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『マーク』




「あれ? ここんとこ、なんか痕があるよ?」
「え?」
「ほら首筋、肩のトコにも。」

「ホントだー
 なんかで打ったの?」
「さあ…… 別に、何もないよ?」
「え〜
 でもハッキリ付いてるよコレ。」
「まさか、家庭内暴力?」



「それはないよ〜
 この子のお兄さん、妹思いで有名だもん。」
「だから、逆にさ……」

「そうかな〜
 そういう風には見えないけど…」
「だから、ホントになんにも無いって…」

「ホントにホントに?」
「何か困ったことあったら相談してよね!」



あの子たちにはわからない。
私に困ったことなど何もない。
兄との関係は、私が望んだこと。 兄も、望んだことなんだけど。

「もっと、付けてよ。

 印を。

 噛み痕でも、キスマークでも。」

「お前も、もっとやってくれ。」



繋がりながら、お互いを傷つけるように印を付け合う。
首筋にも、胸元にも、太股にも…

絡み合う。
体も心も溶けて無くなってしまうみたいに。

そして弾ける。
熱い固まりをお腹の中に受けて。
何も無くなるまで、高く登り詰めたい…



「大好き… 愛してる…」
「俺もだ… 愛してる…」

お互いの体中に付いている、愛し合った痕。
それは、これからも増えていく。
消えてもまた付ける。

そうして今日が過ぎる。
明日が、始まる。
家に帰るまでの、長い時間が…