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『偽り』

月明かりは雲間に暗く 街灯が道路を少しだけ照らしている夜道の中を 少女が一人歩いている。

『……なんか、こうも暗いのって、不気味っていうか……

 やっぱり、お兄ちゃんに迎えに来てもらってた方がよかったかな……

 最近、この辺も物騒だって言うし……』

とはいえ もう家にも近いし この公園を抜ければもうすぐだ。

そう思って 木々の影がさらに暗さを増している公園に踏み入った。



思った通り 公園の中は樹木のせいで 僅かな月の光すら減っていてさらに薄暗く

薄汚れた街灯のまばらな光のみでは 足元ぐらいしか見えない。

しかし迂回するにはもう遅く 不安を抱きながらも その中を孤独に歩くしかない。


気のせいか 何かに見られているような感じがして 怖い考えが頭に浮かんだ。

『……もし、誰かに襲われたりなんかしたら、どうしよう……

 護身用品なんて持ってないし…… で、でも、こんな所に誰もいないよね……』

しかしその考えは 最悪の形で的中してしまった。



木陰の暗闇から現れた太い腕が 口に布を押し当てて 体をその暗闇へと引きずり込んでいく。

『!!!!』

布はそのまま猿ぐつわになり 両手もあっという間に縄らしき物で縛られる。

光も無い暗闇の中では相手の顔かたちすら見えず そのまま強引に服がたくし上げられていった。


必死にもがく足の力すら押さえ込まれて 足が開かされる。

恐怖で少し漏らしてしまったパンツが脱がされて 直接秘所に相手の指が触れた…

『イヤ! イヤァァ!!』

しかしそのまま入ってくるかと思った指が なぜかそのまま離れていた。




『え? え??』

次の瞬間 感じた感覚は 触られたところから湧いてくる強烈な痒みだった。

「ん、ぎぃぃぃぃ……」

口の隙間からうめき声が漏れる。

痒い 痒い かゆいかゆいかゆい カユイカユイ カユイカユイ……

いっそ血が出るほどに 掻きむしってしまいたい。



自分ではどうにも出来ない 両足を開かされたまま腰を揺すってみても何の足しにもならない。

か か か カ カ か か か 痒 痒

もう 相手に 頼む しか ……


そう思った瞬間 私の顔に月の光が一瞬射し込み 暗闇の中で相手の顔の輪郭だけが見えた。

もちろんそれだけで 誰であるかなんてわかりはしない。

けど相手からは きっと恐怖の涙でぐしゃぐしゃな私の顔が見えただろう。



『!!!!』

次の瞬間 なんの躊躇いも間も無く 秘部に重い衝撃が走った。

「んく、ふぅぅぅぅ…!」


猛烈な痒みが 痛みで解消されていく 快感が体を襲った。 そして膣を擦られる 快感も……

……初めてだったけど 痛くはなかった。 何回も体を揺すられて 力が抜けていく……


快感と痛みの感情の発露のために 轡の間から相手の肩を噛み

縄の戒めから逃れた両手で 相手の背中に爪痕を残していく。




気が付くと 一人で茂みから出た所の道に倒れていた。

……アソコからは血と精液らしきものが混じった液体が零れ、

服もカバンも破れて全身泥まみれ。 もう散々な状況で ようやく家に帰れた。


家に帰ると、真っ青な顔をしたお兄ちゃんが介抱してくれた。

膣内の出血はもう止まっていたけど 体のあちこちには生々しい痣が残っていた。

そして心の傷は 治しようがない……



暖かい体が 慰めるように 守るように 横に居てくれている。

でももうそんなのじゃあ この恐怖は拭えない。

私はお兄ちゃんに襲いかかるように 覆い被さっていた。


涙を流しながらする口づけ 突き上げて揺する腰の動き

撫で回り 抱きしめ合う手の動き 伝わってくる荒い吐息と汗の匂い

月明かりに 少しだけお兄ちゃんの裸体が見えた。

その首筋にある生々しい歯形と 背中に滲む 付けられたばかりの引っ掻き傷。

そしてその全てを  私は抱きしめていた。


終わり