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上滝沢(825)→桧峠(925)→菩提山(1040〜1050)→滝ノ谷峠(1125〜1140)→笠張山(1225〜1235)→ 高尾山(1310〜1320)→鼻崎の大杉(1410〜1415)→蔵田バス停(1420〜1425)→高根白山神社(1500)→高根山(1515〜1530)→蔵田バス停(1615〜1643) |
焼津、藤枝の市街地が広がる志太平野の背後に870メートルの高根山を主峰とする志太山地の山々が波打っている。朝比奈川、瀬戸川源流の山々である。高根山、ビク石、菩提山はハイキング対象として案内も多い。車で行って頂上を極めるだけなら至って簡単であるが、いくつかの山々を結んだ縦走を試みようとすると、バスの便が至って不便なこともあり、ルートの取り方が難しい。また低山ゆえ、バリエイションルートを取ると夏には藪が深そうである。私はまだこの山域に足跡を残していない。紅葉にはまだ早いが、まず手始めに菩提山稜を縦走してみることにした。桧峠から菩提山、滝ノ沢峠、笠張山、高尾山と続く山稜を縦走して蔵田集落に下るコースである。もし時間的余裕があれば、さらに高根山に登るか、あるいはビク石に登ってみよう。実は、高根山は我がオフィスの窓からよく見えるのである。ダイラボウの左奥に富士山型の実に格好いい山容を見せている。さすが高根山という名前だけはある。
藤枝駅7時50分の上滝沢行きのバスに乗る。桧峠への登り口である上滝沢集落へ行くバスは平日にのみ1日1本あるだけである。それなのに乗客は私一人であった。最近はマイカーの普及により、山里へのバスは次々に廃止されている。8時25分、上滝沢集落着。集落を抜けて、滝沢川に沿った通る車とてない舗装道路を桧峠に向かう。今日は降水確率ゼロ、空は澄み渡っている。茶畑が驚くほど山の上部まで広がり、道端には秋の野の花が咲き誇っている。ノコンギクやヨメナなどの野菊の花、子供の頃に泥棒草と呼んだセンダングサ、同じくアカマンマと呼んだイヌタデのピンクの穂。川原にはススキの穂に混じって、今ではすっかり日本の秋の風景になってしまったセイタカアワダチソウのどぎつい黄色の穂が目立つ。沿うている滝沢川の澄んた水の中には小魚がたくさん見える。まさに心の中に残る遠い遠い昔の風景そのままである。 「滝沢川起点」の標示を見て、道が右岸から左岸に移ると、桧峠への本格的な登りとなった。車道としては限界と思える程の急坂である。息咳切ってヘアピンカーブの道を登ると一面茶畑の広がる斜面に出た。高度が上がり展望が開ける。振り返ると、山頂に鉄塔の立つひときわ高い山が見える。さてどこの山だろう。登りながら考える。そうだ、焼津市郊外の高草山だ。と、するとそこから左に続く山並は宇津の山々のはずである。稜線に達した。大井川水系と瀬戸川水系の分水稜線である。椿山方面への細い林道を分岐して、道はそのまま稜線上を北に向かってさらに登る。突然人家が現われびっくりする。ここが桧峠である。 伊久美集落に下っていく車道と分かれ、道標に従い右の農道に入る。斜面一杯に茶畑が広がり、その中に人家が点在している。尾根上に発達した典型的な山上集落である。道標に従いながら急な農道を15分も進むとようやく樹林の中の山道となった。椎茸の榾木の組まれた檜林の中のえぐれた道を少し急登すると、雑木の明るい尾根道となる。アキノキリンソウの黄色い花、ツリガネニンジンのかわいらしい紫の花など秋の山野草が美しい。写真を撮りながらのんびりと登っていく。右に展望が開け、さきほど同定した高草山の背後には伊豆の山々がうっすらと浮かんでいる。道は確りしているが、時々蜘蛛の巣が道を塞ぐ。私が今日最初の、いやおそらく唯一の登山者と思える。雑木林はまだ紅葉はしていないが、それでも木々は葉をだいぶ落としているので尾根道は明るい。 10時40分、菩提山に到着した。この山は別名経塚山ともいわれ、経典を山頂に埋めた信仰の山である。小さな祠のある狭い山頂はアセビなどの雑木が茂り展望はない。小休止の後、落ち葉の敷き占められた急坂を滑り下りる。相変わらず蜘蛛の巣が多い。これさえなければすばらしいコースなのだが。コウヤボウキやリンドウの花が咲き、真赤な実がついたミヤマシキミが目立つ。この実は毒とのことである。突然林道に飛び出した。地図にない林道で、滝ノ谷集落から上がってきているようだ。道標に従い林道を進む。首の周りだけ黄色い茶色の小さな蛇が道端に逃げ込む。何という蛇だろう。520メートル峰を右から巻くと、地蔵堂がある滝ノ谷峠に出た。滝ノ谷集落へ下る小道はあるが、地図に記載されている反対側の大久保集落に下る小道はない。ひと休みしていると材木を満載したトラックが通り過ぎた。 ここで林道から離れ、道標はないが、稜線上にルートを求める。林道は次の510メートル峰を左から巻いていく。おそらく大久保集落に通じているのだろう。510メートル峰を越えると工事中の林道に出た。再び林道を避けて稜線上にルートを求め、次の520メートル峰を越えると、林道工事の先端に飛び出した。いったいこの林道はどこまで開削するつもりなのだろう。無造作に切り倒された木々が痛々しい。滝ノ谷峠までは道標も確りしていて、よきハイキングコースであったが、その先は登山道が林道で寸断され、もはやハイキングコースとはいえなくなっている。残念なことだ。
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