は急ぐこともない。ロッククライミング場への踏み跡が続けて二つ分かれる。木立ちの間だから見上げる岩壁はすさまじい迫力であるが、今日はまだ誰も取り付いていない。途中のベンチで一休みし、少し傾斜の増した道を登ると城山分岐に達した。ここは城山から西に張り出した尾根上の峠で、風雨に摩耗した一体の地蔵仏が安置されている。尾根を乗っ越してまっすぐ進む道は発端丈山に向かう縦走路。城山山頂はここから往復することになる。 照葉樹林がアセビの森に変わると、岩の間を縫うようになる。山頂は近い。右側は絶壁で覗くと2〜300メートルにもわたる垂直の壁が足元より一気に切れ落ちている。小ピークを越える。山頂は隣のピークのようだ。高校生と先生と思える6人パーティが下ってきた。今朝方田圃の畔を先行していたパティーである。道を譲るが4人の男子は挨拶もしない。ただ1人の女生徒が挨拶をし、最後尾の先生が丁寧にお礼をいって下っていった。すぐに山頂に飛び出した。だぁれもいない。岩場の狭い山頂は案内の通りすばらしい展望である。曇っていた空もいつしか晴れ、その中に山頂を白く染めた富士山がすっくと浮かんでいる。反対側は万三郎岳を主峰とする天城連峰が、淀んだ空気の中に消え入りそうに浮かんでいる。眼下には狩野川がゆったりと蛇行し、長岡や大仁の町並が見える。すぐ目の前には山頂をつつじで色とりどりに染めた葛城山が見える。まるで絵葉書のような景色を眺める。 峠まで戻り、発端丈山への縦走路を辿る。稜線の左側の巻道である。樹林の中の気持ちよい道を緩やかに上下する。三世代家族のハイカーに追いついた。爺さんが一人遅れてひぃひぃいっているが、夫婦と子供はどんどん先に進んでいく。これではパーティにならない。すぐに林道に飛び出した。車で来た2〜3パーティが登攀の準備をしている。ロッククライミングをするのだろう。林道を横切り、杉檜林の中の短い急登を経ると巻道となった。すぐに小さな道標があり、右の急斜面を登る道を葛城山山頂と示している。ただし「獣道を登る悪路」と付記されている。地図にはない道である。この山域は城山ー葛城山ー発端丈山と続いているのだが、案内地図によるとハイキングコースは葛城山を割愛している。どうしても葛城山に寄りたい場合はこの先の「うぐいす谷」から遠回りで往復することになる。この標示の道は直接葛城山に達しているようだ。細い踏み跡に踏み込む。滑りやすいものすごい急登をわずかに登ると巻道となった。発端丈山に続く尾根を乗っ越すとアセビの灌木の中のものすごい急登となった。一級の登りである。これでは一般のハイカーは無理である。遊歩道に出てすぐに葛城山山頂部の一角に達した。山頂部にはびっしりと色とりどりのつつじが植えられ、見事と言うほかない。おばちゃん二人連れのハイカーに呼び止められ、「城山にはどう行ったらいいんでしょう。そっちへ行ったら、ものすごい道なので戻ってきてしまったのだが」。確かに私の登ってきた道は無理だ。 つつじの道を登って山頂に達した。ロープウェイで登ってきた行楽客で混雑している。ただし、展望は超一級である。この山頂は富士山の撮影スポットとしても有名とのことである。遠景に山頂を雪で染めた富士山が青空に浮かび上がり、中景に愛鷹山、前景に沼津アルプスの鷲頭山と大平山。その左には駿河湾がゆったりと弧を描いている。その遙か彼方に白い山並が空に解け込むように霞んでいる。南アルプスだ。目を凝らして同定を試みる。北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山。さらに塩見岳、荒川三山、赤石岳、聖岳、上河内岳が同定できる。その前に連なる黒い山並は天子山塊である。富士市の製紙工場から昇る煙も見える。ベンチに腰掛け、握り飯を頬張りながらのんびりと天下の絶景を眺め続ける。 発端丈山に向かう。さすがに登ってきた道はうんざりであるので、遠回りだが正規の道を行くことにする。北面の急坂を下る。途中で追い越した三世代パーティがようやく登ってきた。舗装された狭い林道に降り立つ。車も人も通らない林道を5分も歩くと、うぐいす谷に向かう山道が分岐する。林道は長瀬バス停に続いているようである。杉檜林の中を5分も登ると発端丈山に続く稜線で縦走路に出た。ここが「うぐいす谷」と呼ばれるところである。人影はない。樹林の中の道を緩く登ると、やがて山稜を右から巻くようになる。家族連れのパーティを追い越すと益山寺分岐であった。天然記念物の楓の大木があるという寺に寄ってみることにする。小道を辿ると蜘蛛の巣が顔に掛かる。私が今日初めてとは驚きである。5分で寺に着いた。静かな山寺で、人の気配もない。境内にそそり立つ楓の大木は一見の価値がある。説明書きによると、根回り5.46メートル、樹齢860年、県下最大の古木とのことである。 縦走路に戻り、発端丈山への最後の登りに掛かる。道幅は広いがすごい急登である。登り切ると四等三角点があった。普通の三角点標石ではなく水準点のような作りになっている。二万五千図には記載されていない。軽く登ると、発端丈山山頂に達した。しかし、がっかりの山頂である。富士山は見えるものの、山頂部にはゴミ穴が掘られ、周囲は汚らしい雑木で囲まれている。山頂標示すらない。夫婦連れと単独行者が休んでいた。急登で息が切れたので座り込んで握り飯を頬張る。 いよいよ下山である。2〜3分下ると展望台といわれるところにでた。ここも有名な撮影スポットである。眼下に内浦湾の真っ青な海が広がり、弧を引く駿河湾の向こうに富士が浮かんでいる。超一級の展望である。すぐに三津長浜と三津坂の分岐となる。樹林の中の滑りやすい急坂となる。ちらちら見える内浦湾を目指して一気に下る。30分も下るとみかん畑に出た。大パーティが道を塞いでいる。おじちゃんおばちゃん50人はいるだろう。追い越すのにひと苦労である。こんな大人数で何が楽しいのだろう。住本寺の脇を抜けて、海岸沿いのバス道路に飛び出した。長浜のバス停では沼津行きが20分待ちであったので、連休で車の行き来の激しい県道をさらに歩いて三津まで行く。沼津港行きの定期船はないとのことであったが、長岡行きのバスがあった。 典型的な低山のハイキングコースであったが、さすが富士をはじめとする展望は超一級であった。冬来たらもっとすばらしいであろう。 |