比企丘陵 富士山と正山 

地図の片隅に見つけた山(第二弾) 

2011年12月7日

富士山山頂
北西より望む正山
                                                         
「花和楽の湯」裏より富士山往復。 田黒集落より正山往復。

 
 今日は二万五千図「武蔵小川」の隅をつついて見つけた山の残り二つ、すなわち富士山と正山を目指す。昼過ぎの12時30分、車で家を出る。先ずは富士山を目指す。日本一の山と同名であるが、こちらは「ふじやま」と称す。小川町市街地のすぐ北に聳える小峰である。日本山名総覧によると、二万五千図に記載された富士山という名前の山は全国で16座ある。この数は「○○富士」や別名「富士山」を除いた数字である。これら富士山の多くは富士講に因み命名されたと思われる。この小川町の富士山も同様である。

 事前に登山ルートを調べた。もちろん、ハイキングの山ではないので登山案内の類いはない。二万五千図を眺めると、南東の麓から山頂に至る破線(途中までは実線)が記載されている。このルートが現存すれば問題はないのだがーーー。念のためインターネットで検索をかけると幾つかの登頂記録がヒットした。それらによると、二万五千図記載ルートは存在し、かつ唯一のまともなルートのようである。

 東松山から国道254号線を進み、約45分で、目指す富士山の南東の麓にある入浴施設、「花和楽の湯」近くに到着する。登山ルートはこの施設の裏から始まっているはずである。辺りは市街地の中で車を停める場所が見つからない。しばしうろうろした揚げ句、ようやく近くの赤十字病院の駐車場に停める。

 13時30分、カメラだけをもって山頂に向う。地図を頼りに、簡易舗装された狭い坂道登って行く。ぽつりぽつりと人家はあるが、人影はまったくない。10分ほど登り、最後の人家に到ると、突然、静寂を破って防犯ベルが激しく鳴り響く。どうやら仕掛けられたセンサーが家の前を通過する私を感知したようである。道脇には「近くに火薬庫があり、この付近をうろつく不審者は警察に通報する」と記された看板が立てられている。おまけに、進んできた小道は鉄製の門によってが行く手を完全に遮断されている。ただならぬ事態に一瞬ひるむ。しかし、鳴り響くベルの音にも関わらず、人が現れる気配はない。

 鉄門の先には地道が続いている。門の隙間を潜り、先に進む。ここからは林の中の小道となった。道幅は2〜3メートルと広く、小型のオフロード車なら通れそうである。落ち葉に覆われた小道を緩やかに上って行くとKDDIの鉄塔が現れた。山頂はもう少し先のようだ。急な登りを経ると待望の山頂に達した。麓からわずか15分の行程であった。

 山頂は展望の一切ない樹林の中で、金網で囲まれたJPT小川の施設と鉄塔が大部分を占領している。その片隅に「仙元大菩薩」と刻まれた板碑が置かれ、その前に182.1メートルの三角点が確認できる。山頂を示す標示は何もない。早々にもときた道を引き返す。この小道は、どうやら山頂施設の補修路であるようだ。下りも一切人に会うこともなく、約10分で山を下る。

 14時、正山に向い車を走らす。槻川の嵐山渓谷の辺に聳える小峰である。正山と記して「しょうやま」と称する。何となく変わった名前の山である。何かいわくがありそうだが、この山について記した文献は何も見つからなかった。登山ルートに関する情報もない。例によって、インターネットで検索をかけると、わずかにヒットした。それによって、二万五千図に記載されている北東の麓から山頂に到る破線のルートは存在しないことを知る。登山ルートとしては南の麓・田黒集落から確りした踏跡が山頂に通じているらしい。しかし、その登山口がわかるか否かが登頂の成否を握りそうである。

 玉川村田黒集落の田黒農村センターで車を停める。カメラだけをもって、地図を頼りに家々の点在する村落の中に入る。集落に人影はまったくない。幸運なことに、山頂に通じるルートの入り口と思える場所はすぐに見つかった。もちろん何の標示もない。人家の脇を抜け、廃屋の裏に廻ると、山中に登り上げていく小道が現れた。落ち葉に覆われた樹林の中の小道を足早に登る。幅2〜3メートルもある確りした小道である。栗の毬が多く、時折、運動靴の上から足を突き刺す。道標はないが、所々に赤布がある。二カ所ほど右、続いて左から同じような確りした踏跡が合流してくる。たどる小道は、不思議なほど真っすぐに、かつ緩やかに山頂に向って続いている。

 登り12〜13分であっさりと山頂に達した。樹木が小広く切り開かれているが、背を没する薮で埋め尽くされている。展望は一切ない。薮の中に、小さな手製の山頂標示と、164.9メートルの三角点が確認できた。私以外にも、物好きにもこの山にわざわざ登ったものがいる証拠である。

 満足して、もときた道を引き返す。それにしても登り下りにたどったこの確りした小道は、何のために造られたのだろう。少々不思議に感じられた。
                                           以上
 
登りついた頂
  富士山  182.1 メートル
  正山   164.9 メートル

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