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『あともう一回だけ!』



「あぁ… お兄ちゃん……」
妹と僕の体が限りなく近づいている。
ここが妹のベッドなのか僕のベッドなのか、なんてのはさしたる問題ではない。
一番重要なのは二人の気持ちと、お互いがどれだけ気持ちよくなれたか。

「んん、もっと… もっとくっつこうよぅ……」
両親に過ちがあるとすれば、部屋を同じにしたことではない。
きっと、僕たちを兄と妹に産んでしまったことだ。

「お兄ちゃん、好き… 好きって、言って。」
「……好きだよ。大好きだ。 僕と、ずっと一緒にいような。」
「うん… うん…!」

お互いの変わらない気持ちを確認してから、眠りに就く二人だった。



僕と妹の部屋は、本来は敷居を作れば二つに分かれる一つの大部屋になっている。

つまり、今は部屋の真ん中には境も何もなくて
代わりに僕と妹のベッドがダブルベッドのようにして置いてあるが、
将来的に『自分一人の部屋が欲しい』となれば、そこに壁を作って
部屋を分割出来るようになっているのだ。(ドアも2つある)

しかし、そんな物は必要ない。 僕と妹の間に、壁も隔たりも、いらない。
こんなに近くにいるのに、なんで離れなければいけないんだ?



でも、
「ねえ… あなた達、部屋を分ける気とか無いの?」
と言われた時は、正直『来たな』と思った。
毎日部屋の片づけをしている母親が、妹と僕の関係に真っ先に気付かない筈はない。

「……そろそろ一人の部屋とか欲しいと思ってたんだ。」
潮時、なのかもしれない。そうとも思った。

「えぇ〜!? そんなことするのぉ!?」
「とりあえずこうやって…… このカーテンで壁代わりにするんだって。」
「……。」
後は収納されていた折り畳み式の壁が、完全にこの部屋を分断するわけだ。



「……やっぱり落ち着かないよ。」
「……母さん、絶対気付いてるぞ。 僕と別居させられるよりはマシだろ?」
「……。」

妹が薄いカーテン越しに抱きついてきた。そのまま布の継ぎ目から生身が出てこようとしている。

「……さ、片づけよう。 このベッドも移動させなきゃいけないし、全面模様替えだな。」
わざと妹の体を突き放して身辺整理を始める。
布から突き出された顔が、まるで見捨てられた子犬のように歪んでいた。
……わかってくれ妹よ。 ここで全て台無しにするわけにはいかないんだ。

僅か布一枚でも、二人の間に出来た隔たりが、何故か両者を遠くに感じさせていた。



……今日は冷える夜だ。
こういう日は、大抵お互い寄り添って眠る。…まあそうでなくても寄り添って寝てたけど。

けど…今日は、今日からは違う。 今日からは、これに慣れなければいけない。

「……、……。」
慣れない視点。 僕一人で寝てるのに広く感じているベッド。

妙に寝返りを繰り返してしまう。……カーテン越しに妹のベッドが見えた。
妹もやはり寝付けないのだろうか…… あちらも寝返りをして、僕と妹の目が合ってしまった。



「……お兄ちゃん?」
「……いや、眠れて無さそうだったから。」
「……大丈夫だよ。」
「……僕がいなくても、一人で寝れる、よな。」
「うん。 お兄ちゃんと一緒でも、家から追い出されたくはないもんね……」
つい心配になって妹の所に来てしまったが……思ってたよりも妹は理解出来てたようだ。

「じゃ、おやすみな。」
「うん… おやすみ…」
そう言って軽く…本当に軽く…キスをした。   それだけで、済ませた……



妹の方に背を向けて、眠ろうと努力する。

…………………………………………

「お兄ちゃん……」
遠くからではない。近くから聞こえた。 おいおい……今度は妹の方がこっちに来ている。

「……一人で寝れるんじゃなかったのか?」
「……だって、お兄ちゃんが……」
顔色は暗くて見えないが、手をお腹の辺りに当ててオシッコを我慢しているようにも見える。
「……お兄ちゃんとするの、絶対我慢しようって……
 ずーっとウズウズしてたのに、キスなんかしてくるからぁ…」
あー… あれで逆に火が着いちゃったのか…

「お願い… もう一回だけ、キスして…… それで……我慢するから……」



お互いの顔が静かに近づいて、重なる。
「ちゅ、ん……」
我慢する… これだけで、絶対我慢する……

「んぁ… も…」
そう思っていても、自然と体に熱がこもって

「にぃ… んんん…」
舌の動きが早くなり、唾液の交換が追いつかなくなって口の端から垂れ落ちていく。

「ん、あ! ダ、ダメ…」
……手が愛撫を始めていた。パジャマの上からでもわかる程に立ち上がった乳首を攻める。
「ダメ… それ以上は…」



「……この後どうするんだよ。」
「……?」
「……一人で、スルんだろ?」
「……。」
静かに頷くのが見えた。 僕ももう、このまま眠れそうにない。

「だったら、二人でした方がいいじゃないか。」
「でも…それじゃ結局、いつもと同じ……」

「…………だったら、これを最後にしよう。」
「え……」



「いまからする分で、最後にするんだ。
 悶々としたまま過ごすよりは、最後にパーッとしちゃった方が気が楽だろ?」
「…………うん。」

いつものように、妹の体が擦り寄ってきた。 しかし二人の精神はいつになく緊張をしている。
「……お互いイっちゃったら、それで終わりだからな。 あとは戻って寝るんだぞ。」
「うん…… じゃ、最後の一回……しよ。」

そしていつものように、二人の体が交わっていく。
「なんだ、こんなに濡らして…よっぽど寂しかったんだな。」
「お、お兄ちゃんだって…! 硬くて、熱い……」



こうして触りあっているだけで、肉体も精神も堪らなく興奮していく。
これが最後で、もう出来ないんだと思うとさらに。
「お、お兄ちゃん…… 入れて… 早く、したいよ…」
我慢できない。我慢なんてしたくない。

「あう、熱いよ… 熱いのでイッパイになる……」
妹の膣内に、思いっきり突き込んで、イッパイ動かして、
イッパイキスして、夜だけでも愛を確かめ合って、

「にゃあ、お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
……妊娠させるほどに、射精してしまいたい。

でもそれは、危険で、誤った… 受け入れられない考えなんだ。
そのことにようやく気付いた僕は、絶頂の直前に引き抜いて、お腹にぶちまけていた。



僕と妹は、いつものように愛し合って……
それも今日までなんだ。 今日で、今ので、終わりなんだ……

「ね、ねえ…お兄ちゃん……」
「……なんだい?」
「……わ、私と、こういうこと、しなく、なっても……
 お兄ちゃん、私の事……好きでいてくれるよね?」
「…当たり前だよ。 それとも、僕の気を惹きたくてしてたのかい?」
「ち、違うよ! ……お兄ちゃんのことが、本気で好きだから……してたんだよ。」
「……僕もだ。」

だから、もっとしたい。 これで、終わりになんかしたくない。



「さ、もう終わりだよ。早く戻って……」
「…………まだ、だよ。」
「…え?」
「……私まだ、イってない……」

明らかに嘘だとわかった。 それは長年付き合ってきた僕にしてみれば見え透いたものだった。
けど……

「まだ、イってないから…… もう一回、しよ。 お兄ちゃん、まだ出来るでしょ?」
「…………もう一回だけ、な……」
明らかに嘘だとわかっていても、もう一回だけ、したい… これが、最後だから……

愛し合う二人の『最後の一回』は、まだまだ終わりそうになかった……



西の空が明るみ始めている。 僕はもう、何回妹に射精しただろうか…
中だろうが外だろうが、もはや制御することが出来ずに出しまくっていた。

「お、お兄ちゃん…… もう…これで…終わりに…しよ…」
「ああ… そう… だな…」
そう思っていても、二人の体の動きは鈍ってはいても止まりはしていなかった。

「お兄ちゃん…… と、とめてぇ〜……」
「と、とまらない… もっと、したいんだ……」
「わ、わたしも、とめられない…… けど、もっとしたいけど、もう限界〜〜……」

その直後の絶頂で、ついに気絶してしまった二人だった。




「お、お兄ちゃ〜ん…」
「……うぁ?」
腫れ上がった頬のせいで上手く発音できない。
最後の一回…濃密な愛の時間の代償は、母者のビンタ百連発という重いものだった。

「コ、コレ……」
妹の手に乗せられたギザギザのある特徴的な袋。
「……買ったのか?」
「……買ってもらったって言うか、買わされたって言うか……」

「……避妊さえすれば、していいのかな?」
「……バカでも、可愛い息子と娘だから、って。」



今日は妹のベッドでする日になった。
「んん… お兄ちゃん、好きぃ…………愛してる。」
「…………僕もだ。 愛してる。」
近いうちに二人のベッドはまた一つになるのかもしれない。

愛し合う二人を引き裂くことはもう出来ない。
何かが間違っているのだとすれば、それは二人が兄妹であるということではなく、
兄妹が愛し合ってはいけないという概念の方なのかもしれない……

そう思うことにした。

終わり