彼女が、唯一その心と体を休められる場所…兄の居る家…に帰ってきてまずする事は、
その身を被う仮面と化粧を剥ぐことだった。
「ん、おかえり。」
「あ゛~ ただいま~」
ぼふっ と音を立ててカバンと何かの固まりが机に放り投げられる。
「……コレも冬ならまだいいけど、さすがに夏は暑いね。
つーか今年のは異常気象でしょ。」
「そうだな。」
返事をしつつも目の前に拡がる銀色に思わず目を奪われる。
彼女は…妹は、銀の輝きと、赤い残光を振りまきながら、目の前を通り過ぎていた。
普段の、一見ごく普通の茶色がかった髪は、実は先ほど放り投げられたカツラであり、
その下には透き通る銀色の綺麗な髪の毛が拡がっている。
瞳もカラーコンタクトで隠しているが、本来は血が薄まった赤色をしていた。
妹はいわゆるアルビノ…自然界では白虎などに代表される、色素欠乏症なのだ。
「あ~ それより冷房かけて早く!!」
「はいはい。」
「シャワー浴びてくる! カーテン閉めて部屋を冷やしといてね!!
ホントに今日って暑~~!!」
……いまはすこぶる元気そうだが、幼い頃の妹は本当に病弱だった。
遺伝子の異常が原因で、光が透き通るような銀髪と紅の眼を持って産まれた妹は、
何度も内臓の病気を発症しては、その命の危機に会っていた。
ようやく家で過ごせるようになっても、
夜な夜な苦しむ妹を朝まで励ました事も数え切れないほどにある。
「か~~ 冷房、涼しい~~~!!!」
「そんな格好で出てくるなよ。 ちゃんと体拭いたか?」
「大丈夫だよ~ それにどーせカーテン閉めてるから見えやしないし。」
その染みも色素の一つすら無い、純白の雪ような肌は太陽光線に弱い。
ちなみに昼間に学校に行っているときは完全UVカットのクリームで防御している。
全裸で水分補給をしている姿に、まるで女神の沐浴を覗いているかのように見とれてしまう。
その肌に、拭き残しか汗かの滴が、さらに光を纏わせていく。
「ん? ……お兄ちゃんのH。」
「……なんだよ。 いまさらそんなので恥ずかしがるようなキャラじゃないだろ?」
「はぁ? 何その言い方。ちょっと心外。」
「んじゃせめてなんか着ろっての。ちょっと目の毒だ。」
「なによ。せめて『眼福』と言いなさいっての。」
とりあえずシャツを着込ませる。
……なんでそこで俺のを着るのよ。
「裸よりもこっちのが萌えるでしょ?」
「……お前の裸なら見飽きてるよ。それこそ穴の開くほどにな。」
「……そりゃそうだよね。毎晩、だもん。」
妹と『そういう関係』になったのはわりと最近になってからだ。
しかしそれよりも以前に、俺は妹に家族としての愛情以上の物を抱いていたようだった。
あの輝く銀色の髪を、紅く映える瞳を見る度に、恋し、愛するようになっていた……
「ん……」
「ん~~」
口づけるときは妹の方から積極的に舌を入れてくる。
そういえば、誘ったのも妹の方からだった……
その日の妹は、珍しく一人で寝たいとか言って布団に潜り込んでいた。
その時にはあまり変には思わなかったが、
夜半になって、どこからともなくすすり泣きが聞こえてきた。
妹だ。あいつが泣いている。
俺は迷わず部屋に行って、その理由を聞いてやった。
『……私がね、違うから、ヤなんだって……』 『?』
『……この髪も、この目も、病気でなったのに…… みんなと違うから…嫌われるの…?』
その頃にはすでに自らを偽り、装うことをしていたはずなのに……
『誰かに、話したのか?』
『……友達になりたいって、言ったから…… だから、話したのに……
やっぱりみんなと違うから……
私は、そういう……バケモノだから……』
『!! そんなこと言われたのか!?』
『…………。』
妹は、ただ泣き続けるだけだった。
『あのな、少なくとも俺はそんな風には思わないぞ。
お前の髪も目も、確かに病気のせいでそうなったけど、ホラ、こんなにキレイじゃないか。』
どこからか漏れている月明かりを受けて輝いている銀髪。それを一束手にとって見せる。
『……お兄ちゃんは、慣れてるからそういうことが言えるんだよ。
知らない人たちには…それはやっぱり受け入れられない…』
また泣き伏せるように胸に顔を埋められる。
『そんなこと無いって。 な。』
しょうがなく、銀色に輝き続けている頭を優しく撫で続けるしかなかった。
『……お兄ちゃん、だけが、わかってくれてる……
……だったら、お兄ちゃん、だけで、いい……』
甘えから、だけとは思えないその言葉が、何だか危険に思えた。
『大丈夫。お前をわかってくれる人は他にもいるって。』
『……私は、お兄ちゃんが、いい……』
『そうか…… じゃあ今はそれでいいから、元気出せよ。 な。』
そう言って離れようとした体を、妹の手は離そうとしていない。
『……どうした? 一緒に寝て欲しいのか?』
『……うん。 けど……』
さらに体が引き寄せられて、ピンポイントで唇と唇が触れ合った。
『な! なにすんだよいきなり!!』
『……お兄ちゃんは、私の事、好きなんでしょ?』
『……そりゃ、まあな。』
『……わかってるよ。 妹だからじゃなくて…… 妹なのに、好きなんでしょ?』
『……。』
『私、も… お兄ちゃん、好き……
だから…… お兄ちゃん… おね、がい……』
紅い瞳で見つめながら、銀の光に包まれた体が擦り寄ってくる。
『私を…… お兄ちゃんのものに…… して……』
俺は、その小さく震える肩を抱き寄せ、力一杯抱きしめていた……
あの時と同じように、二人の体が重なり合う。
一つ違うことと言えば、今は妹の方が上になって動いているという事ぐらいか。
「ねぇ…ねぇ!お兄ちゃん!
ハァ、ハァ… 私の体、キレイよね?
お兄ちゃん、私のこと好きだよね!?」
「……ああ、お前のこのキレイな体は、全部…大好きだよ。」
「嬉しい!うれしいぃぃ…」
いつの間にか日は沈み、どこからか照らされる月明かりが、二人の体を浮かび上がらせる。
その光は、妹の肌に反射してさらに白さを際だたせ、
落とした影が、俺の体を黒く染めていた。
「お兄ちゃん、もうイクよ…! 出して… イッパイ中に出して!!」
その深紅の目の輝きが、さらに快楽を引き出させ、精神を爆発させるかのように弾けさせた。
「んぁぁぁあああぁぁぁぁ……」
「……やっぱり、膣内で出されるのが良くないかなぁ……」
「……まだ生理来てないのか?」
「うん。 でなきゃ妊娠したってウソつくし。」
「……物騒な事言うでない。」
「……でもまだ生で出来るからいいでしょ?」
「そういう問題でもないよ……」
二人の体が、眠りにもつかずにまた絡み始める。
「……お兄ちゃん、もう一回……」
「……毎日それだけして、よく朝起きれるな……」
そして体力の尽きるまで、妹に、全てを……
「あ、は…… お兄ちゃん、まだ、出てる……」
……俺の中の『白』が妹の中に入り込んでいく……
……そして、妹の中の『黒』が俺の中になだれ込み……
……彼女は、月の光の如く、ますます白く輝いていく……
……それは、影が少しずつ消えていく、満月に似て……
終わり